変わる時代の価値観|競争から共存、全体から個人へ
「いい大学を出て大企業に就職できれば人生は安泰だ」――長らく日本人の常識とされてきたこの考え方が、今、音を立てて崩れています。かつての成功の象徴であった大企業が困難に直面している現実を目にすれば、この常識がもはや幻想であることがわかります。
著者は、本当に大切なことは「どんな生き方がしたいか」であり、それは「自分にとっての幸せとはどこにあるのか」を探ることにほかならないと語ります。
大切なのは「どんな生き方がしたいか」であり、それは「自分にとっての幸せとはどこにあるのか」を探るということだ。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
物質的な豊かさを追求する時代は終わりを告げ、多くの人々のマインドはすでにシフトし始めています。
多くの人のマインドは、「競争から共存」、「全体から個人へ」と、すでにその方向をシフトしはじめている。それを後押ししているのは、前に触れた、行きすぎた資本主義に対する反動と、SNSに象徴されるインターネット空間がもたらしたクラスタ(小さな塊)化だ。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
この「クラスタ化」、つまり小さな経済圏やコミュニティの重要性が増しているのです。
小さな経済圏がもたらす安心感とチャレンジ
なぜ、小さな経済圏が重要なのでしょうか。それは、それが人々に安心感とチャレンジへの意欲を与えるからです。
自分を肯定してくれる場所さえあれば、人はチャレンジすることに対する恐れが減るからだ。チャレンジした先に自分の居場所が作れたらベストだけど、ダメでも帰ってこられる場所があることは、とても大事だと思う。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
会社という大きな組織で「退路を断つ」といった、極端な手法をとるよりも、むしろ「退路」を確保しながら少しずつ新しい道を模索する方が、より本質的なチャレンジにつながります。
最初のうちは会社に勤めながら夜、作業を進めていた。「退路を断つ」という言葉はなんだか美談のように扱われることもあるけど、思考することを放棄した人が最終的にとる手法だと感じる。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
小さな経済圏やコミュニティは、「ダメでも帰ってこられる場所」となり、挑戦を後押ししてくれるセーフティネットの役割を果たします。
お金の「額面価値」を超えた新しい繋がり方
お金に対する考え方も、額面価値だけにとらわれない、新しい次元の価値が生まれてきています。興味深いエピソードとして、家入氏はホームレスの方の話を挙げています。
家入: 大阪の西成地区で、 50 円玉を 50 円で売っているホームレスがいるっていう話、聞いたことがありますか?
pha: なんですか、それ?
家入: 本当に 50 円玉を 50 円で売っているんです、路上で。お金の額面の価値だけで考えると意味がわからないことになっちゃうんだけど、売っている本人からすれば 50 円を売ることでそこにコミュニケーションが生まれるので、その分、プラスだと。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
これは、お金が単なる交換手段ではなく、コミュニケーションを生み出すツールになり得ることを示しています。これはクラウドファンディングの手数料を大幅に下げた家入氏の試みにも通じる、「なめらかなお金の流れ」の考え方です。
日本人の持つ相互補助と共存の精神
実は、こうした相互補助や共存の精神は、日本に古くから根付いているものです。
それに日本にはもともと、頼母子講とか無尽とかあるわけで。あれってマイクロファイナンスそのものですからね。それに日本は保険大国ですけど保険もある種の相互補助の形です。
引用:『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真著
頼母子講(たのもしこう)や無尽(むじん)といった相互扶助の仕組みは、現代でいうマイクロファイナンスやシェアリングエコノミーの原型とも言えます。生協(生活協同組合)がうまくいっている国であることも、日本の国民性がもともとこうした共助の精神を持っていることの証左です。
小さな経済圏で生きることは、社会の大きな流れに翻弄されず、自分にとっての「幸せ」とは何かを追求し、安心感の中でチャレンジを続けるための、もっとも現代的な生き方なのかもしれません。
あなたにとっての「小さな経済圏」はどこにありますか?
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