「頭の回転が速い」と聞くと、瞬時に正解を導き出し、淀みなく話す人をイメージしがちです。しかし、実はそれだけではありません。今回ご紹介するのは、岡田斗司夫さんの著書『頭の回転が速い人の話し方』から読み解く、真に「頭の回転が速い人」が実践しているコミュニケーションの極意。それは、相手を理解し、共感を土台にしながら、共に「答えを作る」プロセスにありました。
価値観が異なる相手とのコミュニケーション
私たちは日々、様々な価値観を持つ人々と接しています。家族、友人、職場の同僚、取引先など、それぞれの背景や考え方は多種多様です。
「価値観を共有していない者同士が接すると、どちらかがどちらかに迎合しない限り、コミュニケーションは困難を極める ことになります。そのほか、個別のケースにおいても、大小さまざまなゆがみがあるはずです。」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
この言葉は、価値観の違いがコミュニケーションにおいていかに大きな壁となるかを明確に示しています。しかし、岡田さんはこの困難を乗り越えるための具体的な方法を提示しています。
徹底的な共感と再構築
相手と異なる意見を持つとき、私たちはつい自分の意見を主張しがちです。しかし、岡田さんは、まず相手を徹底的に理解することの重要性を説きます。
「むしろ、自分が共感できない、もしくは自分とケンカになるかもしれない人たちのことを徹底的に考えるんです。どこまで徹底的かというと、 相手の意見に『共感』し、自分の言葉に再構築する までです。」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
これは単なる「同調」ではありません。相手の意見を深く理解し、あたかも自分の意見であるかのように咀嚼し、表現し直すことで、相手は「理解されている」と感じます。このプロセスこそが、コミュニケーションの突破口を開く鍵となります。
共感が生み出す好循環
相手への共感は、やがて自分への共感として返ってきます。
「人間というのは、相手が共感してくれた分、そのお返しとして自分の中にも相手に対して共感する余地が生まれるものです。 ここまでくれば、自分の意見を理解してもらうのも簡単になってきます。次のように主張するんです。 『AとBとCの考え方もよくわかる。だから、それぞれの主張を取り入れながら、 という方向性を探るのはどうだろうか? あるいはEという方向もあるよね』」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
相手が共感してくれたと感じることで、心の中に相手へのスペースが生まれ、自分の意見も受け入れられやすくなるのです。このように、一方的に自分の意見を押し付けるのではなく、相手の意見を尊重し、建設的な議論の場を作ることで、より良い結論へと導くことができます。
「伝わる」瞬間を追求する
相手に自分の意見が「伝わる」瞬間は、コミュニケーションにおいて非常に重要です。
「『あなたはこれを選んだんですね? わかりますよ』と共感し、僕の意見を伝えることでやっと相談者の足元をぐらつかせることができるんです。 これが伝わる瞬間です。結局、それぐらいしか人間にはできませんが、それで十分なんです。それが共感であり、わかる、伝わるということなんです。」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
単に自分の意見を述べるのではなく、相手の選択や考えをまず肯定し、共感することで、相手は初めてこちらの意見に耳を傾ける準備ができます。この共感のプロセスなしには、どんなに素晴らしい意見も相手に響くことはありません。
自分の考えは「動く」ことを恐れない
頭の回転が速い人は、決して自分の意見に固執しません。
「周りの人たちとの対話を重視して、そこで出た結論をみんなの結論にしてしまう ということです。つまり、自分の考えは常に動いてしまう。 だからといって、自分はコロコロ考えの変わるカメレオンみたいな人間ではないかと、ネガティブにとらえる必要はありません。 こっちではこういう結論、あっちではああいう結論になったという矛盾をあえて受け入れるんです。 僕も含めて人間というのは自分が思っているほど賢くありません。つい、自分の立場だけを考えてしまいます。 『三人寄れば文殊の知恵』ではないですが、自分の結論を押しつけることを目的にするのではなく、みんなで意見をつくることを目的にすべきなんです。」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
自分の意見を唯一の正解とするのではなく、周囲の意見を取り入れながら、より良い「みんなの結論」を追求することが重要です。矛盾を受け入れ、柔軟に思考を変化させることで、個人ではたどり着けないような深みのある結論に到達できます。
常に複数の選択肢を持つ思考法
瞬時に最適な返答をするためには、事前の準備が不可欠です。
「常にどう返すのか、何種類も考えろ。その中からシチュエーション、相手の盛り上がり、自分の立場、求めている落としどころを素早く考え、 10 種類くらいの中から『選ぶ』ことを意識しろ。 選んでいる限りミスは減るし、ミスしたとしてもあとで反省もできる。選ばずに思いついたことを言うな!」
引用:『頭の回転が速い人の話し方』岡田斗司夫著
これは、場当たり的な発言ではなく、あらゆる状況を想定し、複数の返答パターンを事前に用意しておくことの重要性を示しています。これにより、咄嗟の状況でも最適な選択をすることができ、結果的にミスの減少にも繋がります。
コミュニケーションの6つのルール
岡田斗司夫さんが提唱するコミュニケーションのルールは、私たちが円滑な対話を進める上で非常に示唆に富んでいます。
- ルール ① 勝たない
- ルール ② 「勝つ」のではなく「答えをつくる」
- ルール ③ 相手を負けさせない
- ルール ④ 相手を笑わせる
- ルール ⑤ 悩ませない
- ルール ⑥ すっとさせる
これらのルールは、コミュニケーションを「勝ち負け」の場として捉えるのではなく、「共に何かを創り出す」場として捉えることの重要性を教えてくれます。相手を打ち負かすのではなく、相手が安心して話せる環境を作り、共に最適な「答え」を見つけ出すことこそが、真に頭の回転が速い人のコミュニケーション術と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。頭の回転が速い人の話し方とは、単に流暢に話すことではなく、相手への徹底的な共感を基盤とし、共に「答えを作る」プロセスを重視すること。そして、常に複数の選択肢を準備し、柔軟に自分の考えを変化させることができる人のことだと理解できます。これらの視点を取り入れることで、あなたのコミュニケーションもより円滑で豊かなものになるはずです。
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