私たちは日々の生活の中で、さまざまな「怒り」に直面します。しかし、その怒りの感情にどう向き合い、どうコントロールしていくかを知っていますか?今回は、安藤俊介氏の著書『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』から、怒りのメカニズムと、それを上手に扱うためのヒントをご紹介します。
アンガーマネジメントとは?なぜ今、必要なのか
「怒り」はネガティブな感情と捉えられがちですが、実は私たちにとって非常に重要な役割を担っています。
「怒り」は身を守るための感情
怒りの感情は、私たちが自分の身を守るために必要なものです。
「怒り=直すべきよくない感情」と思われがちですが、「怒り」にももちろんプラスの面はあります。 動物にも怒りの感情があります。たとえば、目の前に敵がいるとき、自分の命を守ろうとします。 そのとき、怒りの感情が生まれ、脳内でアドレナリンが放出されます。すると、身体が臨戦態勢になって、相手を襲うか逃げるかができるようになるのです。 実は、アドレナリンを放出して身体を臨戦態勢にさせることが、怒りという感情の本来の役割だったのです。 だから、怒りという感情がないと、わが身を守れなくなってしまいます。それは、人間である私たちも同じことです。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
このように、怒りは自己防衛のための重要な感情です。しかし、それが暴走すると、心身に悪影響を及ぼすこともあります。
オーストラリア・シドニーの急性心血管診療所が、心臓発作が確認された300人以上の患者に対して行った調査によると、心臓発作が起こる2時間以内に極端な怒りを覚えた患者が心臓発作を起こすリスクは、通常よりも8・5倍も高かったそうです。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
怒りをコントロールすることの重要性
欧米では、感情を上手にコントロールすることが大人の証とされています。
アメリカでは、企業のエグゼクティブも積極的にアンガーマネジメントを取り入れています。というのは、欧米では人前で上手に感情をコントロールできない人は「大人として未熟」という評価になるからです。そう評価されてしまうと、出世して高い地位につくこともできなくなるでしょう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
アンガーマネジメントを身につけることで、怒りに振り回されず、健全な人間関係を築くことができるようになります。
アンガーマネジメントができるようになると、 人を傷つけず、自分を傷つけず、モノに当たることなく、「自分は怒っている」ということを上手に表現できるようになります。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
怒りのメカニズムを知る
怒りがどのようにして生まれるのかを知ることは、アンガーマネジメントの第一歩です。
「第一次感情」と「怒り」の関係
怒りは、実は他のネガティブな感情が蓄積された結果として現れることがあります。
あなたの心の中にコップがあると想像してみてください。私たちは毎日、そのコップの中に、「つらい」「苦しい」「寂しい」「悲しい」「不安」といったネガティブな感情(これを「第一次感情」といいます)を注いでいます。 このコップの中にネガティブな第一次感情がいっぱい入っていると、コップからあふれて「怒り」という感情が生まれます。逆にいえば、コップの中にあまり第一次感情が入っていなければ、そうそう怒りは生まれません。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
この「第一次感情」に気づき、対処することが、怒りをコントロールする上で重要です。
白黒思考からの脱却
私たちは、物事を「良いか悪いか」「正しいか間違っているか」で判断しがちです。しかし、この「白黒思考」が怒りの原因となることもあります。
何事にもたくさんの側面があり、白黒つけられることの方が少ないものです。なんでも白黒でとらえようとすると、受け入れられるものが少なくなってしまい、寛容さがなくなってしまいます。 なるべく物事を2つに分けて考えずに、別の視点からも見てみることです。「 こういう見方もできるのではないか」「第三者だったらどういう見方をするのだろう」と考える努力をしましょう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
多角的な視点を持つことで、不要な怒りを避けることができます。
主観と客観の区別
怒りを感じる場面では、主観的な感情が事実を歪めてしまうことがあります。
「なんで私のことを悪く言っているBさんと、親友のAさんが一緒にいるんだ!? Aさんも私のことを悪く言っているにちがいない!」と思ったとしたら、それは「主観」です。「客観」としては、「単純に、親友AさんとBさんが何かの話をしている」ということだけです。そして実際、「事実」は、AさんとBさんは偶然会って仕事の話をしていただけでした。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
客観的に状況を捉える訓練をすることで、誤解から生まれる怒りを減らせます。
怒りをコントロールするための具体的なテクニック
怒りの感情が湧き上がってきたときに、実践できる具体的なテクニックをご紹介します。
怒りのピークは6秒!「6秒ルール」
怒りが爆発しそうな時、まず試してほしいのが「6秒ルール」です。
ムカッときたら、6秒待ちましょう。 諸説ありますが、怒りの感情のピークは6秒程度といわれています。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
この6秒をやり過ごすことで、衝動的な行動を抑え、冷静に対応する時間を作ることができます。
その場で実践できるクールダウンテクニック
6秒を乗り切るためにも、瞬時にできるクールダウンのテクニックを身につけておきましょう。
ムカッときたら、すぐにその場で自分を落ち着かせるフレーズを心の中で唱えるテクニックです。 唱える言葉は何でもOKですが、あらかじめ用意しておきます。たとえば、「大丈夫、大丈夫」「どうでもいい、どうでもいい」などです。 言葉でなくても、手をグーパーさせる、腕を回すといった動作でもかまいません。 ポイントは、それをすることによって、その場で気持ちを落ち着かせることです。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
