「中古車業界は変わらない」そう言われ続けてきました。しかし、本当にそうでしょうか? 中古車販売の現場で多くの経験を積んだ中野優作氏の著書『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』から、お客様に本当に寄り添う営業のあり方、そして業界を変えるヒントを探ります。単に車を売るのではなく、「車のある生活」を売るという視点から、顧客との深いコミュニケーション、そして営業の真の役割について深掘りしていきます。
なぜ素人でも車を売れたのか?「車のある生活」を売る視点
中野氏は、「クルマを売ろうとせずに、クルマのある生活を売ろうとしていた」からこそ、素人でも車を売ることができたと語ります。これは、単に車のスペックを説明するのではなく、お客様が車に何を求めているのかを一緒に考え、お客様の立場になって探すという姿勢の重要性を示しています。
では何故素人の僕が売れたのか? それは、「クルマを売ろうとせずに、クルマのある生活を売ろうとしていた」からだ。商品説明をせずに、お客様がクルマに求める事を一緒に考えて、相手の立場になって一緒に探していた。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
ここには、単なるモノの売買を超えた、人と人との深いコミュニケーションが存在します。お客様の経験、感情、これからの希望や不安といった多様な要素が絡み合い、最終的に「あなたがいるから安心して任せられる」という信頼関係へと繋がっていくのです。
ここには血の通った人と人とのコミュケーションがあり、自分が経験してきた事や見てきた事、その時の感情やこれからの希望や不安、色々な要素が複雑に絡み合ってくる。つまり、「あなたがいるから安心して任せると言われる事こそ」が営業の役割だ。だから、どんなにこのお店にテクノロジーが進化しても営業は代替不能と考えられている一番の要因だ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
ユーザーが本当に知りたいこと
ユーザーは車の詳細なスペックや専門知識よりも、実際にその車に乗ってみた感想やおすすめポイントに興味があります。SNSが普及した現代では、専門店のプロの意見を忖度なく比較し、信用できる情報を得る傾向が強まっています。
更に言えば、ユーザーはクルマ毎のスペックやうんちくにはあまり興味がなく、知りたいのはそのクルマに乗ってみた感想やおすすめポイントだ。SNSでは、その専門店で働くプロの意見を忖度なく比較して発信しているから信用が得られている。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
このことから、営業担当者は個人として専門性の高いお役立ち情報をSNSで発信していくことが重要だと提言されています。
個人として普段から専門性の高いお役立ち情報の発信をSNSでやっていこう。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
営業の真の役割と具体的な提案方法
お客様目線で考えた場合の営業の役割は、「お客様の人生を想像し、充実させる」ことです。これは業態が異なっても変わらない普遍的な役割です。
お客様目線で考えた場合の営業の役割は「お客様の人生を想像し、充実させる」事だ。これは業態が違っても不変の役割だ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
具体的な提案方法としては、「選択肢を増やし、課題解決する事」が挙げられます。お客様の課題を解決するためには、商談の主役をお客様に置き換え、お客様の選択肢を増やすことを重視すべきです。
では具体的に営業としてお客様への提案方法はどうすればいいだろう? それは、「選択肢を増やし、課題解決する事」だ。 お客様の課題を解決するという点において前提条件は様々だが、営業は商談の主役を100%お客様に置き換えて、選択肢を増やす事を重視しよう。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
失敗しがちな営業の落とし穴
現場でよく見られる間違いとして、「質問攻撃でお客様のテンションを下げ、マイナスからスタートしてしまう」点が挙げられます。
質問攻撃でお客様のテンションを下げて、マイナスからスタート。これが現場で起きている1つ目の間違いだ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
お客様の条件の範囲内だけで探そうとしたり、目先の利益だけを考えたりする提案では、真の価値提供はできません。
今回の提案は、「お客様の人生を想像し、充実させる」という目的で、相手の立場になって真剣に考えたからこそできた商談だ。お客様の条件の範囲内だけで探そうとしたり、目先の利益だけを考えたりしていてはできない提案だ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
契約までの6ステップ:お客様に「安心感」を与えることから始める
お客様との商談は、初対面から契約までを6段階に分けて考えることが推奨されています。その第一歩は、お客様に**「安心感を与える」**ことです。
初めましてから契約まで、お客様の半歩前を、相手のスピードに合わせながら、手を引いてゴールまで進んでいく事をイメージして欲しい。
商談は、6段階に分けて考える。 ① 初対面 ② アイスブレイク ③ 情報収集 ④ 差別化 ⑤ 車種選定 ⑥ クロージング
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
1. 初対面:安心感を演出する
お客様が緊張していると感じたら、まずは最高の挨拶だけを伝え、自由に車を見てもらうのが効果的です。
駐車場に誘導した瞬間、お客様が緊張して構えた感じがする場合は、即座に引くべきだ。ここはまず最高の挨拶だけすればいい。ご来店の感謝を伝えて、一旦自由に見てもらうのがいい。
この段階では「俺は敵じゃないし、売る気は全くないからごゆっくり」と無害な演出を完璧にする事に努めて、ほっとさせる。安心させるのが狙いだ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
初対面で与えたい印象は、**「どうしようもないくらい明るく、感じがいい」「とても自信がありそうで、安心感がある」「プロフェッショナルだろうという雰囲気が溢れ出ている」**の3点です。
