『国境のない生き方』を読んで強く感じたのは、世界を広げるには、まず今いる場所から少し離れてみることが大切だということです。旅に出ること、本を読むこと、知らない価値観に触れること。その積み重ねが、自分の中にある思い込みをほどいてくれます。
閉塞感がある時ほど、同じ場所で考え続けてしまいがちです。でもこの本を読むと、「考えてから動く」のではなく、「動くことで見えてくるものもある」と思えてきます。
特に心に残ったのは、旅と読書、自分を支える力、そして震災後の福島に残された動物たちについての言葉でした。自分の世界が狭くなっていると感じる人に、ぜひ読んでほしい一冊です。
『国境のない生き方』が教える本と旅の力
本を読むことと旅に出ることは、一見すると別の行為に見えます。けれど、どちらも自分の外側にある世界へ触れる方法なのだと感じました。
印象に残った一節があります。
今も、自分と向き合う時は、周辺の電子機器の電源を切って本を読みます。 それでもまだ何かが足りないと思う時は、荷物をまとめて旅に出る。生活習慣も考え方も違う人々の暮らす土地へ行って、自分の生きる世界が果てしなく大きいことを確認する。頼る人が自分以外に存在しないひとり旅では、虚栄心を傷つけるような、大失敗も恥ずかしい思いもたくさん背負わされるけど、そういった経験が後に何よりも 強靭 な肉や血になるという実感も、もれなくセットでついてくる。
引用:『国境のない生き方 -私をつくった本と旅-』ヤマザキマリ著
失敗や恥ずかしい経験まで含めて、旅が自分をつくっていくという感覚がとても印象的でした。うまくいった経験だけが価値のあるものではなく、思い通りにならなかった出来事も後から自分の力になる。そう受け止めると、知らない場所へ出る怖さが少し軽くなる気がします。
また、電子機器から離れて本を読むという姿勢にも惹かれました。情報が次々と入ってくる環境から距離を取り、自分と向き合う時間をつくる。そのうえで足りなければ旅に出るという流れは、閉塞感を抱えた時に思い出したい考え方です。
『国境のない生き方』で考えた自分を頼る強さ
この本で最も力強く感じたのは、「自分を支えるもうひとりの自分」という考え方でした。
もう本当にだめなんじゃないか、このまま野たれ死にするんじゃないかと思った時、ふいに「頼れるのは自分しかいない」という気持ちが湧いてきました。今の自分を助けられるのは、そこらへんを歩いている人でも、日本にいる母親でもない。ほかの誰でもない。私は、私を頼る──。 「頼むよ、自分」「頼むよ、もう、お前しかいないんだ」 自分で自分に声がけしたあの時、私には「自分を支えるもうひとりの自分」という運命共同体ができたのです。過酷な状況に巻き込まれても、そういう「もうひとりの自分」がいれば、客観的に自分の状況を見つめることができます。そのことが、その先の人生を生きるうえでも、どれほど力になったことか!
引用:『国境のない生き方 -私をつくった本と旅-』ヤマザキマリ著
誰かに助けてもらうことを否定する言葉ではなく、最後の最後に自分自身まで自分を見放さないこと。その強さについて書かれているように受け取りました。
うまくいかない時、自分を責めるのは簡単です。でも、自分に向かって「頼むよ」と声をかける発想は、その逆です。自分を追い込むのではなく、自分と一緒に状況を乗り越えていく。苦しい時ほど思い出したい考え方でした。
福島の動物たちの姿から考えたこと
読みながら、とくに気になったのが、震災後の福島の動物たちはどうなったのだろう、ということでした。
本の中には、人間がいなくなった土地で生きる動物たちについて、こんな一節があります。
あの時、地球に毒素をまき散らしたのは人間で、動物たちは何も悪くなかった。何が起こったのかもわからないまま置き去りにされて、そのまま餓死したりもして、つらいなあと思っていました。でもそういう中でもすごい生存能力を発揮して、生き抜いた動物たちもいっぱいいました。 イヌやネコだけじゃない、牛舎を脱出した野良牛たちが群れで移動していたかと思えば、山から降りてきたイノシシがいるわ、ダチョウ牧場のダチョウもいるわ、人間がいないと、この土地は、こんなにおおらかなサファリランドみたいになるんだとわかります。それはとても牧歌的な光景にも見えて、感慨深いものがありました。
引用:『国境のない生き方 -私をつくった本と旅-』ヤマザキマリ著
この部分は、旅や生き方についての話とは少し違う角度から、人間中心の見方を揺さぶってきます。人間がいなくなった場所で、動物たちは別の時間を生きている。その光景を想像すると、自分たちが世界の中心にいると思い込んでいないか、考えさせられました。
旅先で文化の違いに触れる時と同じように、人間以外の生き物の姿を見ることでも、自分の当たり前は揺さぶられるのだと思います。自分の視点だけで世界を決めつけないことの大切さを感じた一節でした。
まとめ
この一冊から受け取ったのは、今いる場所から少し距離を取り、自分の価値観を外側から眺めてみることの大切さです。そのための手段として、本や旅があります。
苦しい時には自分を頼る。そして、自分とは違う世界の見方に触れてみる。どれも派手な答えではありませんが、自分の世界を広げるきっかけになります。
同じ場所で考え続けて疲れている人や、今の価値観だけがすべてのように感じている人におすすめしたい一冊です。
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