あなたは今、目の前の問題に対して「これしかない」と決めつけていませんか? 従来の思考法では見つけられないような、ユニークで効果的な解決策を導き出すのが「ラテラルシンキング」です。 この思考法を身につければ、あなたのビジネスや日常生活における課題解決の幅が格段に広がるでしょう。 本記事では、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』から、そのエッセンスを抽出し、ラテラルシンキングの実践的なヒントをご紹介します。
ラテラルシンキングとは?
ラテラルシンキングとは、既成概念にとらわれず、多角的な視点から物事を捉え、新しい発想を生み出す思考法です。 論理的に筋道を立てて考えるロジカルシンキングとは異なり、自由な発想で「飛び地」に解決策を見つけることが特徴です。
思考の「固定観念」を打ち破る
私たちは無意識のうちに、さまざまなルールや固定観念に縛られています。
人間はもともと省力化志向にできていますから、すきあらば怠けようとします。 考えなくて済むのなら、迷わずそちらを選択して、楽をしようとする。そういう意味では、ルールや固定観念は非常に「便利」なのです。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
この「便利さ」が、私たちの思考を制限してしまうことがあります。 しかし、ラテラルシンキングでは、あえてその固定観念を疑い、これまでとは全く異なるアプローチを試みます。
例えば、あるイベントで入場者が走ってしまう問題を解決する際に、普通は「警備員を増員する」「ゲートを大きくする」「入場者を制限するための柵をつくる」といった解決策を考えがちです。
ところが、この問題の解決策はまったく違うものでした。 要するに、入場者が走らないようにすればいいのです。 主催者は、入場を待っている人たちに、小さな会場案内図を配りました。 走りながらでは文字は読めませんから、急ぐ人はずいぶん減ったのだとか。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これは、「走らせない」という目的を達成するために、「会場案内図を配る」という一見関係ないように思える手段を用いることで、問題の本質にアプローチした例です。
ラテラルシンキングとロジカルシンキングの連携
ラテラルシンキングは、突飛なアイデアを生み出すだけでなく、そのアイデアが現実的かどうかを検証するために、ロジカルシンキングと組み合わせるのが効果的です。
ラテラルシンキングで考えると、たくさんの選択肢が得られます。その選択肢の1つひとつについて、現実に実行できるかどうか、実行する上で問題がないかどうかはロジカルシンキングで考察します。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これにより、単なる思いつきで終わらず、具体的な解決策へと落とし込むことができます。
ラテラルシンキングを実践するための3つの力
ラテラルシンキングを効果的に行うには、特定の能力を磨くことが重要です。
ラテラルシンキングに必要な「環境」をつくるためには、次の3つの能力が欠かせません。
●疑う力
●抽象化する力
●セレンディピティ
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
1. 疑う力
既存の常識や前提を疑うことで、新たな視点を見つけることができます。
ガードレールを取り外して、センターラインを消した。 これが答えです。 道路灯だけは残したそうですが、ガードレールもセンターラインもなくなると、ドライバーは慎重になり、スピードを出さなくなったそうです。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これは、道路の安全性を高めるには「ガードレールやセンターラインを増やす」という一般的な考え方を疑い、「取り除く」ことでドライバーの意識を変えるという逆転の発想です。
2. 抽象化する力
具体的な事象から本質的な要素を抽出し、別の文脈に応用する力です。
NASAは、無重力状態ではボールペンが使えないことを発見した。ボールペンは重力によってインクを送り出すため、重力のない世界では文字が書けない。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
この問題の本質は「書く」という行為であり、それを達成するための手段が「重力でインクを送る」ボールペンだけではない、と抽象化することで、宇宙でも使える筆記具の開発につながるでしょう(実際には鉛筆で解決されましたが)。
3. セレンディピティ
偶然の出来事から、価値ある発見をする力です。
セレンディピティとは「偶然を偶然として無視しない力」だと定義しました。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
