変化の激しい現代社会において、単なる知識量だけでは太刀打ちできない場面が増えています。そこで注目されているのが、コンサルタントなどのプロフェッショナルに共通する「地頭力(じあたまりょく)」です。
地頭力とは、知識の有無にかかわらず、自分の頭でゼロから論理的に答えを導き出す力のこと。本書『地頭力を鍛える』では、その本質を「結論から」「全体から」「単純に」考える三つの思考力として定義しています。
今回は、情報過多の時代にこそ必要な、本質的な思考プロセスを構築するためのポイントを解説します。
1. 仮説思考:結論から考えることで効率を最大化する
地頭力を鍛えるためには、まず「結論から考える」仮説思考を身につける必要があります。あらかじめ仮説という「仮のゴール」を設定することで、膨大な情報に溺れることなく、目的地まで最短距離でたどり着けるようになるからです。
著者の細谷氏は、仮説思考の重要性について次のように述べています。
仮説思考とは、 いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、 常にそれを最終目的地として強く意識して、 情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターンのことである。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
また、現代人が陥りがちな「検索中毒」への警鐘も鳴らされています。
考えるより先に検索エンジンへの入力の手が動いてしまうという「中毒症状」から脱して考える癖をつけるためには、「自らを羽交い絞めにして」でも検索をやめて一度立ち止まって考える癖をつけなければならない。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
情報の精度にこだわるあまり動けなくなる「完璧主義」を捨て、まずは不完全でも良いので結論を想定し、検証と修正を繰り返す姿勢が重要です。
2. 全体俯瞰力:全体から捉えて本質を見失わない
細かな部分に着手する前に、まずは対象の全体像を把握する「全体から考える」習慣が不可欠です。全体像が見えていない状態で細部(枝葉)の議論を始めてしまうと、自分がどこにいるのか、何が本質的な課題なのかを見失ってしまうからです。
具体的な視点について、本書では「上空からの視点」の重要性が説かれています。
自分自身の目線ではなくて、思いきり「上空から」見た客観的な視点で対象の課題の全体俯瞰をすることによって、自分が知らずに持っている偏ったものの見方を排除するのである。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
また、コミュニケーションにおいてもこの視点は欠かせません。
適切なコミュニケーションにまず必要なのは、コミュニケーションの相手同士が、「同じ視座と視点で」話していることをしつこいほど確認することなのである。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
「自分は今、全体の中のどこを議論しているのか」を常に意識し、客観的な座標軸を持つことが、地頭の良い思考への近道となります。
3. 抽象化思考:単純に考えることで応用力を高める
物事の共通点を見つけ出し、「単純に考える」ことで、一つの経験を他の多くの場面に応用できるようになります。具体的な事象をそのまま受け取るだけでは、その場限りの知識で終わってしまいますが、抽象化することで知識の応用範囲が飛躍的に広がるためです。
抽象化の目的と効用について、著者は以下のように指摘しています。
そもそも抽象化して考えることがなぜ必要なのか。それは「限られた知識の応用範囲を飛躍的に広げる」ためである。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
さらに、この思考はイノベーションの源泉にもなります。
抽象化の概念の基本は「共通点を探す」ことである。これは人間の「考える」という行為の基本といえる。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
目の前の課題を「要するにどういうことか?」と一言で表す訓練を積むことで、一見異なる分野の知見を統合し、新しいアイデアを生む力が養われます。
地頭力は「主体的な好奇心」から育まれる
地頭力は、生まれ持った才能だけで決まるものではありません。それは「結論から」「全体から」「単純に」考えるという思考回路を意識的に使い続けることで、誰でも鍛えることができる能力です。
最後に、地頭力を支える土台として大切なのは、何事も「自分事」として捉える主体性と好奇心です。
あくまでも「自分だったらどうするか?」という主体性を持った一人称で考え、さらによりよくするにはどうするかという建設的批判精神、これがX軸型の知的好奇心に重要だということである。
引用:『地頭力を鍛える』細谷 功著
まずは今日から、検索エンジンに頼る前に30秒だけ「自分なりの仮説」を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。
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