「お金を増やす」ことばかりが注目されがちな現代で、「いかに減らすか」というユニークな視点から、私たちの働き方や消費行動、そして人生における価値観について深く考えさせてくれる森博嗣氏の著書『お金の減らし方 (SB新書)』。本書は、単にお金を節約するという話ではなく、自分にとって本当に価値のあるものに時間や労力、そしてお金を使うことの重要性を教えてくれます。
お金との向き合い方:増やすよりも大切なこと
「運用しませんか」という誘いがあるけれど、「増やしたくありませんから」と断っている。そんな面倒なことをしないでも、今こうして書いているように、思いつくことを文章にすれば、それが金になる。仕事というのは、少なくとも投資やギャンブルよりは期待値が高い、と僕には思える。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
著者は、資産運用のような「お金を増やす」ことよりも、自分のスキルや時間を「仕事」に投じることの確実性を強調します。しかし、もし自由になるお金を増やしたいと考えるのであれば、以下の2つの方法が挙げられています。
ただし、自由になるお金を、もし増やしたいのなら、二つの方法が絶対に有利なものであることは確実だ。一つは、インプットに励むこと。つまり、仕事に精を出すことである。もう一つは、アウトプットを慎むことであり、できるかぎりお金を使わないこと。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
「仕事」という名のインプット
ここで言う「インプット」とは、まさしく仕事に精を出すこと。自分の能力を高め、社会に貢献することで得られる対価こそが、最も確実な「富を増やす」方法であると説いています。
仕事は例外なく社会に貢献していることはまちがいない。そのプライドを持って、自分で自分を褒めれば良い。これは、冗談ではなく、とても大事なことだと僕は考えている。自分で自分を褒められないようになったら、その仕事を辞めた方が良いだろう。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
仕事はときに「嫌な思い」と「お金」を交換する行為である、と著者は冷静に語ります。しかし、その中でも自身の仕事にプライドを持ち、自分自身を褒めることの重要性を説いています。
仕事というのは「嫌な思い」と「お金」を交換する行為なのである。この基本をときどき思い出そう。「良い思い」や「楽しい思い」をして給料がもらえるような職場は、奇跡的な場でしかない。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
「お金を使わない」というアウトプットの抑制
もう一つの方法は、アウトプットを慎む、つまり「できる限りお金を使わない」こと。これは単なる節約ではなく、無駄な支出を抑え、本当に価値のあるものにお金を使うための意識改革を促します。
五千円がどれくらいの仕事で得られるものか、といった感覚も持っているはずである。その労力と交換しても損がないほど、目の前にあるバッグは価値があるのか、と考えられたら、なかなかのものだろう。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
私たちは、目の前の商品の「値段」につい囚われがちです。しかし著者は、その値段が「自分の労力と交換しても損がないほどの価値」があるのか、という視点で考えることを提案します。
ものの価値というのは、そのものの値段ではない、という点が非常に重要である。値段はいちおうついているけれど、それは売りたい側が勝手に決めた数字だ。買う側は、自分にとっての価値を、そこに見出そうとする。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
衝動買いや見栄からの支出を避ける
「高価なものは価値がある」「高価なものを持っていれば尊敬される」といった安易な認識は、ときに無駄な支出を招きます。
値段がすなわち価値だ、という安直な認識に長く浸かっていると、高価なものは価値がある、高価なものを持っていれば周囲から尊敬される、
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
また、他者からの評価を意識した「見栄」による支出にも警鐘を鳴らしています。
おそらく多くのものは、他者に対する見栄であったり、自分が惨めだと思いたくなかったり、そんな「感情」に根ざした支出だと思われる。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
豊かな人生のための「お金の減らし方」
結局は、お金の減らし方が、人生における考えどころとなるだろう。
何にお金を使うのか?何を買うのか?その買ったものを、どう使うのか?そこから何が生まれるのか?自分は、そのことでどのように変化するのか?それを考えることが、当面の課題、お金の使い道である。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
著者は、人生において最も考えるべきことは「何にお金を使うのか」だと述べます。それは、単に物を買うことにとどまらず、そのお金を使うことで自分に何が生まれ、どのように変化するのか、という本質的な問いかけです。
欲求に貪欲になることの重要性
お金持ちは、お金そのものに貪欲なのではなく、自分が欲しいもの、したいことに貪欲である、と著者は指摘します。この「貪欲さ」こそが、富を築く原動力になると言います。
お金持ちが貪欲だというのは、ある意味では、そのとおりだと思う。お金に貪欲なのではなく、自分が欲しいもの、自分がしたいことに貪欲なのである。つまり、これがお金持ちになった原動力だといっても良い。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
他者に依存しない目標を持つ
そして、人生の目標を立てる際には、できる限り他者に依存しないものを設定することを勧めています。
できるかぎり、他者に依存しないものを、自分の人生の目標とすることを、是非おすすめしたい。これは、多くの人にとって、非常に難しい条件かもしれないが、本来それが本当の夢というものである、と僕は考えている。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
自分の「本当の価値」を見つける
最終的に著者は、私たちの人生の目的は、自分が満足できる状況に自分を導くこと、つまり「成功」であると語ります。そして、その過程でお金は頼もしい道具となり得るのです。
人間の楽しみというのは、結局は自己満足なのだ。自分が満足できる状況へ自分を導くことが、つまり人生の目的であり、すなわち「成功」というものである。そのためには、お金は頼もしい道具だといえる。これを利用しない手はない。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
これまでの人生で何が楽しかったか、目を輝かせた時間はあったか、と問いかけ、その時の気持ちを取り戻し、少しずつでもできることを試してみることの重要性を説いています。
その楽しさこそが、あなたの本当の価値なのである。
引用:『お金の減らし方 (SB新書)』森 博嗣著
『お金の減らし方』は、私たちがお金とどう向き合い、どのように使うべきか、そして真の豊かさとは何かを深く考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
あなたは、何に「お金を減らして」いきますか?
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