私たちは日々、多くのものを見ているようでいて、実はそのほとんどを「見逃して」います。佐渡島庸平氏の著書『観察力の鍛え方』は、単なるスキルの向上ではなく、私たちが物事をどう捉え、いかにして固定観念から自由になるかを説いた一冊です。「良い観察」とは何か、そして私たちの観察を阻む正体について探っていきましょう。
1. 良い観察と悪い観察の境界線
観察とは、単に眺めることではありません。そこには常に「自分なりの仮説」が必要です。現状と仮説のズレに気づくことこそが、観察の真髄といえます。
いい観察は、ある主体が、物事に対して仮説をもちながら、客観的に物事を観て、仮説とその物事の状態のズレに気づき、仮説の更新を促す。 一方、悪い観察は、仮説と物事の状態に差がないと感じ、わかった状態になり、仮説の更新が止まる。
引用:『観察力の鍛え方』佐渡島 庸平著
「わかった」と思った瞬間に観察は止まってしまいます。常に自分の認識をアップデートし続ける姿勢が求められます。
2. 観察を阻む3つの壁
なぜ私たちは、目の前にあるものを正しく観察できないのでしょうか。それには「脳」「感情」「環境」という3つの要因が深く関わっています。
認知バイアスという偏見
私たちは、自分がすでに知っていることや、信じたい情報に引っ張られてしまいます。アインシュタインが残した言葉は、この本質を突いています。
アインシュタインの有名な言葉に「常識とは、あなたが 18 歳までに身につけた偏見の塊である」というものがある。まさに、「常識・偏見」が、観察を阻むものの代表だ。
引用:『観察力の鍛え方』佐渡島 庸平著
感情による歪み
また、その時の感情も観察の精度を狂わせます。「怒り」や「悲しみ」といった強い感情は、注意の向く先を限定させてしまうからです。
観察を阻害するといったとき、ここで紹介した3つの要因──認知バイアス(=脳)、身体と感情(=感覚器官)、コンテクスト(=時空間)がバグを起こしやすいと意識しているだけで観察の精度は変わってくる。
引用:『観察力の鍛え方』佐渡島 庸平著
3. 仮説を立てて「愛」を持って観る
観察力を鍛えるための具体的な第一歩は、どんなに小さくてもいいから「仮説」を立てることです。仮説があるからこそ、対象を深く知りたいという欲望が生まれます。
とにかく雑にでもいいから、仮説を立てる。そうすると、仮説を検証したいという欲望が生まれ、熱量のある観察が始まる。
引用:『観察力の鍛え方』佐渡島 庸平著
そして最終的に、良い観察を支えるのは対象への「愛」であると著者は語ります。
対象への愛がないといい観察ができない。愛さえあれば、時間はかかるかもしれないが、いい観察ができる。そして、いい観察ができると、より愛が深くなる。
引用:『観察力の鍛え方』佐渡島 庸平著
結論
観察力を磨くことは、自分を取り巻く「当たり前」を疑い、世界を新しく発見し直す作業です。自分のバイアスや感情の動きを客観的に捉え、仮説を持って対象に向き合う。その積み重ねが、私たちの創造性を高め、より豊かな人間関係や仕事の結果に繋がっていくはずです。まずは身近な人の変化や、日常の風景に対して「なぜ?」という仮説を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。
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