どこでも誰とでも働ける! 尾原和啓氏が語る「これからの仕事と転職のルール」

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「どこでも誰とでも働ける」――この言葉に、あなたはどんなイメージを抱きますか? 働き方が多様化する現代において、私たちはどのような視点と行動力を持ってキャリアを築いていくべきなのでしょうか。尾原和啓氏の著書『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』から、そのヒントを探ります。本書で語られる「プロフェッショナルとしてのあり方」「新しい環境への適応」「未来を見据える力」など、示唆に富む言葉の数々をご紹介します。


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どこでも誰とでも働ける時代に必要な心構え

場所にとらわれない働き方と「好き」を突き詰める価値

現代では、物理的な場所に縛られずに働くことが可能になっています。著書では、スイスで美少女ゲームを制作し、日本市場で成功を収めるベンチャー企業の例が紹介されています。

10 人くらいのベンチャーで、スイスにいながら日本市場向けに美少女ゲームをつくり、ガッツリ儲かっているというのです。 「そんなに儲かっているなら日本に来ればいいのに」と聞くと、こんな答えが返ってきました。 「自分たちは美少女ゲームが大好きだけど、日本のゴミゴミした感じは嫌い。スイスの食生活と文化に満足している」「日本で会社をつくっても、ゲームメーカーがたくさんあって、エンジニアも集めにくい。でもスイスにいれば、『きれいな空気を吸いながら美少女ゲームをつくれるなんてサイコー!』というエンジニアが集まってくれる。だから日本には行かないんだ」

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

この例は、単に場所を問わないだけでなく、自分たちの「好き」を徹底的に追求し、それが最適なパフォーマンスを発揮できる環境を選択することの重要性を示唆しています。日本市場をターゲットにしつつも、あえてスイスに拠点を置くことで、彼らは最高の環境と人材を確保しているのです。

「プロフェッショナル」とは何か

「プロフェッショナル」という言葉はよく聞かれますが、その本質は何でしょうか。

プロフェッショナルの語源は、自分が何者であるか、何ができて何ができないかを、自分の責任で「プロフェス(公言)」することです。自分で自分を律して成果を出し、それを相手にしっかり説明して、相手がそれを評価してくれること。この3つをおこなうことができれば、どんな職種であれ「プロ」と名乗ることができます。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

尾原氏は、プロフェッショナルとは、自己認識、自己規律、そして説明責任の3つの要素を満たすことだと定義しています。自分が何者で、何ができ、何ができないかを明確にし、自らを律して成果を出す。そして、その成果を相手に分かりやすく説明し、評価されることで、初めてプロとして認められるのです。これは職種に関わらず普遍的な「プロ」の条件と言えるでしょう。

新しい職場に馴染むための「ギブ」の精神

新しい環境に飛び込む際、多くの人が不安を感じるものです。しかし、その不安は自らが生み出している「壁」かもしれません。

もしあなたが新しい職場に馴染みにくいと感じるとしたら、それは自分で勝手に「壁」をつくっているだけではないでしょうか。その「壁」を壊すのは簡単です。 ひたすら相手のためになることをギブし続けること。 これさえできれば、本当に「どこでも誰とでも」働けます。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

新しい環境に溶け込むには、積極的に相手に「ギブ(与える)」し続けることが重要だと述べられています。自分の持っている知識やスキル、経験を惜しみなく提供することで、信頼関係が構築され、自然と新しい環境に馴染んでいけるのです。


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競争を勝ち抜き、迷いなく進むための視点

「みんなと違うゲーム」で戦う優位性

競争が激しい現代において、どのように自身の価値を高めていくべきでしょうか。

1つ言えるのは、何度もトライできる時代だからこそ、みんなと同じゲームで戦うよりも、 みんなと違うゲームに行ったほうが、競争は少ない ということです。 ぼくは12 回転職したというだけで、こうして本を書いたり、テレビに出たりすることができますが、アメリカでは転職なんて当たり前です。でも、日本ではまだ希少価値が高い。ライバルがほとんどいないからこそ勝ちやすいのです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

尾原氏は、「みんなと同じゲームで戦うよりも、みんなと違うゲームに行ったほうが、競争は少ない」と提唱しています。例えば、日本ではまだ転職回数が多いことが希少価値として捉えられるため、それが自身のブランドになるというユニークな視点を示しています。一般的な競争軸から外れることで、独自のポジションを確立し、優位に立てる可能性があるのです。

