相手を「気持ちよく動かす」ための共感とロジック

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ビジネスにおいて、私たちは日々「誰かに動いてもらう」ことを必要としています。しかし、どれほど論理的に正しい提案であっても、相手の共感が得られなければ、人はなかなか動いてくれません。本書『気持ちよく人を動かす』で高橋浩一氏は、相手を気持ちよく動かすためには、ロジックと共感の両輪が重要であると説いています。

 

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ロジックだけでは人は動かない

 

ビジネスシーンでは、しばしば完璧なロジックで相手を説得しようとします。しかし、高橋氏は**「ロジックをどう使うか」「相手との共感をどう築くか」**が重要であると指摘します。

 

理屈のうえでは正しい結論でも、相手の共感が得られなければ、人は動いてくれません。共感を伴った合意があってこそ、人は気持ちよく動いてくれるのです。引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

これは、私たちが提案する内容がいかに優れていても、相手が「自分ごと」として捉え、感情的に納得しなければ行動に移さないことを意味します。


 

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共感を呼ぶ「対話」の重要性

 

では、どのようにして相手の共感を築けばよいのでしょうか。高橋氏は、一方的な情報提供ではなく、対話を通じて共創するスタイルを推奨しています。

 

提案資料から表紙すらも外し、大事なエッセンスだけをまとめた1〜3枚のスライドをもとに、お客様から意見をいただきつつ、両者で一緒に議論するスタイルに切り替えたのです。いままで用意していた分厚い資料は『参考資料』としておき、いきなりは説明せず、必要に応じて見せるようにしました。引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

これは、相手に考える余地を与え、対話の中で共にアイデアを育てていくアプローチです。分厚い資料をいきなり提示するのではなく、核心を簡潔に示し、そこから議論を深めることで、相手は主体的に関わり、共感が生まれやすくなります。

 

『モチベーション3・0』などで有名なビジネス作家のダニエル・ピンク氏によると、人は仕事時間の約4割以上を「誰かに動いてもらうための活動」に充てているそうです。引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 


 

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相手が動かない「壁」を乗り越える

 

なぜ、相手は動かないのでしょうか。そこにはいくつかの「壁」が存在します。

 

現状維持バイアスとコストの壁

 

 

一見してよさそうな解決策でも、実行するにはそれなりの(金銭的、精神的、時間的な)コストがかかります。現状維持バイアスを突破できるだけの費用対効果を訴求するのは、そう簡単なことではありません。引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

人は変化を嫌い、現状維持を好む傾向があります。たとえ良い提案であっても、それにかかるコスト(金銭的、精神的、時間的)を考えると、二の足を踏んでしまうのです。この壁を乗り越えるには、提案がもたらす費用対効果を明確に、かつ魅力的に示す必要があります。

 

事前準備で「壁」を予測する

 

高橋氏は、相手を動かすための準備として、以下の3点を挙げています。

 

ゴール(どんな台詞がもらえたら、この場は成功なのか) ◯ 壁(どんな疑問や反論が出てくることが予想されるか) ◯ 対応策(壁をどうやって乗り越えるか)引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

これは、最悪の事態を想定し、それに対する備えをしておくという考え方です。

 

イギリスの首相を務めた歴史上の人物、ベンジャミン・ディズレーリの言葉に「最高を望み、最悪に備える」というものがあります。引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

 

相手に寄り添うアプローチ

 

相手の「壁」を乗り越え、気持ちよく動いてもらうためには、以下の点が重要になります。

 

◯相手の受け入れやすさを考えつつ、足並みを揃えながら進めている ◯自分のアイデアをいきなり一方的に押しつけず、初期説明を最小限にとどめている ◯相手に会話のボールを渡し、双方向のやり取りをする意思を示している引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

これは、相手のペースに合わせ、一方的に話すのではなく、対話を通じて理解を深める姿勢を示しています。


 

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4つの「壁」とその乗り越え方

 

高橋氏は、相手が動かない根本的な原因を4つの「壁」として提示し、それぞれの乗り越え方を解説しています。

 

◯相手をいきなり説得しようとせずに、深く理解することに集中する(「関係性の壁」を乗り越える) ◯相手の話をビジュアルでまとめたものを見せることで、場を前進させる(「情報整理の壁」を乗り越える) ◯相手の中にある思い込みの正体を突き止め、「なるほど、そう考えればいいのか」という発見を促す(「思い込みの壁」を乗り越える) ◯今回の意思決定に対して、「どういう判断基準で考えるべきか」を提示している(「損得勘定の壁」を乗り越える)引用:『気持ちよく人を動かす』高橋浩一著

 

これらの壁を一つずつ丁寧に乗り越えていくことで、相手は「気持ちよく」動いてくれるようになるでしょう。


「気持ちよく人を動かす」ことは、単なる説得ではなく、相手との間に信頼と共感を築き、共に未来を創造していくプロセスです。高橋浩一氏の提唱するアプローチは、ビジネスにおけるコミュニケーションの質を高め、より良い成果を生み出すための示唆に富んでいます。

あなたの周りの人を気持ちよく動かすために、今日からできることは何でしょうか?

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