私たちは日々の生活や仕事の中で、新しいアイデアを求められたり、複雑な問題を分かりやすく説明する必要に迫られたりすることが多々あります。そんな時に役立つのが、「アナロジー思考」です。
アナロジー思考とは?
アナロジー思考とは、日本語で「類推」と呼ばれ、異なる2つの世界の間に存在する比例関係を見出して活用する思考法です。
アナロジー思考とは日本語で「類推」のことで、2つの世界の比例関係を利用した思考法のことである。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
これは、一見まったく関係のない世界からアイデアを「借りてくる」発想とも言えます。
アナロジーとはまったく関係ない世界から「借りてくる」発想のことである。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
例えば、「かばん」と「予算管理」のように、一見すると無関係なもの同士の間でも、共通の構造や関係性を見つけることで、互いの理解を深めたり、新たな解決策を見つけたりすることが可能です。
「かばん」と「予算管理」の例のように、一見まったく異なる世界の間でのアイデアの「貸し借り」ができる。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
アブダクションとの関係
アナロジー思考は、**アブダクション(仮説的推論)**の一種とされています。アブダクションは、創造的な思考を促す「厳密でない推論」であり、新しい仮説を導き出す際に非常に有効です。
アブダクションとは日本語でいえば「仮説的推論(あるいは発想法)」と呼ばれていて、創造的思考に役立つ推論であるといわれている。これはいわば「厳密でない推論」とでもいうことができ、アナロジー思考はこのアブダクションに相当する。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
しかし、アナロジーを用いる際には注意も必要です。厳密な議論の場で使うと論理の飛躍につながる可能性もあります。一方で、複雑な事象を理解する手助けや、新しいアイデアを仮説として生み出す場合には、非常に強力なツールとなります。
厳密な議論の中でアナロジーを用いることは論理の飛躍につながる危険性を持っている。ただし、逆にいえば純粋な厳密性を必要としないような、複雑な事象の理解の助けや新しい発想を仮説として導く場合には有効な手段といえるのである。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
アナロジー思考の3つの目的
アナロジー思考には、主に以下の3つの目的があります。
1. 自分の理解を深める
アナロジー思考は、未知の事柄や複雑な概念を、すでに自分が理解している別の事柄に例えることで、より深く理解するのに役立ちます。
アナロジーとは「穴埋め問題」のようなものであり、1つの世界で既知のことを利用して他の世界での未知のものに対応して知見を得ることができる。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
2. 他人へ説明する
複雑な内容も、相手が familiar なものに例えることで、分かりやすく伝えることができます。例えば、英語の構造を説明する際に、異なる言語が融合した「ハイブリッド構造」と表現するような場合です。
英語はもともとのイギリスで用いられていた古英語に 11 世紀のフランスの侵攻によってフランス語やラテン語の文化や言語が入って支配層を中心に用いられたために現在の「ハイブリッド構造」ができあがったと考えられる。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
3. 新しい発想を生み出す
アナロジー思考の醍醐味は、まったく異なる分野からアイデアを「借りてくる」ことで、斬新な発想を生み出す点にあります。
アナロジーとは、アイデアを異なる世界から「借りてくる」ための手法であり、借り先としてはさまざまな世界が考えられる。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
斬新な発想を生む秘訣
アナロジー思考でより斬新な発想を得るためには、「借りる先の世界(ベース領域)が、借りてくる世界(ターゲット領域)から遠ければ遠いほど良い」**とされています。
アナロジー思考の実践例
多角化の成功事例:ナガオカ
長年レコード針の製造で知られていたナガオカは、三代目の社長の秀樹氏によって大きく変革しました。彼は、ナガオカの強みを単に「レコード針」という商品レベルで捉えるのではなく、「硬くて小さいものを加工する」という、より抽象的なレベルで捉え直しました。このアナロジー的な発想によって、同社は精密測定機器用の触針、小型マグネット、大規模集積回路の検査用プローブピンなど、多様な分野に進出し、多角化に成功しました。
2003年に創業者からの三代目の社長となった秀樹氏が挑んだのは、ナガオカの強みを単に「レコード針」という商品レベルでとらえるのではなく、「硬くて小さいものを加工する」という抽象化したレベルでとらえることで、もともと持っていた精密部品の扱いに関する強みを活かして精密測定機器用の触針や小型マグネット、大規模集積回路の検査用プローブピン、といった製品による多角化に成功してレコード針の割合は 10% 程度にまで下げた。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
日常生活に潜むアナロジー
私たちは、24時間365日、アナロジー思考を実践できる機会に恵まれています。
つまり「すべての事象を自分に関係させる」ことである。「遊びでの学びを仕事に活かす」「仕事の経験を遊びに応用する」「プライベートでの『お客』としての経験を自分の営業や商品企画に活かす」「講演を聞いて自らのプレゼンに取り入れる」など、発想を促せる場面は 24 時間、365日いつでもあるということである。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
例えば、休日に航空機に乗っている時でも、一流のプロは常に顧客の視点に立ち、その商品やサービスについて考えていると言います。これは、自身の仕事に直接関係ない場面でも、「お客」としての経験を自分の仕事に応用するというアナロジー思考の典型的な例です。
航空業界では、「休日の航空機でくつろげなければ一人前」という言葉があるそうである。これは飲食業でも物品販売業でも、顧客と接する職業であればどの仕事でも当てはまるだろう。その道の一流の人は、自分が顧客の立場に立っても(むしろその状況の方が) 常にその商品やサービスのことを(相手の立場や気持ちを想像しながら) 考えているものである。
引用:『アナロジー思考』細谷 功著
まとめ
アナロジー思考は、私たちの理解を深め、円滑なコミュニケーションを可能にし、そして何よりも新しい発想を生み出す強力なツールです。日常生活の中に潜むヒントを見つけ出し、異なる世界から積極的にアイデアを「借りてくる」ことで、あなたの思考はさらに柔軟で創造的なものになるでしょう。
アナロジー思考を意識的に取り入れて、日々の課題解決や新しい価値創造に役立ててみませんか?
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