小麦のおかゆを炎天下に放置していたら、「偶然」できてしまったパン。ワインは、飲み水の代わりにブドウの果汁を瓶に入れておいたところ、自然発酵して「偶然」生まれた飲み物です。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
身の回りのささいな「偶然」を、新たな発見のヒントとして捉える意識が重要です。
最小の力で最大の効果を出す「ずるい」方法
ラテラルシンキングは、最小の労力で最大の効果を出す「ずるい」解決策を見つけることにも役立ちます。
「最小の力で最大の効果を出す」ための方法は、次の3つのパターンに分類することができます。
●他者の力を借りる
●作業を組み合わせる
●「楽する権利」を手に入れる
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
1. 他者の力を借りる
直接的な指示ではなく、相手に主体的に動いてもらう工夫をすることで、協力を引き出すことができます。
それまで「よろしかったら、お読みください」と言いながら配っていたのですが、小冊子をテーブルに置き、「すみません! おひとり様3部までにしてください!」と言い換えた のです。 その結果、本当に3部ずつ減っていきました。 「そんなにみんなが持っていくのなら、見てみようか……」という心理が働いたのでしょう。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これは、制限することで逆に価値を高め、人々の好奇心を刺激した例です。
2. 作業を組み合わせる
一見無関係なものを組み合わせることで、新たな価値を生み出します。
ある種のヤドカリは、自分の殻にイソギンチャクをつけたまま生活しています。なぜなら、他の生物がイソギンチャクの毒を警戒して、ヤドカリを襲わないからです。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
ヤドカリとイソギンチャクの関係のように、異なる要素を組み合わせることで、思わぬ相乗効果が生まれることがあります。
3. 「楽する権利」を手に入れる
課題を解決するために、あえて手間をかけさせたり、回り道をさせたりすることで、望ましい結果を導き出すことも可能です。
自動改札機を長くした。 これが、この問題の解決策でした。 要するに、乗客が長い改札を通過する分だけ計算時間を稼いだわけです。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これは、計算時間を稼ぐために改札機を長くするという、一見非効率に見える方法で問題解決を図った例です。
欠点を「強み」に変える発想
マイナスに見える要素も、見方を変えればプラスに転じることができます。
物事は見方によってプラスになったり、マイナスになったりします。どちらになるかは、受け取る側のとらえ方次第。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
1950年、捨てられていた雪を使って、市内の中学生、高校生らが雪像6基を制作しました。これがきっかけとなって始まったのが、有名な「さっぽろ雪まつり」です。 毎年2月は、北海道への旅行者が激減する時期です。そのため雪像は、市にとっても重要な観光資源になりました。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
雪という「邪魔なもの」を観光資源に変えた札幌雪まつりの例は、まさに欠点を強みに変えた好例です。
未来は「点と点」のつながりから生まれる
ラテラルシンキングは、まさに「点と点」をつなぐ思考法です。
「未来を見通すことはできない。むしろ過去を振り返って経験から点と点を結びつけ、何らかの形をつくることが重要だ」
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
過去の経験や現在の事象を単体で見るのではなく、それらの間に新たなつながりを見出すことで、未来を創造するヒントが生まれます。
クリスピー・クリーム・ドーナツの例は、その好例です。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」というドーナツ専門店では、チラシの配布や派手な宣伝をすることなく、この問題を解決しました。一体、どんな方法だったのでしょう?ドーナツそのものを無料配布した。これが正解です。しかも、ひとりに1個ではなく、ひとりに1箱(12個入り)配ったのでした。
引用:『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』木村尚義著
これは、「ドーナツを買ってもらう」という最終目標に対し、「無料で12個配る」という一見逆行する行動が、結果的に顧客獲得につながるという、まさにラテラルシンキング的な解決策です。
常に「最終的にどうなっていればいいのか」という視点で発想することが、ラテラルシンキングの鍵となります。
あなたの周りの課題や問題に、もしもあなたが「ずるい考え方」を適用するとしたら、どんな解決策が思い浮かびますか?
コメント