『医者という病』から学ぶ、医療との向き合い方のヒント

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先日読んだ、和田秀樹さんの『医者という病』という本が、私たちの医療との関わり方について、多くの気づきを与えてくれました。

タイトルは少し衝撃的ですが、私たちがより良く医療と付き合っていくための大切な視点が詰まっていると感じました。

今日は、その中から特に心に残った点を、皆さんと共有したいと思います。

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マニュアル通りの医療、それで大丈夫?

お医者さんが、必ずしも全ての分野の専門家ではないというのは、考えてみれば当然かもしれません。

和田さんによると、専門外の病気を診る際には、マニュアル的な指針に従って治療を進めることが多いそうです。

自分の専門ではない胃潰瘍の患者さんを診ることになったなら、「胃潰瘍」の項目を見て、そこに書かれている通りの治療をする。

薬にしても、そこに書かれている薬を、ガイドラインに沿ってそのまま処方することになります。

このように個人差を考えず、規定のガイドラインに従っただけの診療を行うと、どうしても総合的な診察の視点が抜け落ちてしまいます。

引用:『医者という病 』和田 秀樹著

画一的な対応では、個々の状態に合わせた細やかな配慮が難しくなり、時には過剰な治療や副作用のリスクにも繋がりかねない、と指摘されています。

私たち患者側も、自分の状態をしっかり伝え、対話することの重要性を感じますね。

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「大学病院だから」「専門医だから」は絶対?

「大きな病院なら安心」「専門の先生なら間違いない」私たちはつい、そう考えてしまいがちです。

しかし、和田さんはその「思い込み」に疑問を投げかけます。大学病院の臨床能力が必ずしも最高レベルとは限らないこと、特に高齢者にとってはリスクもある可能性を指摘しています。

また、老年科の教授が必ずしも老年医学の専門家とは限らなかったり、専門医試験が臨床現場から乖離した理論重視の内容になりがちだったりする、といった医学界の内部事情にも触れています。

過去の医療過誤事件や、著名な手術の執刀医が必ずしもその病院の所属ではなかった例を挙げ、「権威」を鵜呑みにしない姿勢を促しています。

「大学病院の教授の言うことだから間違いがない」「大学病院で手術するのだから安全だ」という思い込みは捨てていただくことが、あなたや家族の命を守る方法だと心得てください。

引用:『医者という病 』和田 秀樹著

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健康診断やがん検診との向き合い方

健康診断の結果、特に「正常値」の範囲に入っているかどうかは気になるところですが、この「正常値」の捉え方にも注意が必要なようです。

実は、正常値とは、平均値を中心にして正常と思われる測定を受けた人の 95%を含む範囲、すなわち、「平均値 ± 2標準偏差」の数値に過ぎません。しかも、その平均値は年代別ですらなく、全成人世代の平均値です。

20歳の若者も 70歳の高齢者も、すべて同列に考えられているのです。

引用:『医者という病 』和田 秀樹著

年代すら考慮されていない平均値の範囲を、絶対的な健康の指標と考えるのは、少し立ち止まって考えた方が良いのかもしれません。

がん検診についても、早期発見が必ずしもメリットばかりではない、という近藤誠医師の考え方を紹介しています。

検診で見つかるがんの中には、進行せず命に影響しない「がんもどき」も多く含まれるとのこと。

悪さをしない「がんもどき」は、転移はしないので、ご自身が症状を自覚するようになってから治療しても、決して遅くありません。(中略)無理に治療して Q OLを下げるほうが問題だと私は考えています。

引用:『医者という病 』和田 秀樹著

治療の必要がないものまで治療してしまい、かえって生活の質を落としてしまう可能性もあるというのは、難しい問題提起だと感じました。

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医療が少ない方が健康?「夕張パラドックス」

医療を受ければ受けるほど健康になる、というわけでもないのかもしれません。

財政破綻により市民病院が縮小された北海道夕張市の例は、非常に示唆に富んでいます。

なんと夕張市では、がんで死ぬ人と心臓病で死ぬ人、脳卒中で死ぬ人の数がすべて減り、老衰で死ぬ人の数だけが増えたのです。

この夕張市の事例は、医療行為をしないほうが死ぬ人は減るし、病気にならずに老衰で死ねるという疫学的な根拠になったといえます。

引用:『医者という病 』和田 秀樹著

適切な医療はもちろん必要ですが、過剰な医療介入が必ずしも良い結果をもたらすとは限らない、ということを示す一例と言えそうです。

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医療を取り巻く環境

本書では、医療現場を取り巻く様々な構造的な課題にも触れられています。

例えば、大学の研究室が製薬会社からの資金に依存している現状や、開業医と勤務医の収入格差、新しい治療法に対する既存の専門医からの抵抗など、純粋な医療行為以外の要因が、現場に影響を与えている可能性も示唆されています。

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より良い医療と付き合うために

この『医者という病』は、私たち患者側が、医療や医師に対してより主体的で、賢い視点を持つことの重要性を教えてくれます。

情報を鵜呑みにせず、自分の体の声を聞き、医師としっかり対話し、時にはセカンドオピニオンを求める。

そして最終的には、自分の価値観に基づいて治療法を選択していく。

そんな姿勢が、これからの時代、ますます大切になってくるのではないでしょうか。

もちろん、日々献身的に医療に取り組むお医者さんへの感謝と敬意を忘れずに、建設的な関係を築いていきたいですね。

皆さんもこの本をきっかけに、ご自身の健康や医療との関わり方について、少し立ち止まって考えてみるのはいかがでしょうか。

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