『自分を愛する力』を読んで考えさせられるのは、自己肯定感とは「何でもできる自分」を好きになることではない、ということです。できないことや苦手なことがあっても、それを含めて自分を受け止められるか。本書には、そんな問いにつながる言葉がいくつも登場します。
私たちはつい、できることを増やせば自信がつき、自分を好きになれると考えてしまいます。しかし、すべてを得意にすることはできません。誰にでも弱点があり、失敗することもあります。
だからこそ大切なのは、弱点をなくすことより、弱点のある自分との付き合い方なのかもしれません。子どもへの接し方から、自分自身の幸せの考え方まで、自己肯定感について改めて考えたい人に響く一冊です。
『自分を愛する力』が問いかける幸せの決めつけ
特に印象に残ったのが、幸せや不幸を外側から決めつけることへの問いかけです。
健常者に生まれたからといって、幸せな人生を歩めるとはかぎらない。そして、障害者に生まれたからといって、不幸になるともかぎらない。つまり、生きてみなければ、その人の人生が不幸かどうかなんてわからない。どんな苦しい境遇に生まれても、大逆転で幸せな人生を歩むことになるかもしれない。それなのに、生まれた時点で「この子は不幸だ」と決めつけてしまうのは、あまりにもったいない気がしてしまうのだ。
引用:『自分を愛する力』乙武洋匡著
「こういう状態なら幸せ」「こうだったら不幸」と、人生を簡単な物差しで判断することはできません。
できないことがあるから不幸なのではなく、その人がどんな人生を歩み、何を幸せだと感じるのかは、生きていく中で決まっていく。この一節からは、他人の人生だけでなく、自分の人生についても早々に結論を出さなくていいのだと感じます。
今の自分に足りないものばかりを数えて「自分はダメだ」と決めつける必要もありません。これからどんな経験をし、何を感じるかによって、人生の見え方は変わっていくはずです。
失敗よりも挑戦した姿勢を見る
自己肯定感について考えるうえで、もうひとつ心に残ったのが、結果ではなく挑戦そのものを受け止めるという考え方です。
たとえ失敗しても、結果ではなく、まずはチャレンジした姿勢を受けとめ、評価してあげてほしい。
引用:『自分を愛する力』乙武洋匡著
結果だけで評価され続ければ、失敗する可能性のあることには挑戦しにくくなります。失敗すれば、自分まで否定されたように感じてしまうからです。
しかし、「挑戦したこと」に目を向けてもらえるなら、結果が出なくても次に進みやすくなります。
これは子どもへの接し方だけではなく、自分自身にも向けられる考え方だと思います。何かに挑戦してうまくいかなかったとき、「失敗した自分はダメだ」と考えるのではなく、「それでも挑戦した」と受け止める。その積み重ねが、自分への信頼につながっていくのではないでしょうか。
『自分を愛する力』から学ぶ弱点との付き合い方
人には、それぞれ得意なことと苦手なことがあります。それでも私たちは、ときに苦手な部分ばかりを見て自分を評価してしまいます。
そんなときに読み返したくなる一文があります。
「できないものは仕方ない。その代わり、できることで全力を尽くそう」
引用:『自分を愛する力』乙武洋匡著
とてもシンプルですが、自分を受け入れるうえで大切な考え方だと思います。
できないことを無理に隠したり、すべて克服しようとしたりするのではなく、「できないものは仕方ない」と認める。そして、そのぶん自分にできることへ力を注ぐ。
『自分を愛する力』を読んでいると、自己肯定感とは欠点をなくした先に手に入るものではなく、欠点がある状態でも自分を否定しすぎないことなのだと感じます。
できないことがある自分も含めて、自分です。その前提に立てれば、他人の弱点についても必要以上に厳しくならずに済むのかもしれません。
自分の幸せを自分で決める
自分を愛するためには、自分の人生を誰かの価値観だけで判断しないことも大切です。
本書には、親自身の幸せについてこんな言葉があります。
親が、「親」という役割の前に、ひとりの人間として、自分の人生を幸せに生きていることが大切なんです。
引用:『自分を愛する力』乙武洋匡著
役割を果たすことだけに追われるのではなく、ひとりの人間として自分の人生を生きる。その考え方は、親だけに限らず、多くの人に通じるものがあります。
仕事でどう評価されるか、周囲からどう見られるか、世間一般の幸せに当てはまっているか。そればかりを基準にしていると、自分が本当は何を望んでいるのかが見えにくくなります。
自分にとって何が幸せなのかを自分で考え、その価値観を大切にすること。それもまた、自分を受け止めることにつながっていくのだと思います。
そして、本書のテーマを象徴するように感じたのが、次の一節です。
「ああ、そうそう。僕も自分のことが好き」。それ以来、素直にそう思えるようになった。ここでひとつ誤解してほしくないのは、「自分を愛する」ことと「自分に自信がある」ことは、けっしてイコールではないということ。
引用:『自分を愛する力』乙武洋匡著
自信がない部分があっても、自分を嫌いになる必要はない。この切り分けは、とても大切だと感じました。
何でもできるから自分を愛せるのではありません。苦手なことも、失敗することも、自信を持てないこともある。それでも「自分のことは好きだ」と言える。
自己肯定感を考えるうえで、覚えておきたい視点です。
まとめ
『自分を愛する力』から伝わってくるのは、自分を愛するために完璧になる必要はないということです。
できないことがあってもいい。失敗してもいい。大切なのは、それだけで自分自身の価値まで否定しないことです。
結果だけではなく挑戦した姿勢を見ること。できないことより、できることに力を注ぐこと。そして、自分にとっての幸せを自分で決めること。
「自分に自信が持てないから、自分を好きになれない」と感じている人にとって、自信と自己肯定感を分けて考えるきっかけになる一冊です。
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