こんにちは!今回は、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんの著書『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』を読んで、特に心に残った部分から得た学びや気づきをシェアしたいと思います。
本書は、古今東西の偉人たちの言葉を引用しながら、現代を生きる私たちが「図太く」「賢く」「面白く」過ごすためのヒントをくれる一冊です。
読書メモから、特に印象的だったテーマをいくつかご紹介します。
1. 古典に学び、学び続けることの重要性
出口さんは、読書の中でも特に古典を読むことを強くすすめています。
「新刊書を読むよりも、まず古典を優先しましょう」といつも話しています。
(中略)古典は、何百年、何千年と、長い時間をかけて、しかも世界中で読み継がれてきたものだから。
つまり、時間という縦軸、世界という横軸が幾重にも交差した巨大なマーケットで評価され続けてきたロングセラーが古典なのです。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
時代や文化を超えて読み継がれてきた古典には、人生の本質を突く知恵が詰まっている、ということですね。
一方で、古典は難解に感じることもあります。
そんな時は、出口さんの恩師である高坂正堯先生の言葉が参考になります。
「古典を読んでわからなければ、自分をアホだと思いなさい。新著を読んでわからなければ、著者をアホだと思いなさい」
高坂先生いわく、古典が難しいのは、それが書かれた時代と現在とでは時代背景や「言葉の定義」が違うから。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
古典が難しいのは自分の知識不足や理解力の問題、新しい本が分からないのは著者の説明不足、と考える。面白い視点です。
そして、学びは一生続けるべきだと、ココ・シャネルの言葉を引いて語ります。
「私のように、教育を受けていない、孤児院で育った無学な女でも、まだ 1日に1つぐらい花の名前を新しく覚えることはできる」
彼女はまさに一生、学び続けた人です。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
また、中国の僧侶、法顕の例も印象的でした。
70代半ばにして14年ものインドへの旅を成し遂げた彼の原動力は、「これを成し遂げたい」という強い目標だったと出口さんは指摘します。
目標を持つことが、困難を乗り越える力になるのですね。(※この段落は法顕の行動に関する著者の解釈部分です)
さらに、ドラッカーの例を通して、知識を行動に移すことの重要性も説かれています。
どれだけドラッカーを読もうと、日本では「すばらしい本だ!」の段階でストップしてしまっているから。
そこから得た知識やアイデアを自分に合った形に修正して、実行に移さないケースがおそらく圧倒的に多いのです。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
日本ではドラッカーを読む人は多いのに、起業活動率はアメリカより低い。
読むだけでなく、実行に移すことが大切だと痛感させられます。
2. 常識を疑い、本質を見抜く視点
物事を鵜呑みにせず、常に自分の頭で考える姿勢も重要です。
マルクスの例が挙げられています。
マルクスは、あらゆる前提を疑い、つねにゼロベースで考えようとしていました。
その姿勢を私も見習いたいと思うのです。
「一般的にはこう考えられているし、私もこれまではそう考えてきた。しかし、本当にそうだろうか」と、物事の根本まで、それこそ固い岩盤にぶつかるまで掘り下げ、腹落ちするまで考え抜く。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
こうした姿勢が、思い込みから自由になる第一歩だと出口さんは言います。
また、プルーストの言葉も、物事の見方を変えることの重要性を示唆しています。
「真の発見の旅とは、新しい風景を求めることでなく、新しいものの見方を得ることだ」
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
3. 逆境や感情との向き合い方
人生には予期せぬ出来事や困難がつきものです。
例えば「左遷」。多くの人はネガティブに捉えがちですが、出口さんは全く違う見方を提示します。
左遷されずにビジネスパーソン人生を全うする人は単にラッキーだったにすぎません。ほとんどの人が左遷される。(中略)だから、左遷されても、別に不幸なことでも、恥ずかしいことでもなんでもないのです。
私は左遷されたとき、「なんだ、私も多数派だったんだな」とわかっただけで、アンラッキーとはとくに思いませんでした。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
さらに、マキャベリが『君主論』を書いたのは左遷されていた時期だったこと、中国の漢詩にも左遷中に書かれた名作が多いことを挙げ、「左遷されて時間があったからこそ、優秀な彼らが十分な時間をとって、後世に残るすばらしい作品が書けた」と指摘します。(※この部分はマキャベリ等に関する著者の解説・見解です) 逆境が創造性の源泉になり得る、というわけです。
運についても考えさせられます。
ホモサピエンスが生き残ったのは、たまたま環境に適応できる体を持っていたから。
「運がいい」というのは、フィンレイソンが指摘しているように、「適切なときに適切な場所にいる」ことなのです。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
また、古代ギリシャのソロンの考え方について、本書では次のように解説されています。
人間の一生は 1日として同じことが起こることはなく、その生涯はすべて偶然である。今、運に恵まれているからといって、それが一生続くとは限らない。
なので、その人が幸せだったかどうかは、その終わり方を見るまでわからない。
だからこそ、人間死ぬまでは、「幸運な人」とは呼んでも、「幸福な人」と呼ぶのは差し控えなければならない、と。
クロイソスは現状では「幸運な人」かもしれませんが、「幸福な人」とは言えないというのです。そして、「幸福な人」とは、ソロンいわく「見事な死に方をした人」なのです。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
