キリンビール高知支店は、かつて全国最下位を争うほど成績が振るいませんでした。しかし、ある人物の赴任をきっかけに、V字回復を遂げ、全国トップにまで上り詰めます。この奇跡的な逆転劇は、どのようにして生まれたのでしょうか。その秘密は、小手先のテクニックではなく、本質的な「考え方」と「行動スタイル」にありました。
現場で得た勝利へのヒント
著者の田村潤氏は、高知支店に赴任した当初、年間270回以上もの宴会に参加したといいます。これは単なる社交辞令ではなく、高知という土地とそこに住む人々を理解するための重要な活動でした。
「高知の人は『いちばん』が大好き。なにせ、離婚率が全国1位から2位になっても悔しがる県民性です。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
この発見から、高知の人々の「負けず嫌い」で「一本気」な県民性を理解し、後に「高知が、いちばん。」というキャッチコピーを生み出します。
また、以前の支店では、営業成績の悪いチームに「強化のため」として応援が送られていましたが、その活動内容は売り上げに直結しないものでした。
「掃除をしたからといって売り上げには直接、何もつながりません。 『なぜ、掃除をしているのか?』と聞くと、『掃除をしていたら酒屋さんが喜んで、『それじゃ売ってやるか』と一部の小売店で売り上げが伸びた例があったんです』と言うのです。これは、手段と目的の完全なはき違えもいいところです。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
これは、「他の手段も思いつかないから言われた通りにやるしかない」という、負けている組織にありがちな精神風土でした。田村氏は、こうした無意味な活動を排除し、成果に繋がる本質的な活動に集中することの重要性を説きます。
全員で考え、行動する組織へ
キリンビール高知支店が復活した要因は、支店全体に「主体的に考え、行動する」という文化が根付いたことにあります。田村氏は、部下に指示を与える際、以下を徹底したと言います。
「ひとつは、自分が考えて確信をもてることしか部下に言ってはいけない、ということ。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
そして、社員一人ひとりが自ら考え、行動するよう促しました。それは単に「言われたことをやる」のではなく、「なぜやるのか」を深く掘り下げることでした。
「うまくいっていないことも、実は自分たちの選択のせいだとわかり、現状を自分たちの力で変えられることに気付く必要があるのです。それに自分たちで気が付き、どうやって取り組んでいくのか、自分たちの考えとして合意してほしい。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
この意識改革は、結果へのコミットメントを強め、やがてチームワークを生み出しました。
「チームワークとは何か。それは馴れ合いではなく、ひとりひとりが自立することによってお互いを認め合って生まれるものです。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
勝利の鍵は「選択と集中」
当時のキリンビール高知支店の戦略は、「料飲店(飲食店)のマーケットに集中して営業をかける」ことでした。ビール全体の25%に過ぎない市場への集中は、一見非効率に見えます。しかし、高知の人々は外で飲む機会が非常に多いというデータと、料飲店での体験が家庭での消費行動に繋がるという仮説に基づいた、緻密な戦略でした。
「本来なら大きい市場に注力するべきですが、わたしは営業力の効きやすい料飲店にターゲットを絞りました。高知の人の生活を今まで観察し、宴会に年間270回出て、いかに外で飲む機会が多いかということがわかっていました。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
この戦略が功を奏し、キリンビールは高知の市場で確固たる地位を築くことに成功します。
奇跡は「本質」から生まれる
キリンビール高知支店の成功は、「最下位クラスから1位へ、負け続けから勝ちに転じた、その要因はテクニックではありません。 捉え方であり、行動スタイルなのです。」
引用:『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 』田村潤著
この言葉が示すように、勝利の鍵は、小手先のテクニックではなく、顧客を深く理解し、自ら考え、本質的な行動に集中することでした。これは、組織や個人が困難な状況を乗り越え、成長していくための普遍的な法則といえるでしょう。
あなたの仕事や組織は、今、何を「最優先」にしていますか?
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