「人生100年時代」と言われる現代、私たちが最期まで自分らしく、元気に過ごすために欠かせないのが「骨」の健康です。しかし、多くの人が「骨の強さ=骨密度(カルシウムの量)」だと思い込んでいます。実は、最新の医学では「骨質」という新しい概念が注目されており、これが健康寿命を左右する大きな鍵となっています。
今回は、骨の常識をアップデートし、一生折れない骨を作るための秘訣を解説します。
1. 骨の強さを決めるのは「密度」だけではない
かつて、骨の健康といえば「カルシウムを摂って骨密度を上げる」ことばかりが強調されてきました。しかし、現場の医師たちはある違和感を抱いていました。
私は、2010年に、それまで長きにわたり「骨の強さ=骨密度」と言われていた通説を覆す論文を発表しました。 「骨質」が骨の強さにかかわるメカニズムを解明し、「骨質」を評価する方法を世界で初めて提唱したこの研究成果は、大きな注目を浴びました。 世界中の論文に1000件以上引用され、骨粗しょう症のガイドラインを書き換えることになりました。 今では、「骨質」と「骨密度」の両方が骨の強さを決める、というのがスタンダードとなりましたが、これは、かつて若き日の私が感じていた、ある違和感が発端でした。 まだ 30 歳代頃のことです。患者さんを診ている中で「骨密度が正常なのに骨折を起こす方が後を絶たない」 ──と気付きました。
引用:『100年骨』斎藤 充著
骨を建物に例えると「鉄筋」が重要
骨の構造は、よく建築物に例えられます。骨密度が「コンクリート(カルシウム)」なら、骨質は「鉄筋(コラーゲン)」に相当します。
それまでは、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気である骨粗しょう症は、「骨密度」すなわち、カルシウムだけが重視されていました。 それに対して私は、「骨を強くするにはカルシウムで骨密度を高めるだけでなく、コラーゲンの質を高めることで骨質を高めることが必要だ」 ということを発見したのです。
引用:『100年骨』斎藤 充著
鉄筋に相当するコラーゲンも、非常に重要な存在です。 というのもコラーゲンは重量的には骨の約 20%程度しかありませんが、体積では 50%も占めています。つまり、カルシウムとコラーゲンは半々の体積で骨を形成しているため、コラーゲンは、強度に大きく影響しているのです。
引用:『100年骨』斎藤 充著
2. 知っておきたい骨折の恐ろしいリスク
「たかが骨折」と侮ってはいけません。高齢期における骨折は、生活の質(QOL)を劇的に下げ、時には命に関わる事態を招きます。
厚生労働省の調査によると、「 65 歳以上の方が要介護者となった主な原因」は、運動器の障害(「転倒・骨折」「関節疾患」)が「認知症」や「脳血管疾患」、「高齢による衰弱」を抜いて最も多く、女性に限れば、運動器の障害は全体の約3割を占めています。
引用:『100年骨』斎藤 充著
特に注意すべきは、足の付け根の骨折です。
がんに罹患する人は2人に1人ですが、骨は100%、誰もが弱くなります。 とりわけ、足の付け根近くを骨折する大腿骨近位部骨折は5人に1人がなると言われています。これは非常に危険な骨折で、 75 歳以上で大腿骨近位部骨折を起こした人の5年生存率は、男女あわせて約2割。8割近くの人は5年以内に亡くなってしまいます。
引用:『100年骨』斎藤 充著
3. 今日からできる!「100年骨」を作る習慣
骨は何歳からでもケアを始めることができます。正しい知識を持って、日々の生活を見直しましょう。
カルシウムは「食事」から摂取する
骨の材料として欠かせないカルシウムですが、摂り方には注意が必要です。
骨粗しょう症の治療のためには、1日700~800㎎のカルシウム摂取が勧められています(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版より)。不足している栄養素はサプリメントで補充するのが効率的という考え方がありますが、カルシウムに関しては、あまりおすすめできません。 サプリメントによるカルシウムの過剰摂取は、不整脈、腎機能不全、血管・軟組織の石灰化からの心臓病の発生など、健康障害を招くリスクが報告されているからです。
引用:『100年骨』斎藤 充著
以下の食品を積極的に食卓へ取り入れましょう。
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乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)
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小魚
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大豆製品
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葉物野菜(ほうれん草、ケール、ブロッコリー、小松菜、チンゲン菜など)
ビタミンDと日光浴の重要性
カルシウムの吸収を助けるビタミンDも必須です。
ビタミンD不足への対策を述べるとしたら、 ビタミンDを多く含む以下のものを積極的に食べるといい ということになります。 サバ、アジ、サケ、マグロ、サンマといった脂肪性の魚や卵、チーズ、シイタケ・エリンギなどのキノコ類など。 また、日光を適度に浴びることも大切です。 紫外線を浴びることで、皮膚でビタミンDの生成が促されるので1日に1回は日光を浴びてください。
引用:『100年骨』斎藤 充著
4. 骨の異常に早く気づくために
骨粗しょう症は「沈黙の病」と呼ばれ、自覚症状がないまま進行します。しかし、体型や身長の変化は重要なサインです。
20 代の頃と比べて2~4㎝以上身長が低下していたら、「いつのまにか骨折」をしている可能性があります。 早目に整形外科を受診し、背骨のレントゲンを撮ってもらってください。
引用:『100年骨』斎藤 充著
また、背筋を維持する体操も予防に効果的です。
そこで実践していただきたいのが、背骨が曲がらないように背筋力を維持する「いつのまにか骨折」予防体操です。この運動は秋田大学の宮越尚久教授が考案されたもので、私の患者さんにもおすすめしています。
引用:『100年骨』斎藤 充著
骨はいつでも若返る
「もう年だから骨が弱くなるのは仕方ない」と諦める必要はありません。骨は、私たちの意識次第で何歳からでも新しく生まれ変わることができます。
骨は他の器官と違って、何歳からでも若返ることが可能ですから、常に自分の骨の状態を気にかけて、骨の今に適したケアをすることが100年元気な骨で生きる秘訣です。
引用:『100年骨』斎藤 充著
まずは自分の骨の状態を知るために、検診を受けることから始めてみませんか?自分の足で100年歩き続ける未来は、今のあなたの選択から始まります。
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