「数字」の先に必要な「一本の筋」

インターネットの世界では、とかく数字が重視されがちです。しかし、そこに落とし穴があることを著者は指摘します。

ネットの世界は、SEO(検索エンジン最適化) 対策をとり、短期間で「DCPAサイクル」をクルクル回せばたしかに数字はつくれるので、数字を上げれば勝ちのPV至上主義に陥ってしまう。 そこに一本筋が通っていないと、「数字さえ上がれば中身はどうでもいいのか」という批判が起こります。最悪の場合、DeNAのキュレーションメディアのように炎上して閉鎖に追いこまれてしまうかもしれません。「出所不明のあやしい情報はアップしない」「一次情報への取材なしには記事化しない」「下ネタはやらない」のように、「ここまではやるけれど、ここからはやらない」という線引きができていないと、そうした過ちを繰り返すことになります。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

数字を追求するあまり、コンテンツの中身が疎かになったり、倫理的な問題を引き起こしたりするリスクがあることを示しています。目先の数字だけでなく、「ここまではやるけれど、ここからはやらない」という明確な線引き、つまり「一本の筋」を通すことの重要性を強調しています。

迷いをなくし、行動するための「自分へのアカウンタビリティ」

「アカウンタビリティ(説明責任)」は、他人に対して求められるものですが、自身に対しても適用できると著者は述べます。

プロフェッショナルにはアカウンタビリティ(説明責任) が求められますが、アカウンタブルかどうかは受け手が決める、と言いました。それは事実なのですが、ぼくが気づいたのは、「自分に対してアカウンタブルであると迷いがなくなる」 ということです。自分に対してアカウンタブルであるというのは、なぜそれをするのか、その理由を自分自身で納得しているということです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

迷いがなくなると、即断即決でどんどん行動できるようになるので、まわりの人も自然とついてくるようになります。 多くの人たちは、自分で気づいているかどうかは別として、誰かに決めてほしいと思っています。 そのほうがラクだからです。なかには、何事も自分で決めないと気が済まない人もいますが、そういう人は少数派です。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

自分自身が「なぜそれをするのか」という理由に納得すること(自分に対するアカウンタビリティ)は、迷いをなくし、迅速な意思決定と行動を促します。そして、迷いのない行動は周囲を巻き込み、結果的にリーダーシップを発揮することにつながるのです。


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成長と未来を見据えるためのヒント

「ハイパー性善説」でスピードアップ

グーグルの企業文化には、驚くべき特徴があります。

スピードが命のグーグルでは、人を疑うことさえコストととらえられています。 相手の言っていることをいちいち疑って、確認を取っていたら、時間とコストがかかってしまって、スピーディな仕事はできません。だから、相手がグーグルの価値観を共有している限り、その人を信じることが前提となっています。これをぼくは「ハイパー性善説」と呼んでいます。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

グーグルでは、「ハイパー性善説」という考え方が浸透しており、相手を信じることが前提となっています。これにより、無駄な確認作業を省き、仕事のスピードを最大化しているのです。これは、信頼関係が生産性向上に直結するという好例と言えるでしょう。

成長の機会を捉える「何かが始まる場所」

自身の成長を促す上で、どのような環境に身を置くべきでしょうか。

自分の強みをつくったり、自分を成長させたりするときに、いちばん簡単なのは、何かが始まる場所にいることです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

尾原氏は、「何かが始まる場所」に身を置くことが、自己成長の最も簡単な方法だと述べています。新しいトレンドや技術が生まれる最前線にいることで、自然と自身のスキルや知識をアップデートし、強みを築くことができるのです。

未来予測の精度を高める方法

未来を予測し、自身のキャリアを考える上で、どのような情報収集が有効なのでしょうか。

そのため、ぼくは毎年PwCやKPMG、日本だと野村総研(NRI) が発表しているメガトレンドの資料を読みこみつつ、世界中をめぐりながら、現状ではどうなっているかをていねいに観察しています。調査会社のガートナーがつくる「ハイプ・サイクル」も必見です。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

未来予測の資料を読むコツは、最新版を読むときに、1年前と3年前のものを同時にチェックすることです。 そこで何が当たって、何が外れたのかを書き出します。すると、どの部分がボトルネックになって実現しなかったのか、課題は技術にあるのか、それとも法規制の問題なのか、国ごとの商習慣の違いが原因なのか、ユーザーの心理的ハードルを乗り越えられなかったのかが見えてきます。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

未来予測の資料を読む際には、最新版だけでなく、過去の資料と照らし合わせることが重要だと述べられています。何が当たり、何が外れたのかを分析することで、その背後にある技術的課題、法規制、商習慣、ユーザー心理といった本質的なボトルネックを見極めることができるのです。