自分に合ったフレーズや動作を見つけて、実践してみましょう。
「マインドフルネス」で「今、ここ」に集中する
マインドフルネスは、ストレス軽減だけでなく、怒りのコントロールにも効果があります。
マインドフルネスは、ストレス解消法と解釈されることもありますが、もともとは「今、ここ」に集中することで、不安からくる心身の緊張をほぐすもの です。そのため、怒りのコントロールにも効果があります。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
瞑想は、歩きながらでもできます。足の裏に意識を集中させて、どのようにして足の裏が地面に着地して、どのようにして離れるのか、右足、左足とフォーカスしていくのです。 人間が最も雑念にとらわれるのは歩いているときだといわれますが、さすがに1日中「歩き瞑想」をするのは難しいので、たとえば通勤途中の信号2つ分とか、散歩の 10 分間など、瞑想する時間を決めて行うとよいでしょう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
「今、ここ」に意識を集中することで、過去の出来事や未来への不安からくる怒りを手放すことができます。
「アンガーログ」で怒りを客観視する
自分の怒りのパターンを知るために、「アンガーログ」をつけることも有効です。
アンガーログをつけるときのポイントは、次の3つです。
① その場で書く
② イラッとしたら、カチンときたら、その都度書く
③ 書いているときには、いっさいの分析をしない
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
記録することで、どんな時に、どんなことで怒りを感じやすいのか、客観的に把握できるようになります。
怒りへの対処法を身につける
怒りを感じた際、どのように対応するかで、その後の状況は大きく変わります。
できることとできないことを区別する
怒りの原因となる問題に対して、何ができるのか、何はできないのかを明確にすることが重要です。
裁判官や警察官など特殊な職業の人でないかぎり、私たちは他の人を裁くことも、罰することもできません。法にかわってお仕置きすることはできないのです。誰かに対して評価をすることは自由ですが、そのことと罰することは違います。イラッとすることへの対処については、あなたができること、できないこと、重要なこと、重要でないことの視点で考えてみましょう。できることはやればOKですが、 できないことはできないと考えて線を引く努力をしましょう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
できないことに執着せず、できることに焦点を当てることで、無駄な怒りを手放せます。
物事の重要度を見極める
些細なことで怒りを感じてしまう場合、その出来事の重要度を考えてみましょう。
タクシー待ちの行列に横入りされたという場合。すごく寒いときとか、足が痛いときには多少変動があるかもしれませんが、これもたいして重要度は高くないと判断することができます。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
本当に怒るべきことなのか、冷静に判断する癖をつけることで、感情の無駄遣いを減らせます。
別の解釈を試みる
怒りを感じた出来事に対して、別の解釈をしてみることも有効です。
もしかしたら、担当者は忙しかったのかもしれない。今回は、最後まで作業する前に見つかってよかった。事前チェックの仕組みをつくるいいきっかけになったと考えよう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
多角的に物事を捉えることで、怒り以外の感情が生まれることもあります。
怒りにくい自分を作るための習慣
日々の習慣を少し変えることで、怒りにくい自分を目指せます。
意図的に変化をつくる
ルーティンから少し外れてみることで、柔軟な思考が身につきます。
通勤経路、ファッション、口調、行きつけの店……何でもかまいません。 自分から意図的に変化をつくれるようになると、柔軟な対応力が備わり、突然のストレスにも対応できるようになります。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
新しいことへの挑戦は、心のゆとりを生み出すきっかけにもなります。
「24時間アクトカーム」で穏やかさを演じる
一時的に「穏やかな自分」を演じてみることも、変化のきっかけになります。
「24 時間アクトカーム」では、 自分が変わることで周囲がどのように変わるのかを実感できます。 穏やかさを演じながら、しっかり周囲を観察してみます。 そうすると、他人を変えるより自分が変わった方が早いし、簡単だということをあらためて確認できるでしょう。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
この実践を通して、穏やかさがいかに状況を好転させるかを実感できるでしょう。
理想の人物を演じる
憧れる人物を思い描き、その人ならどうするかを考えて行動してみるのも良い方法です。
「あの人なら、こんなときどうするか?」 これを、 つねに自分に問いかけながら演じ続けていくと、その理想の人物に自分が近づいていきます。
引用:『自分の「怒り」タイプを知ってコントロールする はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』安藤俊介著
理想の自分に近づくことで、感情のコントロールもよりスムーズになるはずです。
怒りは、私たちの生活に深く根ざした感情です。しかし、その怒りに振り回されるのではなく、上手にコントロールできるようになれば、より穏やかで豊かな人生を送ることができるでしょう。今回ご紹介したアンガーマネジメントのヒントを参考に、ぜひ今日から実践してみてください。
怒りの感情との向き合い方について、他に知りたいことはありますか?
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