「クレーム対応」と聞くと、身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。顧客満足を追求する社会だからこそ、些細な不満が大きな怒りへとエスカレートし、理不尽な要求を突きつける「モンスタークレーマー」が増加していると言われています。
しかし、この難局を乗り越えるための効果的な「心構え」と「技術」が存在します。今回は、『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』の著者、援川 聡氏が明かす、クレーム対応のヒントをいくつかご紹介します。
顧客とクレーマーを見極める
クレーム対応を成功させる第一歩は、「お客様」と「クレーマー」を冷静に見極めることです。
初期の段階では、相手が「ホワイト」なのか「グレー」なのか、「ブラック」なのかは判断できません。そのため、まずは「性善説」に基づいた対応から始めるべきだと著者は述べています。
クレーム発生直後の段階では、相手のお客様が「ホワイト」なのか「グレー」なのか「ブラック」なのかはわかりません。顧客満足をベースにした「性善説」でスタートするべきです。
引用:『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル――100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』 援川 聡著
しかし、対応が進む中で、金品や特別待遇の要求が明らかになったり、「誠意を見せろ」と強く補償を求められたりした場合は、対応を切り替えるタイミングです。この時、相手はもはや「お客様」ではなく、「悪質クレーマー」と判断し、「危機管理」モードに移行する必要があります。
悪質クレーマーには「捨身」の覚悟で
悪質クレーマーと化した相手には、要求に応じる必要はありません。
クレーム対応の場面で言えば、誠意をもって説明・お詫びをしても聞き入れてもらえないばかりか、相手の主張の背後に金品や特別待遇の要求が見え隠れする段階です。そうなれば、もう危険ラインを越えたと判断し、「お客様扱い」をやめて、「悪質クレーマー」としての対応に切り替えるのです。ここが、「顧客満足」から「危機管理」に大きくモードチェンジする段階です。
引用:『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル――100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』 援川 聡著
この段階では、相手の要求を一切受け入れず、クレーマーが自ら諦めて退却するのを待つことが、解決への鍵となります。
相手を「壊れたスピーカー」だと思う
度を越えた罵声や怒鳴り声は、対応する側の精神をすり減らします。しかし、著者は「常軌を逸したクレーマー」は「壊れたスピーカー」だと思えばいいと助言します。
常軌を逸したクレーマーは、「壊れたスピーカー」だと思えばいいのです。まともに取り合ってもしかたがありません。
引用:『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル――100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』 援川 聡著
耳元で怒鳴られたら、受話器を耳から離すなど、物理的に距離をとることも有効です。また、悪質なクレームは、個人ではなく組織に向けられたものであることを心に留めておくだけで、気持ちが少し楽になります。
使えるテクニック|ギブアップトークと録音
クレーマーの脅し文句に対して、まともに向き合う必要はありません。
著者は、相手の土俵に上がらない「ギブアップトーク」を推奨しています。「私ひとりでは判断できません」「大切なことですから、しっかり協議してお返事いたします」といったフレーズを使って、話をかわすことが効果的です。
さらに、悪質なクレーマーとのやり取りは、後々のトラブル回避のためにも録音しておくことが重要です。
クレーマーとのやりとりを録音することについては、個人情報保護法への抵触を心配するかもしれませんが、それには及びません。事前にひと言、「大事なことですので、記録させていただきます」と、断っておくといいでしょう。自分の氏名も名乗らないような悪質なクレーマーに対しては、事前に録音の許可を求める必要もありません。堂々と、黙って録音すればいいのです。
引用:『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル――100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』 援川 聡著
事前に許可をとるのが理想的ですが、氏名を名乗らないような悪質性の高い相手には、許可なく録音しても問題ないでしょう。
警察相談専用電話「#9110」も活用する
どうしても対応が困難な場合は、ひとりで抱え込まず、警察相談専用電話「#9110」に相談することもできます。いざという時のために、この番号を携帯電話に登録しておくのも良いでしょう。
クレーム対応は、企業全体で取り組むべき課題です。現場任せ、個人任せにせず、組織として対応マニュアルを整備し、全員で情報共有する体制を築くことが、クレーム問題の根本的な解決につながります。
今回ご紹介したヒントが、あなたのクレーム対応の一助となれば幸いです。
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