佐々木裕子氏の『実践型クリティカルシンキング』から学ぶ、問題解決の思考術

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「自分の頭で考え、行動し、周りを動かす」思考技術として注目されるクリティカルシンキング。ビジネスの現場で、より実践的にこのスキルを使いこなすためのヒントを、佐々木裕子氏の著書『実践型クリティカルシンキング』からご紹介します。限られた情報の中で最善の結論を導き出し、周囲を巻き込みながら課題を解決していくための具体的な思考法を見ていきましょう。


 

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実践型クリティカルシンキングとは?

 

クリティカルシンキングと聞くと、難解な論理的思考をイメージするかもしれません。しかし、佐々木裕子氏は、その本質をこのように定義しています。

「『目指すもの』を達成するために、 『自分の頭』で考え、行動し、 『周りを動かす』ための実践的な思考技術」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

つまり、単に考えるだけでなく、具体的な行動と周囲への影響まで見据えた、実践的なスキルだということです。

 

クリティカルシンキングのメリット

 

では、この実践的な思考技術を身につけることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

  • 限られた状況での最適な意思決定:

    「限られた時間、限られた情報で、その時点でベストだと自分が思える結論・成果が出せる確率が上がること」

    引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著 情報が不十分な状況でも、最善の選択をするための羅針盤となります。

  • 未経験の事柄への対応力:

    「必ずしも自分に経験値のない事柄・事象についても、自分の頭で考え、論理的な判断を行う力をつけられること。」

    引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

    未知の課題に直面した際も、論理的に思考し、判断を下す力が養われます。

  • 説明能力の向上:

    「自分の下した判断の根拠について、他人に簡潔かつ論理的に説明できること。」

    引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著 

    自分の考えを明確に伝え、納得してもらうために不可欠な能力です。


 

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クリティカルシンキングで解決すべき3つの問い

 

クリティカルシンカーが常に意識すべき問いは以下の3つです。

「①目指すものは何か?(いつまでに、どのくらいのレベルで?)」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

「②今と目指す姿のギャップ(=課題)は?」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

「③ギャップを埋めるための具体的なアクションは何か?」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

佐々木氏は特に2番目の「ギャップ=課題」を見つけることの重要性を強調しています。

「実は②のほうが極めて大事なんです。問題を見つける。なぜそれが、今生じているのか考える。『問題を見つけることは、それを解くよりもっと本質である』これは、アインシュタインの有名な言葉です。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著


 

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課題を深掘りする思考テクニック

 

 

分解して考える「掛け算・足し算」

 

課題を具体的に把握するためには、要素を分解して考えることが有効です。例えば、売上目標達成を考える際、

「総成約額を分解すると、『面談件数×成約率×1成約当たりの単価』になる。これで分解するとわかりやすいですよね。数字が出てきたら、『この数字はどんなかけ算でできているか』『どんな足し算で積み上がったものか』で考えると分解しやすいでしょう。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

このように、一見複雑な事柄も、シンプルな要素に分解することで、問題の所在が明確になります。

 

「なぜ?」を繰り返す「5回のなぜ」

 

問題の根本原因を探るためには、表面的な原因で満足せず、深く掘り下げていく必要があります。

「だいたい4~5回くらいは『なんでこんなこと起きてるんでしたっけ?』って繰り返さないと、本質にたどり着かないと言われています。普通だと、2~3回で終わることが多いですね。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

繰り返し「なぜ?」と問いかけることで、真の課題が見えてきます。

 

ズームイン思考とピラミッドストラクチャー

 

漠然とした問題から本質に迫るためには、情報を構造化する「ピラミッドストラクチャー」が役立ちます。

「最初は限られた情報しかなくても、丁寧に分解して『ピラミッドストラクチャー』にする。1段階ずつ調べて、1個ずつ大きな枝を切っていく。で、最後本質にたどり着くっていうのが、ズームインのポイントです。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

これにより、全体像を把握しながら、具体的なアクションレベルまで落とし込むことが可能になります。


 

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罠に陥らないためのチェックポイント

 

クリティカルシンキングを実践する上で陥りやすい罠を避けるために、以下の3つのチェックポイントが重要です。

「①言葉の定義は明確か?」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

「②どんな課題解決にリソースを集中するか、具体的に判断できるか?」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

「③解決策がアクションレベルで透けて見えるか?」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

例えば、「少子高齢化」という課題に対して「死ぬのを減らす。」という対策は、一見論理的に見えても、本質的な解決には繋がりません。

「死ぬのを減らす。はい。これ逆ですね。年金問題や医療費問題の解決にはならないですから。ほかには?──『出生率を上げる』。出生率を上げても、 10 年後には労働者になれない。そうなんです。間に合わない。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著

このように、言葉の定義の曖昧さや、本質的な課題解決に繋がらないアクションは避けるべきです。

 

「ほかには?」と問い続けることの重要性

 

既存の常識や固定観念にとらわれず、常に「ほかには?」と問い続ける姿勢が、新たな発見に繋がります。

「演習5 でも言いましたね。『ほかには? ほかにはないの?』。これが大事です。意外にあるものです。当たり前ではない答え。前提条件を裏返すような答え。自分の固定観念を裏返すような答え。それがあるんじゃないかと思って、自問自答してください。そのための構造化ですから。」

引用:『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子著


 

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まとめ

 

佐々木裕子氏の『実践型クリティカルシンキング』は、単なる思考法にとどまらず、実際に成果を出すための行動と周囲を巻き込む力を養う実践的なガイドです。ご紹介した思考テクニックやチェックポイントを活用し、あなたのビジネスや日常生活における問題解決能力を向上させてみてはいかがでしょうか。

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