『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』は、玄米とみそ汁、旬の野菜のおかず1品という「一汁一菜」の食事を軸に、若杉友子さんが長年続けてきた食養の考え方をまとめた一冊です。
献立の組み立て方ははっきりしていて、食事をシンプルにしたい人には手がかりになります。一方で、読み進めるうちに、根拠がはっきりしない主張がいくつも気になりました。
この記事では、本が勧める一汁一菜の考え方を紹介したうえで、私が鵜呑みにしたくないと感じた点も正直に書きます。
一汁一菜という献立の型
本書が勧める献立は、とても単純です。
私が「食養」の教えから導いた献立は、とてもシンプル。玄米や分づき米の主食、みそ汁、おかずが1品、これだけ。一汁一菜ですよ。それも、旬の野菜を主菜にしてるから、おひたし、酢のもの、さっと煮、炒めもの。すぐにできるものばかり。悩む暇なく料理ができてしまうの。 主菜があっさりしているから、汁は具だくさんがいいね。といっても、肉や卵なんか入れない。旬の野菜や海藻を入れるんですよ。
引用:『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』若杉友子著
主食とみそ汁、おかず1品と決めてしまえば、毎回何を作るかで悩まずに済む、というのが若杉さんの考え方です。おかずも、おひたしや酢のもの、さっと煮といった手早くできるものが中心です。
献立の土台にあるのは、その土地で旬にとれたものを食べるという考え方です。
身土不二――。昔はその土地でとれた季節の旬のものがからだにいいと教えられていて、身(からだ)と土(土地)は二つにあらず、と言い伝えられてきました。
引用:『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』若杉友子著
旬の野菜を中心にする、という点そのものは分かりやすい考え方です。
食養のもとにある「陰陽五行説」
本書の食養は、明治時代の石塚左玄と、マクロビオティックを広めた桜沢如一の教えがもとになっています。
私がすすめる食養は、明治時代の軍医・薬剤師で、食養の祖である石塚左玄の教えと、マクロビオティックの祖である桜沢如一氏の教えがもとになっています。石塚左玄も桜沢氏も、古代中国の陰陽五行説を食養の基本とし、この世の中のものを陽性と陰性に分けて、陰陽の調和をとることを旨としました。
引用:『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』若杉友子著
本の中には、野菜を陰性と陽性に分け、火を通すと陰性の野菜が陽に変わる、といった説明が何度も出てきます。私はここで、栄養の話というよりスピリチュアル寄りの話だと感じました。古代中国の思想をもとにした分け方で、食べ物の性質を測って決めたものではないからです。
根拠が示されていない主張
いちばん引っかかったのは、健康への効果を言い切る部分に、根拠が示されていないことです。
料理をするときに陽性の右回転で混ぜることによって陽性のエネルギーが入り、料理がおいしくなる。そして、右回転で混ぜたものを食べることによって、私たちのからだも陽性の体質になり、健康になっていきます。だから、必ず右回転で混ぜてください。箸で混ぜるときもヘラで混ぜるときもいっしょだからね。
引用:『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』若杉友子著
料理を右回転で混ぜると陽性のエネルギーが入り、食べた人の体質まで変わる、という話です。本の中で、これを裏づけるデータや研究は示されていません。
肉はナトリウムのかたまりで、塩もまた、ナトリウムでできています。ナトリウムは血中濃度を上げる作用がとても強いので、肉を食べたからだに塩が加わると、炎症を起こしてトラブルになりやすいんです。
引用:『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』若杉友子著
肉と塩を一緒にとると炎症を起こしやすい、という説明にも、どこからそう言えるのかは書かれていません。
ほかにも「ホウレンソウはシュウ酸があるので控えたい」とありますが、どれくらい食べると問題になるのかは説明されていません。ほうとうが武田信玄の陣中食だったという話も、本当なのか気になりました。
どんな人に向いている本か
献立をシンプルにしたい人や、マクロビオティックや食養がどんな考え方なのかを知りたい人には、中身がつかみやすい一冊です。若杉さんの暮らしぶりや、調味料へのこだわりも具体的に書かれています。
ただし、題名に「医者いらず」とあるように、食事で体を整え、病気を遠ざけるという主張が中心の本です。健康への効果を期待して読むなら、書いてあることをそのまま信じるのではなく、気になった点をほかの情報でも確かめながら読むのがいいと思います。
まとめ:一汁一菜の型は参考に、健康効果の話は確かめながら
『若杉友子の「一汁一菜」医者いらずの食養生活』は、主食とみそ汁、旬のおかず1品という献立の型をはっきり示してくれる一冊です。
一方で、野菜の陰陽や「右回転で混ぜる」といった話は、根拠が示されないまま言い切られています。私は気になったところを鵜呑みにせず、自分で調べて確かめたいと思いました。
食事を見直すきっかけとして手に取るなら、取り入れる部分と距離を置く部分を分けながら読むのがおすすめです。
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