話し方一つで、人間関係も、自分の心の状態も大きく変わります。ベストセラー著者である嶋津良智氏の著書『話し方の一流、二流、三流』から、感情のコントロール、コミュニケーションの極意、そしてストレスを減らす「気にしない」技術について学び、日々の生活をより豊かにするヒントを探りましょう。特に、怒りの感情の裏側にある「第一感情」に気づくことや、親しい間柄での「一流の尋ね方」は、明日から実践できるコミュニケーションの質を高める鍵となります。
「怒り」の正体を見抜き、一流のコミュニケーションへ
私たちは日々の生活の中で、つい感情的になってしまうことがあります。特に「怒り」は、衝動的になりがちで、後悔につながることも少なくありません。しかし、その怒りの多くは表面的なものだと著者は指摘します。
怒りの感情は、多くの場合、第二感情です。 不安、ストレス、痛み、悲しみ、苦痛、絶望、悲観、期待、願望……といった第一感情が奥にあって、それが第二感情の怒りになって現れるんです。 「この怒りの第一感情は何か?」と考えると、怒りという第二感情を発散する三流のコミュニケーションでもなく、その場で感情を飲み込んで怒りも心配も伝えないという二流のコミュニケーションでもなく、まったく違う本当の感情に気づいて伝えられるはずです。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
つまり、怒りの裏にある**「第一感情」に気づくことが、感情を発散する三流でも、飲み込むだけの二流**でもない、一流のコミュニケーションへの第一歩です。自分の心と客観的に向き合うために、著者はユニークな方法を提唱しています。
私は、ママ向けのセミナーで話す時、 「子供に怒りをぶつけそうになったら、何の理由がなくてもいいですから、一回、キッチンへ行くようにしてみてください。何の理由がなくてもいいですから、冷蔵庫を開けてみてください。何の理由がなくてもいいですから、頭を冷蔵庫へ突っ込んでみてください。その後、子供のことに戻ってみてください。すると、『私は今から、怒ろうとしているんだな』と、自分の心と客観的に向き合えるようになります。文字通り頭を冷やすわけです。これくらい意識してやってみるといいですよ」と話しています。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
文字通り「頭を冷やす」ための、具体的で面白い提案ですね。
親しい仲こそ「理由」を尋ねる一流の話し方
夫婦や恋人、親子、親友など、関係性が近い相手ほど、つい甘えが出てしまいがちです。「言わなくてもわかってくれるだろう」という思い込みは、すれ違いの元になることもあります。だからこそ、親しい間柄でのコミュニケーションの質が重要になります。
夫婦や恋人、親子きょうだい、親友など、関係性が近ければ近いほど、相手ならわかってくれるだろうという甘えがうまれることもあるでしょう。でも、「親しき仲にも礼儀あり」というのは、基本的な人間関係円満のコツ ではないでしょうか。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
では、相手の意図が理解できない言動があったとき、一流の話し方とは何でしょうか。それは、責めるのではなく、まず理由を尋ねることです。
その時どんな理由で相手がそうした言動をしたのかをまず第一に考えて、 「今○○していたけど、何か理由があったの?」 「あなたが○○したのはなんで?」 「○○した理由を教えて」 と尋ねるのが、一流のコミュニケーションです。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
感情的にならず、まず相手の事情や背景を理解しようと努める姿勢が、関係性をより強固にする秘訣です。
感情マネジメントの必殺技「気にしない」の選択肢
人付き合いの中で、他人の言動にいちいち反応して疲れてしまうことはありませんか? 著者は、そんなストレスから解放されるための「必殺技」を紹介しています。
「気にしない」という選択肢を持つことは感情マネジメントの必殺技です。相手にむかつくことをいわれても気にしない。人の目を気にしない。すると、 「マウントをとりたがる人なんだなー」 「上から目線でしかしゃべれない人なんだなー」 と気が楽になります。 もしあなたがなんでも気になってしまう人なら、「気にする」という選択肢の裏には、「気にしない」という選択肢もある ことを思い出すところから、まず始めてください。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
相手の言動を「その人の癖」として客観視できれば、自分の心が乱される度合いは格段に減ります。「気にする」か「気にしない」か、選べるという認識を持つことが、感情のマネジメントにおいて非常に強力なツールとなるのです。
信頼を深める「心理的安全性」と「一貫性の原理」
良好な人間関係を築く上で、「信頼」は欠かせません。著者は「信用」と「信頼」を分けて考えており、特に相手に心を開くことができるかどうかが「信頼」の鍵だと述べています。
心理的安全性は、お互いの頭の中をできるだけ多く共有することで築くことができます。 ですから、相手を信頼して、考えを素直に言い合うことが、信頼をさらに強固にして、心理的安全性を強めるという、よいスパイラルをうむことができるようになります。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
心理的安全性とは、誰もが自分の意見や考えを安心して伝えられる環境のこと。お互いの頭の中を共有し、素直に意見を言い合うことが、信頼を強め、さらに安全な場を作り出します。
また、簡単な言葉遣いの変更が、人々の行動に大きな変化をもたらすことも示されています。
「キャンセルされるときはお電話をください」 から、 「キャンセルされるときはお電話をいただけますか?」 に変えてみたところ、言い方を変えただけで、無断キャンセルが激減したというのです。 つまりは、「はい」と答えると、「請け負った」という無意識の約束が生まれ、約束をしたから守らなければいけないという一貫性の原理に基づく意識が生じます。
引用:『話し方の一流、二流、三流』嶋津 良智著
一方的な指示ではなく、相手に**「請け負ってもらう」**形式で尋ねることで、「はい」という無意識の約束が生まれ、行動の一貫性が保たれるようになるのです。
一流の話し方は、単なるテクニックではなく、自分の感情と相手の事情への深い理解から生まれます。今日から、怒りの裏の「第一感情」を意識し、親しい人には「理由」を尋ね、そして「気にしない」選択肢を持ってみてはいかがでしょうか。
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