「タスクが全部片付いたら、本当の人生が始まる」 そう信じて、私たちは日々効率化を追い求めています。しかし、どれだけライフハックを駆使しても、メールは減らず、やりたいことに辿り着けないのはなぜでしょうか。
『限りある時間の使い方』は、そんな私たちの「生産性への執着」を打ち砕き、限られた人生(平均してわずか4000週間)をどう受け入れるかを説いた一冊です。今回は、本書の要点をブログ形式で紹介します。
「効率化」があなたをさらに忙しくする罠
私たちは、洗濯機や電子メールなどの便利なツールがあれば、時間に余裕ができると考えがちです。しかし現実は逆でした。
社会史研究者のルース・シュウォーツ・コーワンは、著書『お母さんは忙しくなるばかり』のなかで、洗濯機や掃除機といった「省力化」のための家電が、実際にはまったく家事を楽にしなかったと指摘する。なぜかというと、家事のレベルに対する社会の期待値がぐんと上がり、家電による省力化のメリットを相殺してしまったから
引用:『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン、高橋璃子著
効率を上げると、周囲からの期待値も上がり、さらに多くのタスクが舞い込みます。 「仕事の量は、完成のために利用可能な時間をすべて満たすまで膨張する」というパーキンソンの法則の通り、すべてをこなそうとする誘惑に打ち勝つことこそが、本当の解決策なのです。
限界を受け入れる「良い先延ばし」の技術
私たちは「何もかもはできない」という事実を、どこかで見ない振りをしています。しかし、その限界を直視することこそが、最も効果的な時間管理術になります。
限界を受け入れるというのは、つまり「何もかもはできない」と認めることだ。自分がやりたいことも、他人に頼まれたことも、すべてをやっている時間はない。絶対にない。だから、それを認めて生きる。そうすれば、少なくとも無駄に自分を責めなくてすむ。
引用:『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン、高橋璃子著
重要なのは、何に集中して何を「放置」するかを賢明に選ぶことです。これを本書では「良い先延ばし」と呼んでいます。すべてを片付けるのが不可能なら、自分で選んで放置する方が、人生の主導権を取り戻せるからです。
「今」を未来への手段にしない
私たちは「いつか幸せになるため」「いつかリラックスするため」に、今という時間を犠牲にしがちです。しかし、未来への不安を解消しようと躍起になればなるほど、現在の充実感は失われていきます。
僕たちは時間をあるがままに体験すること(時間であること、といってもいい)をやめて、「今」という時間を未来のゴールにたどり着くための手段に変えてしまった。今はまだ楽しむときじゃない。いつかタスクがすっかり片づいたら、そのときこそリラックスして楽しもう、というわけだ。
引用:『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン、高橋璃子著
未来はどうなるか誰にもわかりません。だからこそ、古代の思想家たちが言うように「今ここにある現在」に注意を向けることが大切です。たとえ渋滞に巻き込まれていても、その不自由さを含めて「生きているという事実」に感謝する視点が、人生の解像度を高めてくれます。
「次にすべきこと」だけをやる
大きな目標や完璧な未来を求めすぎると、身動きが取れなくなります。私たちができるのは、常に「次にすべきこと」だけです。
たとえ正解がわからなくても、とにかく次にすべきことをやるしかない。「それしかできない」ということは、裏を返せば「それしかしなくていい」ということだ。この真実を受け入れることができれば──つまり、自分が限りある人間であるという状況に潔く身を任せるならば──これまでになく大きな達成感を手に入れることができるだろう。
引用:『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン、高橋璃子著
私たちは、完成を見ることができない大聖堂を建てる中世の石工のような存在かもしれません。それでも、目の前の一つの石を置くことには大きな価値があるのです。
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