『逃げる自由』書評|諦めることは「負け」ではなく、自分を守る選択肢

Book

『逃げる自由』を読んで感じたのは、「逃げる」「諦める」という言葉を、もっと前向きに捉えてもいいのではないかということでした。

私たちは一度選んだ道を最後まで進むことや、苦しくても耐え続けることを正しいと思いがちです。しかし、合わない場所から離れることも、過去の選択を手放すことも、自分の人生を生きるために必要な場合があります。

この本には、後悔や不安、失敗との付き合い方を考え直したくなる言葉がいくつもありました。「頑張り続けなければ」と自分を追い込んでしまう人ほど、肩の力を抜くきっかけをもらえる一冊です。

スポンサーリンク

『逃げる自由』が教えてくれる「自分でないもの」を手放すこと

特に心に残ったのが、自分自身の生き方について考えさせられるこの一節です。

自分でないものにまでなろうとして人生を浪費するのはやめて、今を一生懸命やろう

引用:『逃げる自由 〈諦める力2〉』為末 大著

「あの人のようになりたい」「もっとこうあるべきだ」と考えること自体は悪くありません。ただ、それが自分の性質や現実とかけ離れてしまうと、いつの間にか「自分ではない誰か」を目指すことに時間を使ってしまいます。

できないことを無理に克服し続けるより、自分が今持っているものを使って目の前のことに取り組む。その考え方には、諦めることを単なる敗北ではなく、人生の方向を整える行為として捉え直すヒントがあるように感じました。

スポンサーリンク

後悔しても「選ばなかった未来」には戻れない

人生では「あのとき別の道を選んでいたら」と考えてしまうことがあります。仕事でも人間関係でも、過去の選択を振り返れば、別の可能性はいくらでも思い浮かびます。

そんなときに読み返したくなる一文がありました。

「選ばなかった未来」はすでに選択肢ではなく、妄想でしかありません。

引用:『逃げる自由 〈諦める力2〉』為末 大著

これはかなり刺さる言葉でした。

実際に選ばなかった道は、その先に何があったのか確認できません。それなのに私たちは、選ばなかった未来だけを都合よく想像し、「そちらならうまくいったかもしれない」と考えてしまいます。

さらに、こんな一節もあります。

後悔というのは自分に対する後出しジャンケンです。

引用:『逃げる自由 〈諦める力2〉』為末 大著

今の自分は、その後に起きたことを知っています。その知識を使って、何も知らなかった過去の自分の判断を責める。それは確かに「後出しジャンケン」なのだと思いました。

過去を振り返ることは必要でも、過去の自分を責め続ける必要はありません。そのときの自分なりに選んだ道なら、そこから今どうするかを考えたほうが建設的です。

スポンサーリンク

『逃げる自由』から考える、変わるための「忘れる力」

一度うまくいった方法ほど、私たちは手放しにくいものです。しかし環境が変われば、以前の正解がそのまま通用するとは限りません。

あるところでは最適化されたものが、環境が変われば害になる。そのときにちゃんと忘れられるかどうかは、素直さにかかっているように思う。変化しない人は、よく言えば信念が強い。悪く言うと自分を変えられない。

引用:『逃げる自由 〈諦める力2〉』為末 大著

「続ける力」はよく評価されますが、この一節を読むと「やめる力」や「忘れる力」も同じくらい重要なのだと気づかされます。

昔の成功体験や自分なりの常識に固執すると、変化した環境に対応できなくなることがあります。信念を持つことと、変化を拒むことは似ているようで違う。その境界を意識するだけでも、自分の考え方を柔軟にできそうです。

逃げることは、同じ場所から永遠に逃げ続けることではありません。合わなくなった環境や考え方から離れ、新しい場所に合わせて自分を変えるための選択にもなり得るのだと思います。

スポンサーリンク

すべてのことに向き合わなくてもいい

もうひとつ印象的だったのが、自分を追い込みやすい人について書かれた部分です。

ほとんどのことは自分にとっては関係ない。そういうつもりで生きていくくらいが自滅型の人にはちょうどいいのではないかと思う。

引用:『逃げる自由 〈諦める力2〉』為末 大著

目の前で起きることすべてを真剣に受け止めようとすると、それだけで疲れてしまいます。他人からどう見られているか、何を言われたか、世の中で何が起きているか。その全部を自分の問題として抱える必要はないのでしょう。

「これは自分に関係があることなのか」と一度考えてみる。関係が薄ければ、あえて距離を取る。そんな小さな「逃げる自由」を持つだけでも、日々の負担はかなり変わるのではないでしょうか。

何でも真正面から受け止めることだけが誠実さではありません。ときには受け流したり、離れたり、諦めたりすることも、自分を守りながら前へ進むために必要なのだと思いました。

スポンサーリンク

まとめ

『逃げる自由』は、「逃げてはいけない」「一度決めたことは最後まで続けなければならない」といった思い込みを見直すきっかけをくれる本でした。

選ばなかった未来を想像して後悔すること、自分ではない何者かになろうとすること、昔うまくいった方法に執着すること、関係のないことまで背負い込むこと。こうしたものを手放すことも、一つの「諦める力」なのだと感じます。

逃げることは、人生そのものを投げ出すことではありません。むしろ、何から逃げて、何を残すのかを自分で選ぶことなのかもしれません。

頑張りすぎて疲れている人や、過去の選択を後悔している人、今いる場所から離れていいのか迷っている人に、ぜひ読んでほしい一冊です。

コメント