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具体的な成功事例に学ぶ

iモードと「絵文字」を生み出した栗田穣崇氏

画期的なサービスやプロダクトは、どのようにして生まれるのでしょうか。iモードと「絵文字」の開発に携わった栗田穣崇氏の例は、そのヒントを与えてくれます。

現在、ドワンゴの取締役をされている栗田 穣崇さんという方がいます。栗田さんは、NTTドコモに入社して2年目のとき、NTTドコモ初の社内公募制のプロジェクトであるiモードの開発に、自ら手を挙げて参加しました。 部長の榎啓一さんの下、リクルート出身の松永真理さんや、夏野剛さんらプロジェクトチームの中で、最年少メンバーだった栗田さんは大きな役割を果たします。ポケベル時代のハートマークをiモードにもちこんで、いまも使われる「絵文字」を開発したのです。 その後も、ドワンゴの川上量生さんやバンダイネットワークスの高橋豊志さんらとの出会いを通じて、IT業界で頭角を現していきます。また、2016年には、栗田さんが生み出した絵文字は、ニューヨーク近代美術館(MoMA) の永久収蔵品に加えられることになったのです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

栗田氏の事例からは、自ら機会を掴みに行く積極性、若いうちから責任ある役割を担うこと、そして人との出会いを通じて新たな価値を創造していく力が、成功に不可欠であることが伺えます。

楽天に学ぶ「嗜好性」と「過剰」の価値

効率化が重視される現代において、楽天のビジネスモデルは独自の価値を提供しています。

わかりやすい例として、生活必需品ではない嗜好品、つまりワインや楽器、ゴルフギアがあげられます。数字で見れば、リアルを含めて、日本市場に出回るワインの5本に1本は楽天が売っています。楽器は7本に1本、ゴルフギアも 10 本に1本は楽天で取引されているのです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

1本500円なのに高級なフランスのワインと同じくらい味わい深いチリワインもあれば、ボルドーの五大シャトーをブレンドして1本100万円、みたいな完全にイカれたワインもあります。それが全部、楽天で手に入るわけです。 これだけ違うものが同じモールで手に入るのは、楽天には4万人もの店長が出店していて、それぞれが 自分の〝好き〟をとことん突き詰めて商売にしている からです。これは、デパートのように「何でも売っています」というお店ではできません。一人の店長がカバーできる範囲を超えているからです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

ここまでの品ぞろえは、効率を重視するアマゾンではできません。また、アマゾンは楽天の店長のように、何がいいワインかということも教えてくれません。要するに楽天は、 効率化の先にはない、「過剰」と「嗜好性」 の世界のプラットフォームとして、ナンバーワンの会社なのです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

楽天は、「嗜好性」と「過剰」のプラットフォームとして、効率を追求するアマゾンとは異なる価値を提供しています。4万人もの店長がそれぞれの「好き」を突き詰めて商品を提供することで、デパートでは実現できないような多様な品揃えと、専門的な情報を提供しているのです。これは、効率化だけではカバーできない、人間の「好き」や「こだわり」といった領域にビジネスチャンスがあることを示唆しています。

誰かと仲良くなるための3つの条件

人間関係を円滑にするためのヒントも本書にはあります。

誰かと仲良くなるための条件は3つあると、楽天のある店長さんに教わりました。それは、 ① マイクロインタレスト、 ② 自己開示、 ③ コミットメントです。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

「マイクロインタレスト(些細な興味関心)」「自己開示」「コミットメント(約束を果たすこと)」の3つが、人間関係を築く上で重要であるとされています。些細な共通点から会話を始め、自分のことを開示し、そして約束を守ることで、信頼関係は育まれるのです。

巨大市場「パチンコ」から学ぶ視点

意外な場所にも、ビジネスのヒントは隠されています。

現在、パチンコは 22 兆円の巨大市場です(2017年レジャー白書より)。最盛期の1990年代半ばには 30 兆円だったので、そこからは3分の2近くまで縮小しましたが、日本の国家予算が 98 兆円(2018年度の一般会計予算案) ですから、いまでも国家予算の5分の1以上もパチンコの市場規模があるということになります。

引用:『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』尾原 和啓著

パチンコ市場が、縮小傾向にあるとはいえ未だに日本の国家予算の5分の1以上を占める巨大市場であるという事実は、数字の裏にあるビジネスの規模感や、既存の市場が持つポテンシャルを見極める視点の重要性を教えてくれます。


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まとめ

尾原和啓氏の『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』は、変化の激しい現代において、個人がどのようにキャリアを構築し、プロフェッショナルとして成長していくべきか、多角的な視点からヒントを与えてくれます。場所や組織にとらわれず、自身の「好き」を追求し、自らを律しながら「ギブ」の精神で新しい環境に適応すること。そして、周囲とは異なる独自の競争軸を見つけ、一本の筋を通して迷いなく行動すること。さらには、常に未来を見据え、情報収集と分析を怠らないこと。これらの要素が、これからの時代を「どこでも誰とでも働ける」人材として生き抜くための鍵となるでしょう。

本書から得られる学びを活かし、あなた自身のキャリアをより豊かなものにしていきませんか?

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