目先の状況だけで幸不幸を判断せず、長い目で人生を見ることの大切さが伝わってきます。
過去の後悔についても、本書ではシェイクスピア『オセロー』の一節を引いて、次のように述べられています。
シェイクスピア( 1564 ~ 1616)の四大悲劇の1つ『オセロー』の中にも、こういうセリフがあります。「過ぎてかえらぬ不幸を悔やむのは、さらに不幸を招く近道だ」
(中略)
過去にやってしまったこと、あるいは、やらなかったことを悔やんだところで、気が滅入るだけです。
いくら後悔しても、過去には戻れません。ウジウジ悩んでいるあいだに、貴重な時間がどんどん消えていきます。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
後悔するのは時間の無駄。
それを糧にして今できることに目を向けたいですね。
怒りの感情のコントロールも重要です。イスラム教の預言者ムハンマドの言葉が紹介されています。
「力強いとは、相手を倒すことではない。怒って当然というときに自制できる力を持っていること」
どんな事柄であれ怒ったら負けだということです。
なぜなら、怒りの感情に心が支配されてしまうと、ものの見事に判断力が鈍ってしまうからです。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
怒りを自制できる人こそ、本当に強い人だということですね。
そして、ちきりんさんの言葉を借りて、人生を無駄にしないためのアドバイスも。
「『愚痴を言う』『他人を妬む』『誰かに評価して欲しいと願う』……、人生をムダにしたければ、この3つをどうぞ」
そのような時間があれば、「今晩は、どのおいしいものを食べようか。どのおいしいお酒を飲もうか。どの面白い本を読もうか」とワクワクしながら 1日 1日を過ごしたほうが、はるかに人生は楽しいものになると思います。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
4. より良い人間関係を築くヒント
人間関係の基本について、本書では孟子の言葉を引いて次のように述べています。
人間関係の基本は、「去る者は追わず 来る者は拒まず」だと考えています。 (中略) 自分の許から去っていく人をけっして引き止めないし、自分とかかわりたいと言ってくれる人は受け入れて拒絶しない。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
執着せず、来る縁は拒まない。
「来る者は拒まず、去る者は追わず」という姿勢は、シンプルなようで奥深い考え方ですね。
また、人間関係のもつれの原因について、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』から次の言葉が紹介されています。
「世の中のいざこざの因になるのは、奸策や悪意よりも、むしろ誤解や怠慢だね」
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
悪意よりも、コミュニケーション不足やすれ違いが問題を生むことが多い、というのは納得です。
そして、現代における人間関係では「フェイス・トゥー・フェイス」が重要だと、出口さんは次のように強調します。
人間関係においてフェイス・トゥー・フェイスの関係はとても大切です。 しょっちゅう顔を合わせていれば、「コールセンターは大事だから、がんばってくれ」と口を酸っぱくして言わなくても、相手にはこちらの思いが伝わるものです。 逆に、どれほど立派な言葉であっても、それが電話でだけ、メールでだけであれば、相手にはなかなか伝わらない。 人間とはそういうものだと思います。 人間は相手の「言葉」ではなく、その「行動」を見るのです。 人間は自分のためにどれくらい時間を使い、行動してくれているかで、その相手の本気度を見極めます。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
直接会うこと、相手のために行動することの大切さを改めて感じますね。
人間は相手の「言葉」ではなく、その「行動」を見るのです。
人間は自分のためにどれくらい時間を使い、行動してくれているかで、その相手の本気度を見極めます。
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
メールや電話だけでなく、直接会って話すことの重要性を改めて感じます。
5. 社会や組織を見る視点
本書では、社会や組織に対する鋭い視点も示されています。例えば、日本人の「貯蓄好き」は、戦後の復興政策(1940年体制)によって形作られたものだと指摘します。(※著者の見解部分)
また、江戸時代の鎖国政策については
「徳川政権は、日本史上、最低の政権だと思います。なぜなら政治のもっとも大切な役割は、市民にご飯を食べさせることにあるのですから、身長や体重が小さくなっていく政治に高い評価を与えられるはずがない」
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
と手厳しい評価です。
企業の「社用車」についても、
「ステイタスシンボルを維持するために、人間を何人も遊ばせているのです。これほどのムダはありません」
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
と、その非効率性を指摘しています。
さらに、ケネディ大統領の例を挙げ、
「『偉人』と言われる人たちも、 100%立派な人だったかどうかは怪しいもの」
出典:『人生の教養が身につく名言集―――「図太く」「賢く」「面白く」』出口治明著
であり、「人間はその程度の存在」と、人間味あふれる側面にも目を向けています。
おわりに
出口治明さんの『人生の教養が身につく名言集』は、古典から現代の言葉まで、様々な名言を通して、私たちがより良く生きるための多様な視点を与えてくれます。
- 古典に学び、学び続ける
- 常識を疑い、本質を考える
- 逆境や感情に賢く向き合う
- シンプルで誠実な人間関係を築く
- 社会や組織を客観的に見る
これらのヒントを胸に、「図太く」「賢く」「面白く」、日々の生活や仕事に取り組んでいきたいですね。
興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。きっと多くの発見があるはずです。
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