お店に入ったとき、「何か買わなきゃ」と構えることなく、気軽に商品を見たいと思うお客様がほとんどでしょう。『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』の著者、内藤加奈子さんも、お客様の8割以上は「なんとなくお散歩がてらに商品を見ているお客様」だと述べています。私たち自身も、いつも何か買おうとしているわけではありませんよね。
では、「売れる販売員」と「ダメ販売員」は何が違うのでしょうか?
ダメ販売員がやってしまうNG行動
ダメ販売員は、お客様を直視して狙い定めたように近寄って声をかけ、お客様に恐怖を与えて距離を取られてしまいがちです。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
私も経験がありますが、お店に入った途端に「何かお探しですか?」とぐいぐい来られると、一気に警戒してしまいますよね。
売れる販売員のさりげない気配り
一方、売れる販売員は、商品を整理する手元を見るような格好で、実はお客様を観察しています。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
さらに、お客様との距離感にも細心の注意を払っています。
売れている販売員さんを見ていると、まったく急いだりしていませんし、「あれ?ちょっと話しかけるのには遠くないかな?」という距離感を保ちながらお客様に話しかけています。場合によっては、お客様のほうから一歩近づいてこられるくらいの距離をとっています。お声かけをして、お客様の顔がこちらに向いて、何か情報がほしい様子であったり、こちらが声をかけたことを警戒する様子がみられない場合には、そこで初めて少しだけ距離を縮めてみるのです。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
お客様が安心して話せる空気を作るのが上手なんですね。
「売り込まない」接客が信頼を生む
売れる販売員は、お客様に「売り込もうとしない」という安心感を与えます。
販売員さんと話しているけれど、この人は売り込もうとしないんだな、ということが、話せば話すほどわかって安心できます。また、お客としてというよりも個人として大切に扱われていることを、快適に感じてくださるものです。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
「わたしのお店の商品は、そんなにお客様と長く話すような商品ではないんだけど……」という場合でも、今日のこれからの予定や天気の話など、ちょっとした会話を挟むだけで、お客様に良い印象を与えることができると内藤さんは言います。
ロールプレイングの落とし穴
「ダメ販売員はロープレに励む」という衝撃的なタイトルもありました。しかし、これは「できなくさせられてしまっている販売員さんは、ロープレをさせれらてしまっている」が正しいとのこと。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
売れているお店では、先輩がお客様役となり、後輩が先輩の接客から学ぶことを目的としたロープレは行いますが、先輩がダメ出しをするようなロープレはほとんどないそうです。実践の中で、個人が研究し、独自の個性ある接客をすることを推奨しているのですね。型にはめるのではなく、個性を伸ばすことが重要だと感じます。
「引っかかり」で記憶に残る接客を
売れる販売員は、入店時の挨拶、声かけ、お見送りといった定型的な言葉にも、お客様との関係づくりのきっかけとなるオリジナルの「引っかかり」を加えています。
たとえば、入店時なら「こんにちは、お出かけ日和ですね。まだ出せていない商品もありますので、こんなのないかな?と思われたりしたらおっしゃってくださいね」と言って、一度離れて「放牧」してみたり。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
クスっと笑えるような一言や、今日の買い物が良い買い物であったことを肯定する言葉など、お客様の心に残る工夫をしているのです。お客様に「またこのお店に来たい」「この人に会いたい」と思わせるような、温かいコミュニケーションが重要だと改めて感じました。
お客様の立場になって考える
初めて入るお店で、私たちは無意識のうちに店内を見渡します。多くの場合は左回りに店内を見回していくそうですが、これは心臓がある左側を守るようにして、右手側を空けておくほうが安心できる状態だからだと言われています。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
つまり、お客様は最初、アウェー感を感じているのです。このお客様の心理を理解し、安心できる空間を提供することが大切ですね。
顧客様を増やす「善循環」
「売り場への入店客数が少ないから売れない、というのは、もはや言い訳にはなりません。売り場全体で、買いやすさを提供することと、そのための「善循環」をあなたから起こすことで、あなたの顧客様はもちろん、売り場の顧客様までをもつくることができるのです。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
たとえそのお店で扱っていない商品でも、他店を紹介するなど、お客様への情報提供ができるだけでも「この人(このお店)はちょっと違うな」と感じてもらえるのです。
日常からの学びと人間観察
「わたしはあるスーパーの、あるレジのスタッフさんのファンです。自分では、その人の顧客だと思っています。
そこへ買い物に行くと、必ずその人のレジに並びます。なぜなら、あいさつが笑顔で、ていねいで、赤ちゃん連れのわたしを覚えていて、かならず買ったものを袋に入れてくれて、帰り際には「お気をつけてお帰りください」とまた笑顔で送り出してくれるからです。
感じのいいあいさつ。
丁寧な応対。
お客の様子に合わせたサービス。
一言添えられた、送り出し。
そうです、どれひとつとっても、特に奇抜で目立つものはないのです。でも、一言ひとことや、一つひとつの動きに、彼女なりの「お客様を大切に扱いたい」という心意気みたいなものが、にじみ出ているのです。」
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
この「お客様を大切に思う気持ち」こそが、売れる販売員に共通する最大の秘訣なのかもしれません。
そして、売れる販売員は、通勤時間にも人間観察をしています。お客様の家族構成や趣味、どんな商品に興味がありそうか、来店したらどんな接客をしようか、どんな話をしようか…と、自分のお店に来店するお客様を想定してトレーニングしているのです。
引用:『「売れる販売員」と「ダメ販売員」の習慣 (アスカビジネス)』内藤 加奈子著
通勤時間などスマホを見てひとりに世界に入りがちですが、人間観察をして今日のお客様対応に活かせないかアンテナを張ってみたいと思います。
まとめ
内藤さんの著書から、「売れる販売員」が実践している習慣をいくつかご紹介しました。共通しているのは、お客様への深い洞察と、心からの「おもてなし」の精神です。
- お客様の心理を理解し、安心感を与える距離感を保つ
- 「売り込まない」姿勢で信頼を築く
- 型にはまらず、個性を活かした接客を心がける
- 挨拶や声かけに「引っかかり」を加え、記憶に残る工夫をする
- 日常的に人間観察を行い、お客様を想定した接客をシミュレーションする
これらの習慣は、販売員だけでなく、どんな仕事においてもお客様や相手との良好な関係を築く上で非常に役立つのではないでしょうか。あなたも、今日からこれらの習慣を意識して、周りの人とのコミュニケーションをより豊かなものにしてみませんか?
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