第一印象で成し遂げたい事、それhあ「安心感を与える」事だ。それだけでいい。本質的には、安心感を与える事で、次の商談を有利に進められるからだ。それ以外の余計な事は考えなくていい。引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著 初対面で与えたい3つの印象 どうしようもないくらい明るく、感じがいい とても自信がありそうで、安心感がある プロフェッショナルだろうという雰囲気が溢れ出ている引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
視覚情報、聴覚情報、言語情報に意識を向けて、お客様に安心感を与える努力をすることが重要です。
視覚情報 ・身だしなみを整える ・笑顔を常に意識する ・相手の目をまっすぐ見て微笑みかける ・背筋を伸ばして美しい姿勢を保ち、所作を丁寧に 聴覚情報 ・話すテンポを相手に合わせる(早口の相手には早口で、ゆっくりの人にはゆっくりと。物静かな相手には言葉の量を調整する) ・声のトーンはやや高めで、相手のテンションの少し上ぐらい ・相手の名前を適度に呼び、共感する 言語情報 ・言葉使いを丁寧に ・ポジティブな言葉を使う(「楽しみにしていました」「嬉しい」「ありがとうございます」「最高ですね」) ・共感する、頷く(「とても分かります」「仰る通りです」「僕もそう思います」「よくご存じですね」)
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
2. アイスブレイク:信用の壁を破壊する
初対面から数分で「信用の壁」を破壊するためには、以下の3つのポイントが重要です。
「初めまして」と顔を合わせて数分経過したぐらいだろう。ここから5分~ 10 分で「信用の壁」を破壊したい。 アイスブレイクの3つのポイントを挙げてみる。 自信を持って対等に接する 相手のリズムで、話したい事を話してもらう 共感しまくる
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
お客様に好意を持ってもらうためには、ミラーリング効果を活用し、相手に合わせることが有効です。テンションや会話のスピード、さらには会話の「間」まで合わせることで、お客様は無意識に安心感を抱きやすくなります。
ミラーリング効果とは自分と同じ行動を取る相手に好意を持つ事だから、究極的に言えば相手に合わせる事だ。 まずはテンション。物静かなお客様が相手ならこちらも相手に合わせる。テンションが高めの元気いっぱいお客様ならこちらも同じように合わせる。 次に会話のスピードだ。これもお客様と同じスピード、同じテンポに合わせる。会話の「間」まで相手に合わせるぐらいの気持ちで臨んで欲しい。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
選択肢を増やし、お客様自身に選んでもらう
お客様が特定の色や車種に興味を示した場合でも、すぐに否定するのではなく、一度肯定した上で、他の選択肢も提示し、お客様自身に選んでもらうことが大切です。
大切な事は、一旦肯定して、その上で比較してもらう事だ。 パールホワイトいいですね! 僕も好きです! でもどうしましょう? オプションカラーなので5万円高くなりますが、どちらがいいですかね? 未使用車、やっぱり気になりますよね! スペーシアで未使用車にすると予算が上がります。eKスペースとかワゴンRだと同じ予算でいけますが、どうでしょう? このように、一度乗っかった上で、比較車両を提案し、お客様に選んでもらおう。相手の考えを否定してはいけない。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
これにより、お客様は納得して決断することができ、営業としての価値も高まります。
働く人のモチベーション向上とマネジメントの重要性
従業員のモチベーション向上は、組織全体の成果に直結します。ドラッカーの言うように、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための、道具、機能、機関」であり、働く人に働きがいを与えるためには、彼らに責任を持たせることが不可欠です。
その「マネジメントの父」と呼ばれているドラッカーによると、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための、道具、機能、機関」らしい。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
具体的には、以下の3つの要素が重要とされています。
働く人に働き甲斐を与えるためには、自分の仕事、職場、成果に責任をもたせなければいけません。
1.仕事自体が生産的でやりがいがある(チャレンジ性がある)こと
2.自分の成果についてフィードバック(正当な評価)があること
3.継続的に成長できる環境であること
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
未熟なマネージャーは「最近の若者は自発的に仕事をやらない」と嘆くことがありますが、これはリーダーが部下を信じ、サポートしないことが原因であると中野氏は指摘します。
未熟なマネージャーはよく「最近の若者は自発的に仕事をやらない」とか、「努力をせずに諦める」と言うが、そんな事はない。それは、リーダーが信じて、サポートしないからだ。はっきり言ってマネージャー失格。部下が可哀そうだ。人は誰かに期待され、貢献していると感じた時に最もやる気が湧いてくるものだ。
引用:『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』中野優作著
『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』は、単なる営業ノウハウ本ではありません。お客様の人生を豊かにするという視点に立ち返り、人と人との繋がりを大切にすることの重要性を教えてくれます。この考え方は、中古車業界に限らず、あらゆるビジネスにおいて顧客との信頼関係を築く上で不可欠な要素と言えるでしょう。
あなたのビジネスにおいて、お客様の「人生を想像し、充実させる」視点を取り入れるとしたら、どのようなことができますか?
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