傷つきやすいあなたへ贈る、禅の教えで心を強くする方法

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私たちは日々の生活の中で、人間関係や仕事、些細な出来事に心を揺さぶられることがあります。そんな時、どうすれば心を強く持ち、しなやかに生きられるのでしょうか?禅の教えには、傷つきやすい私たちが「図太く」生きるためのヒントが詰まっています。今回は、枡野俊明氏の著書『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』から、そのエッセンスをご紹介します。

 

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心ない言葉や行動に心を乱されない秘訣

 

他人の言動に深く傷つくことはありませんか?禅の教えは、そうした「心ない」と思える言葉や行動への向き合い方を教えてくれます。

 

相手の「うっかり」と捉える

 

心ないと響く言葉は〝うっかり〟口が滑って出たもの、こちらを不快にさせるふるまいは〝たまたま〟虫の居所が悪かったりしてとったもの、である可能性が高いわけです。いずれにしても、含むところはないのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

相手の言動を、悪意によるものではなく「うっかり」や「たまたま」と捉えることで、不必要な心の負担を減らすことができます。

 

怒りの感情を鎮める「ありがとさん」の呼吸法

 

禅僧である板橋興宗禅師は、相手の言動にカチンときた時、ある方法で怒りを鎮めていたそうです。

板橋興宗禅師は常々こんなことをいっておられました。禅僧といえども、相手の言動にカチンとくることはあります。そんなとき、 板橋禅師は深い呼吸を数回して、「ありがとさん」を三度心のなかで唱えるのだそうです。 すると、怒りの感情はふーっと鎮まってしまうというのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

怒りを感じた時、すぐに反応するのではなく、深い呼吸と共に「ありがとさん」と唱えることで、感情に支配されず冷静さを取り戻す助けになるでしょう。


 

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他者との比較を手放し、自分を肯定する

 

私たちはつい、他人と自分を比較してしまいがちです。しかし、その比較こそが劣等感を生み出す原因だと禅は説きます。

 

比較を手放すことの重要性

 

劣等感は自分と他人を比較することで生まれます。禅はその「比較する」ということをもっとも嫌うのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

他人と比べる心を捨てると、ピリピリと過敏に反応することがなくなり、心がゆったりとしてきて、いいことがいっぱい起きます。たとえば、 外に目を向ける必要がなくなったぶん、自分の内面に目を向けることができるでしょう。自分を見つめる時間が増えるのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

他人との比較をやめることで、私たちは無駄な焦りや不安から解放され、自分自身の内面に目を向ける時間を持てるようになります。

 

短所を補うより、長所を磨く

 

自分の欠点ばかりに目を向けていませんか?禅の視点では、短所を改善するよりも長所を伸ばすことに注力する方が、効果的で楽しいとされています。

短所を補うより、長所を磨くことのほうが、ずっと効果は上がりますし、だいいち、取り組んでいて楽しい。「一〇」の努力をしても、前者は「三」の効果しか得られないかもしれないのに対して、後者なら二倍、三倍の効果がもたらされます。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

自分の良いところに目を向け、それをさらに伸ばしていくことで、より大きな喜びと成果を得られるでしょう。


 

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禅に学ぶ「生き方」のヒント

 

日々の生活をより豊かに、そして穏やかに送るための禅の智慧は多岐にわたります。

 

「一行三昧」で目の前のことに集中する

 

「一行三昧」  真っすぐな心を持って、ひとつのことに全力を尽くす、という意味です。あらゆることにこの一行三昧で臨む。それが禅のふるまい方であり、禅の生き方そのものといっていいと思います。別のいい方をすれば、「そのこと」と「ひとつになる」ということです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

目の前のたった一つのことに心を集中し、全力で取り組む「一行三昧」。これにより、余計な雑念から解放され、充実感を得られるようになります。

 

失敗を恐れず、わからないことは放っておく

 

新しいことへの挑戦や、過去の失敗に縛られていませんか?禅は、失敗への恐れを手放す考え方を教えてくれます。

やってみなければ失敗するかどうかはわからないのです。 わからないことは放っておく。失敗に縛られない。それが禅の根本的な考え方です。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

まだ起きていない未来の失敗を心配するのではなく、「わからないことは放っておく」という姿勢を持つことで、心の自由を取り戻せます。

 

思い通りにならないことを受け入れる「知足」の心

 

私たちは、物事が自分の思い通りに進まないと、すぐに不満を感じがちです。

世の中に思いどおりにいくこと、思いどおりになることなど、滅多にないのです。それにもかかわらず、思いどおりにしようとするから、やっかいなことになるのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

そして、どんな状況でも「足るを知る」という「知足」の精神は、私たちに安らぎを与えてくれます。

「知足」文字どおり、「足る」を「知る」ということです。お釈迦様はこうおっしゃっています。 「知足の人は地上に臥すと 雖 も、なお安楽なりとす」足ることを知っている人は、たとえ地べたに寝るような生活をしていても、心は安らかで幸せを感じることができる、という意味です。 足ることを知るとは、どんな状況に置かれていても、それを「ありがたい」と受けとめることだといってもいいでしょう。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

現状を受け入れ、「ありがたい」と感じる心を持つことで、たとえ困難な状況にあっても穏やかでいられます。

 

落ち込んだ時は「掃除」で心を整える

 

心が沈んだ時、どのように対処していますか?禅では、身体を動かすことが推奨されています。

禅の考え方からいえば、落ち込んだときにすすめたいのが身体を動かすことです。なかでも「掃除」がいちばん。 一所懸命に身体を動かしていると余計なことを考えずにすみます。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

掃除に没頭することで、心のざわつきが収まり、気分転換にもなるでしょう。

 

その場で「嫌な思い」を断ち切る

 

嫌なことや不快な出来事があった時、その思いを引きずっていませんか?

