健康と病気は、私たちの感情と深く結びついています。精神科医である樺沢紫苑先生の著書『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』から、心が体に与える影響と、病気を治すための感情コントロール術について見ていきましょう。
感情が病気に与える影響
薬の効果を左右する心の状態
私たちは、薬の効果を信じることで、その効果を最大限に引き出すことができます。
薬は「効果がある」と思って飲んだほうが効きやすい。「飲んでも効かない」と思って薬を飲むと、効果は出ないということです。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
これは、プラセボ効果にも通じる考え方です。心の状態が、治療の成果に大きく影響するということです。
完璧主義が病気を長引かせる
病気の治療において、「完璧に治す」という目標は、かえってストレスになることがあります。
100点満点の状態を目標にしてしまうと、 90 点の状態まで治っていたとしても、100点満点の状態と比べては、「全然、治らない」「いつになったら治るんだ!」と不満を抱きます。その「不満」が「不安」になり、「ストレス」になる。これでは、いつまで経っても病気は治りません。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
「少しずつ良くなっている」という変化に目を向けることが、治療を前向きに進めるカギとなります。
睡眠不足は病気のリスクを高める
睡眠は、心身の健康に不可欠です。睡眠不足は、さまざまな病気のリスクを高めます。
不眠になると、がんのリスクは6倍、脳卒中のリスクが4倍、心筋梗塞のリスクが3倍、高血圧のリスクが2倍、糖尿病のリスクが3倍に跳ね上がります。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
睡眠不足は、より不安や恐怖を引き起こしやすいということです。そして、扁桃体が興奮しやすくなっているのは、「情動反射」に支配されやすい状態であることが、実験的に示されました。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
睡眠不足は、不安や恐怖といったネガティブな感情を増幅させ、心のバランスを崩しやすくします。
ネガティブな感情が引き起こす悪影響
不安や恐怖といった心理的なストレスは、私たちの自然治癒力を低下させます。
病気を治すには、自然治癒力を高めることが不可欠です。病気によって引き起こされる不安や恐怖などの心理的なストレスを取り除くことが、本書でお伝えしたい病気を治すための基本的なあり方です。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
また、悪口を言う習慣も、心身に悪影響を及ぼします。
悪口の多い人は、「人の悪いところ探し」が得意です。悪口を言えば言うほど、「ネガティブ探しの達人」になるのです。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
● 悪口を言わない! 悪口を言うほど健康を害する。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
「人の悪いところ探し」は、自分自身のネガティブな感情を強化し、ストレスを増大させます。
病気を治すための感情コントロール術
信頼できる人とのつながり
治療を進める上で、医師との信頼関係は非常に重要です。
ある程度の信頼関係を構築するには、最低「3回」会うことが必要です。ビジネスでも、恋愛でも、人間関係は、最低でも3回は会わないと、深まりません。3回の通院で、ようやく医者に「本音」を話せるようになり、5回、 10 回と継続して通院することで、信頼関係が深まり、本格的な治療へとつながっていきます。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
また、治療に関する疑問は、積極的に医療従事者に質問しましょう。
いつ治るのか? 薬の効果は? 副作用はないのか? などの疑問は、できれば主治医本人に説明してほしいところですが、もし無理であれば、看護師に聞いてみましょう。看護師は医者のそばにいて、診療を毎日見ています。患者さんの「よくある質問」には、ほとんど答えてくれることでしょう。また、薬に関する質問なら、薬剤師が答えてくれます。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
人とのつながりは、病気からの回復を促します。
米ブリガムヤング大学の研究によると、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが 50 パーセント低下する」
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
感情を適切に表現する
感情を我慢することは、心身の健康に悪影響を及ぼします。
ある心理実験で、注射するときに「痛い、痛い」と言って注射されるグループと、何も言わずにジッと我慢するグループに分けたところ、痛みを表現したグループは、我慢したグループと比べて、感じる痛みが5分の1にも緩和されました。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
感情表現と乳がんの関係を調べた研究では、感情表現を抑制すると乳がんの発生率が高まり、進行が早まる結果が得られました。感情を表現しない女性は、感情を表現する女性に比べて、乳がんのリスクが高まるのです。この傾向は、マイナスの感情ほど顕著で、すでに乳がんにかかっている場合は、マイナス感情を表現しないと病状が早く進行します。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
感情を適切に表現することは、ストレスを軽減し、病気の改善につながります。極度のショックや落ち込みの際には、一人で休む時間も必要です。
人は極度のショックを受けたり、激しく落ち込んだ状態に陥ると、人と会ったり、話したりする余裕がなくなってしまいます。心を閉ざし、心に壁を築いて、その安全な場所で1人になり、ひっそりと心を休めたい心境になるのです。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
怒りをコントロールする
怒りを感じたときは、意識的に「ゆっくり話す」ことを心がけましょう。
人間は興奮すると早口になり、交感神経が優位になり、さらに興奮が進むのです。ですから、カッとしたときは、「ゆっくり話す」ことを意識してください。普段の自分が話すスピードより、「3割減」のスピードで話してください。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
怒りや不安は、脳の扁桃体の興奮によるものであることを理解するだけでも、冷静に対応できるようになります。
「不安は扁桃体の興奮」ということを知っているだけで、過剰に他人を責めたり、怒りをぶつけたりしてくる人に対して、冷静に対応することができます。 「ああ、この人、残念な人だな」と思えば、軽くスルーできるでしょう。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
涙活(るいかつ)でストレスを解消する
涙を流すことは、ストレス軽減に効果があります。
セロトニン研究の世界的な権威である有田秀穂氏(東邦大学名誉教授)は、涙を流すことはストレス発散に役立つ、と「涙活」を推奨されています。有田氏によると、涙を流すことには3つの効果があるといいます。 1 ストレスの軽減 2 自律神経のバランスを整える 3 免疫システムの活性化
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
感動する映画や音楽を鑑賞し、積極的に涙を流す機会を作るのも良いでしょう。
筆記エクササイズで心を整理する
自分の感情や思考を書き出す筆記エクササイズは、心の整理に役立ちます。
臨床医のナンシー・モーガン医師が、ワシントンのがん医療センターで重度のがん患者に対して筆記エクササイズを行ったところ、非常に大きな成果が得られました。 20 分という決められた時間で、「がんが自分たちの何を変えるのか、そしてその変わったことに対して自分はどう思うのか」を記述する、という簡単なものです。筆記エクササイズ参加者の 49 パーセントが「病気に対する考え方が変わった」と答え、 38 パーセントが「今の状態についての気持ちが変わった」と答えました。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
終わりが見える苦しみは耐えられる
終わりが見えない苦しみは、私たちを消耗させます。
人間は「期間限定の苦しみ」にはかなり耐えられますが、いつ終わるかわからないエンドレスな苦しみには弱いのです。
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
治療のゴールを明確にし、期間を区切ることで、治療へのモチベーションを維持しやすくなります。
夫婦仲と健康
夫婦関係も、健康に影響を与えます。
ユタ大学が行った150組の夫婦の夫婦仲と動脈硬化の関連性についての研究で、 仲の悪い夫婦ほど動脈硬化の傾向が顕著に見られ、仲のよい夫婦ほど動脈硬化になりにくい
引用:『精神科医が教える病気を治す 感情コントロール術』樺沢紫苑著
良好な人間関係は、心身の健康を保つ上で重要です。
私たちの感情は、思っている以上に健康に影響を与えています。日々の生活の中で感情をコントロールし、心の状態を良好に保つことが、病気の予防や改善につながるでしょう。
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