「私」という苦しみから解放される|『無(最高の状態)』に学ぶ心の整え方

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現代社会を生きる私たちは、日々さまざまなストレスやネガティブな感情に振り回されています。しかし、その苦しみの根源は「メンタルの弱さ」ではなく、脳が作り出す「自己」という物語にあるのかもしれません。本書の内容を軸に、感情のメカニズムと自己の正体について紐解いていきましょう。

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1. 感情が教えてくれる「生存のためのサイン」

私たちは怒りや不安を感じると、それを「悪いもの」として排除しようとしがちです。しかし、本来すべての感情には生存に不可欠な役割があります。

・怒り=自分にとって重要な境界が破れたことを知らせる

・嫉妬=重要な資源を他人が持っていることを知らせる

・恐怖=すぐそばに危険が存在する可能性を知らせる

・不安=良くないものが近づいていることを知らせる

・悲しみ=大事なものが失われたことを知らせる

・恥=自己イメージが壊されたことを知らせる

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

これらの感情が湧いたとき、反射的に反応するのではなく「今、脳が何かのサインを出しているのだ」と客観的に捉えることが第一歩です。特に強い怒りを感じた際などは、脳の仕組みを知っておくだけでも冷静になれる確率が高まります。

前頭葉が起動するまでの時間は平均で4~6秒で、そこから 10 ~ 15 分も経てばアドレナリンやノルアドレナリンの影響力はほとんど消えてあなたの怒りは鎮まります。つまり、暴言を受けてから6秒だけやりすごせれば、〝一の矢〟の痛みは過ぎ去るわけです。

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

まずは「6秒」待つこと。これだけで、感情に飲み込まれるリスクを大幅に減らすことができます。

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2. 「自己」へのこだわりがメンタルを蝕む理由

意外かもしれませんが、自分について深く考える時間が長い人ほど、メンタルを崩しやすいという研究結果があります。

事実、多くの先行研究では、自己にこだわる人ほどメンタルを壊しやすい傾向が何度も報告されてきました。専門的には「自己注目」と呼ばれる状態で、「私はダメな人間だ」や「私は失敗ばかりだ」などの否定的な思考が良くないのは当然として、「私はどんな人間なのだろう?」や「本当の自分らしく生きることができているだろうか?」といったように、理想の自己を思う時間が長い人も不安や抑鬱の症状を起こしやすいことがわかっています(6)。

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

「本当の自分探し」は一見ポジティブな行為に思えますが、実は自分を特定の枠に当てはめようとする行為であり、それが苦しみを生む「自己注目」の状態を作り出してしまうのです。

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3. 「物語」を書き換えて適応する

苦しみを感じやすい人とそうでない人の差は、根性や性格ではなく、脳が描く「ストーリーライン」の違いにあります。

要するに、同じようなトラブルにも苦しむ人と苦しまない人がいるのは、あなたのメンタルが強いか弱いかの問題ではありません。脳内に作られた独自の〝ストーリライン〟が適応か否かの問題なのです。

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

私たちは、起きた出来事に対して無意識に「自分は被害者だ」「これは最悪の事態だ」といった物語を付け加えてしまいます。この物語の輪郭を理解するために、以下の定義が役立ちます。

・自己=脳が作り出す物語から生まれ、「私は私である」との感覚を生む機能

・自意識=物語から生まれた自己に注意を強く向けている状態

・アイデンティティ=自己をもとに「私はこういう人間だ」と規定した状態

・自我(エゴ)=物語が形成する自己の輪郭をもとに、自分と他人を明確に分けた状態

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

これらはすべて、人間が生き残るために獲得した「ツール」に過ぎません。

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結論

苦しみから解放されるための鍵は、「私」という存在を絶対的なものではなく、脳が作り出した便利な道具の一つとして捉え直すことにあります。

❶ 自己は日常的に生成と消滅をくり返し、「わたし」がなくても問題ない状況が多く存在する

❷ 自己は人間が持つ多くの生存ツールのひとつであり、感情や思考といった他の機能と変わりはない

引用:『無(最高の状態)』鈴木祐著

「私」を過剰に守ろうとするのをやめ、流動的なプロセスとして受け入れることができれば、心はもっと自由で穏やかな「最高の状態」へと近づいていくはずです。

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