思いをその場、その場に置いてくれば、心は安らかでいられる。一休さんがいわんとしたのは、そういうことでしょう。この逸話がヒントになりそうな気がしませんか? その瞬間、「嫌だ」と感じるのは自然なことですし、それはそれでいいのです。 大切なのはその思いをその場に置いてくること、その場で断ち切ってしまうことです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

嫌な感情をその場で手放す訓練をすることで、心の負担を軽減できます。

 

心の持ち方で世界は変わる

 

「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなすものは 心なりけり」 これについては、前半を高杉が詠み、「すみなすものは 心なりけり」という後半部分は、病床にあった高杉の看病にあたっていた女流歌人、野村望東尼 が詠んだとされています。その意味は、おもしろいことが何ひとつない世の中だって、心の在り様(持ち方)ひとつでおもしろく生きていくことができるということですね。仕事につまらないも、おもしろいもないのです。 つまらなくしているのも自分、おもしろくするのも自分の心なのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

世の中が面白くないと感じるのは、自分の心の持ち方次第。仕事も面白くするのも、つまらなくするのも、すべては自分の心にかかっています。

 

「でも」を禁句にする

 

精神科医で名エッセイストとしても知られる斎藤茂太さんは、こんなことをいっています。 「〝でも〟を自分に許していると、人生は少しずつあとずさりを始める。〝でも〟多発の結果は、〝やればよかった〟の後悔になっていくのではあるまいか」

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

でも」という言葉は、行動を妨げ、後悔を生み出す原因になります。言い訳をせず、前に進む勇気を持つことが大切です。

 

丹田呼吸で心を落ち着かせる

 

精神的な安定には、呼吸法も重要です。

丹田呼吸では、まず、背筋を伸ばし、骨盤を立てます。この姿勢をつくらなければ、深く、長い呼吸はできません。丹田というのはおへその下二寸五分(約七・五センチ)の位置です。その丹田を意識し、そこにある空気を全部吐き出すような気持ちで、ゆっくりと息を吐き、吐き切ります。吐き切ってしまえば、自然に空気が入ってきますから、吸うことを意識する必要はありません。吐いたときと同じように、ゆっくり丹田にまで息を落とす(吸い込む)気持ちでおこなってください。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

丹田を意識した深い呼吸は、心を落ち着かせ、集中力を高める効果があります。

 

「いま」この瞬間に生きる

 

私たちは過去の後悔や未来の不安に囚われがちですが、本当に存在するのは「いま」この瞬間だけです。

大切なのは「いま」というその瞬間のみであり、それは過去を引きずってもいないし、未来に繋がってもいないということでしょう。人は過去、現在、未来という時間の流れのなかで生きています。しかし、たったいま生きているのは、まぎれもなく現在です。その現在は過去の後でもないし、未来の前でもないのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

いま」を大切に生きることで、不必要な心の負担から解放されます。

 

怒りをコントロールする数え方

 

怒りを感じた時、すぐに感情的に反応するのではなく、一度冷静になるための時間を作ることも有効です。

「腹が立ったら、何かいったり、したりする前に一〇まで数えよ。それでも怒りがおさまらなかったら一〇〇まで数えよ。それでもダメなら一〇〇〇まで数えよ」米国の独立宣言を起草して第三代大統領となったトーマス・ジェファーソンの言葉です。この箴言は家康の言葉とピタリ符合します。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

怒りの感情が湧き上がったとき、反射的に反応するのではなく、数を数えることで一呼吸置くことができます。

 

反省は具体的に、限定的に行う

 

失敗や問題があった時、すべてを反省しすぎる必要はありません。

必要なのは、すべてについて反省するのではなく、どの段階のどんな部分に問題があったか、どこが足りなかったか、を検証し、問題があった、不足していた、という点を見つけて、そこについて反省するということです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

闇雲に反省するのではなく、具体的に何が問題だったのかを特定し、その点についてのみ反省することが大切です。

 

「結界」で心を切り替える

 

仕事や人間関係の悩みを、プライベートな時間まで引きずっていませんか?

最寄り駅の改札や、自宅の門・玄関を結界に見立ててはいかがでしょうか。そして、その結界を越えたら、人間関係や仕事など、心を煩わせることは考えないようにするのです。

引用:『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』枡野俊明著

特定の場所を「結界」と見立て、そこを境に意識を切り替えることで、心のオンオフを明確にし、ストレスを軽減できます。


『傷つきやすい人のための 図太くなれる禅思考』は、現代社会に生きる私たちが直面する心の悩みに、禅の視点から具体的な解決策を与えてくれる一冊です。これらの教えを日々の生活に取り入れ、少しずつでも心を強くし、穏やかな毎日を送ってみませんか?


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