現代の複雑で不確実な社会で、より良く生きるための「裏道」とは何でしょうか? 橘玲氏の著書『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』は、恋愛、仕事、投資、そして社会との関わり方まで、私たちが直面するさまざまな「システム」を冷静に分析し、その攻略法を提示してくれます。
データが示す「現実」を知り、感情や常識に流されず戦略的に行動すること。本書から、ディストピア化しつつある現代を生き抜くための、いくつかの重要な「ハック」の知恵を読み解きます。
恋愛・結婚市場のデータと「ハイパーガミー」
女性の「ハイパーガミー」傾向の現実
恋愛や結婚は個人の感情によるものと思われがちですが、そこには経済的・社会的な「市場」の論理が強く働いています。特に女性が自分より社会的地位や経済力のある男性を求める傾向は、洋の東西を問わずデータで裏付けられています。
洋の東西を問わず、女性には強いハイパーガミーの傾向があることが知られている。アメリカでは、女性は男性の約2倍、相手に経済的な余裕があることを重視している。日本でも、 20 代で年収600万円以上の男性はほぼ全員に交際経験があるが、年収200万円未満では半分程度だ* 11。 欧米の婚活サイトのデータを分析すると、女性が自分より高い学歴の男性を好む傾向がはっきりわかる。女性が修士号をもつ男性のプロフィールに「いいね!」を押す割合は、学士号の男性より 91%(約2倍) も多いのだ*
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
この「ハイパーガミー」(女性が自分より上位の相手を選ぶ傾向)は、特に高学歴の女性にとって、パートナー探しを困難にする要因ともなっています。
イギリスで行なわれた研究では、女性のIQが 16 ポイント上がるごとに、結婚の可能性は 40%低下した。一方、男性の場合は、IQが 16 ポイント上がるごとに、結婚の可能性が 35%上昇した(IQ 16 ポイントは偏差値 10 に相当する)。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
高学歴な女性が増える一方、同等の教育水準を持ち、かつ経済力も上回る男性の数は限られるため、マッチングの不均衡が生じているのです。
「男はカネ」「女は若さ」という残酷なデータ
長期的なパートナー選びにおいては、外見だけでなく、社会的な成功が男性にとって決定的な要素となります。
大学生のパートナー選びを調べると、国を問わず、男女ともに「外見」が圧倒的に重要で、「性格」や「学業成績」などそれ以外の要素はほとんど影響がない。だが社会人になったあと、モテる要素がなにかはデータがはっきりと示している。それをひと言でいうなら、「男はカネ」「女は若さ」だ* 18。 長期的なパートナー候補として選ばれるのは、ユーモアがあって楽しい男ではなく、社会的・経済的に成功した男だ。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
感情論ではなく、このデータが示す「現実」を認識することが、より良い選択をするためのスタートラインとなります。
現代を蝕む「依存テクノロジー」
デジタル機器は人間関係の質を下げる
現代社会を「ハック」する上で、避けて通れないのがデジタルテクノロジーとの付き合い方です。スマートフォンやSNSは生活を便利にする一方で、私たちの集中力や人間関係に深刻な影響を与えています。
ある被験者グループはスマートフォンを横に置き、別の被験者グループは紙のノートを横に置いたところ、スマホが手元にあった被験者はあまり打ち解けられなかった。実験後の感想でも相手との関係の質を低く評価しており、相手に対して感じた共感や信頼の度合いも低かった。スマートフォンは、たとえ使っていなくても、そこにあるだけで人間関係の質を損なうのだ。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
スマホがそこにあるだけで、私たちは目の前の会話よりも、その向こうに広がる世界に意識が引っ張られてしまい、集中力を奪われるのです。
「デジタル・ミニマリズム」という解決策
デジタル依存から脱却し、主体的な生活を取り戻すために提唱されているのが「デジタル・ミニマリズム」です。これは、オンラインでの時間を容赦なく削り、本当に価値ある活動に集中するという考え方です。
SNSによる超常刺激に対処するには、「オンラインで過ごす時間を容赦なく削り、ごく少数の価値ある活動に集中する」しかないとして、ニューポートはこれを「デジタル・ミニマリズム」と名づけた* 10。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
具体的には、30日間のアナログ生活で依存のサイクルから脱し、その後は「大事なことを達成するためにメリットがあるか否か」という基準で厳選した少数のオンライン活動だけを復活させることが推奨されています。
経済的自由と「効果的な利他主義」
21世紀の人生設計|FIREとミニマリズム
現代のシステムから自由になるための具体的な戦略として、「FIRE」(Financial Independence, Retire Early|経済的自立と早期退職)とミニマリズムが結びついています。
FIREの基本は「4%ルール」で、年間生活費を 25 倍した金融資産を株式と債券に分散投資すれば、毎年取り崩しても 30 年暮らしていける確率が 95%だという。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
経済的な独立を達成することで、「イヤな奴との仕事を断れる」という贅沢な選択肢を得て、幸福度を劇的に向上させることが可能になります。この「FI(経済的に独立した)ミニマリズム」こそが、21世紀の人生設計の主流になっていく可能性が示唆されています。
慈善活動の「コスパ」最大化
個人の生活設計だけでなく、社会貢献においても「ハック」の視点は重要です。それが「効果的な利他主義」という考え方です。これは、限られた資源(寄付金)をどのように最適配分すべきかという経済学的な問題として慈善を捉えます。
同じ1万円を慈善活動に投じるのなら、そのお金をもっとも困っているひとたちのために使うことで、〝善意のコストパフォーマンス(コスパ)〟を最大化できる。
引用:『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』橘玲著
先進国に暮らす者が「倫理的な生き方」をするには、感情に訴えかけるニュースに流されるのではなく、エビデンスによって効果が証明された事業に寄付することが最も合理的だとされています。例えば、貧しい国の子どもたちの腸内寄生虫を駆除する活動のように、地味でも長期的に大きな経済的・社会的効果をもたらす介入に投資すべきだというのです。
まとめ
橘玲氏が提示する「裏道」は、感情や常識、社会の物語に左右されず、データとエビデンスに基づき、いかに合理的に自己の利益と社会の利益を最大化するかという戦略です。
恋愛・結婚の市場構造、デジタル依存からの脱却、そして経済的自由の確立と効果的な慈善活動。これらすべてにおいて、システムを冷静に見抜き、主体的に行動する「ハッカー」の精神が求められています。
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