読書とは、単に情報を得るための手段ではありません。多くの著書を持ち、独自の視点で世界を切り取る森博嗣さんは、著書『読書の価値』の中で、読書の本質や本との向き合い方について、非常に明快な持論を展開しています。私たちはなぜ本を読むのか、そしてどのように本を選び、自分の糧にすべきなのか。本書から得られた、思考を深めるためのヒントを整理しました。
読書とは「自分の中」で物語を広げること
多くの人は「文章を読んで意味がわかった」ことをもって読書をしたと考えがちです。しかし、森さんはその先にあるプロセスこそが重要だと説きます。ただ受け取るのではなく、読んだ内容を自分の頭の中でどう動かしていくか、という主体性が問われているのです。
文章を読んで、それを自分のものとして「展開」する行為が、本来の読書体験だったはずである。
引用:『読書の価値』 森 博嗣著
文章を読むことは、ゴールではなくスタートに過ぎません。得られた言葉をきっかけに、自分なりの想像や思考を膨らませることこそが、読書の醍醐味といえるでしょう。
本との出会いは「人との出会い」と同じである
本を選ぶとき、私たちはついつい「役立つかどうか」や「評判が良いかどうか」を気にしてしまいます。しかし、森さんは「本は人とほぼ同じだ」と語ります。誰かに薦められた人ではなく、自分が会いたいと思う人に会いに行くように、本もまた自分の意志で選ぶことが大切です。
結局、本というのは、人とほぼ同じだといえる。本に出会うことは、人に出会うこととかぎりなく近い。それを読むことで、その人と知合いになれる。
引用:『読書の価値』 森 博嗣著
本の選び方として、僕が指摘したいのはその一点だけ。とにかく、本は自分で選べ。それだけだ。
引用:『読書の価値』 森 博嗣著
ネットのレコメンド機能やランキングに頼りすぎると、自分の興味はいつの間にか偏ってしまいます。意識的に未知のエリアへ足を踏み入れ、自分自身で「これだ」と思える一冊を探し出す習慣が、豊かな思考を作ります。
日常から離れたインプットが「視点」を変える
文章をうまく書けるようになりたい、あるいは思考力を高めたいと考える人にとって、読書は最も効率的なトレーニングになります。それは、読書が日常のルーチンでは得られない「質の高い刺激」を与えてくれるからです。
連想のきっかけとなる刺激は、日常から離れたインプットの量と質に依存している。そして、その種のインプットとして最も効率が良いのが、おそらく読書だ、と僕は考えているのだ。
引用:『読書の価値』 森 博嗣著
また、読書を通じて多様な価値観に触れることは、自分以外の視点を持つ訓練にもなります。
文章が上手いというのは、つまりは、自分の書いた文章を客観的に読み直せるかどうか、であり、それは結局「視点」のシフト能力なのだ。自分以外の誰かになったつもりでそれが読める、架空の人物の視点で文章を読める、ということである。
引用:『読書の価値』 森 博嗣著
限られた人生の中で、何を読み、どう生きるか
人生を日数に換算すると、わずか三万日ほどしかありません。毎日一冊読んだとしても、一生で出会える本は三万冊程度です。この限られた時間の中で、私たちはどのような言葉に触れ、自分を形成していくべきでしょうか。
森博嗣さんの言葉は、効率や正解を求める現代の読書スタイルに、一石を投じてくれます。「自分のために、自分で選び、自分の中で展開する」。このシンプルな原則に立ち返ることで、読書の価値はより一層深まるはずです。
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