最近、食後に猛烈な眠気に襲われたり、集中力が続かなくなったりしていませんか?それはもしかすると、食事で摂る「糖質」が原因かもしれません。
医師である山田 悟氏が提唱する「糖質疲労」という考え方と、その解消に役立つ「ロカボ」な食事法について、著書『糖質疲労』の内容からご紹介します。健康的な食生活へのヒントが詰まっています。
「糖質疲労」とは?あなたの不調の原因かもしれません
食後の体調不良を単なる「食べすぎ」や「体質のせい」と片付けていませんか?山田 悟氏は、その原因を「食後高血糖」と「血糖値スパイク」によるものとして、「糖質疲労」と名付けています。
「糖質疲労」とは 食後高血糖および血糖値スパイクにより、 ①食後に、眠い、だるい、食べた量の割にはすぐに小腹が減る、集中力がもたない、イライラしている、と自覚する状態 ②右の状態を自覚せずとも周囲から指摘される状態 あるいは、 ③ご自身で「食後血糖値」を測定して140㎎/ 以上になっている状態
引用:『糖質疲労』山田 悟著
食後、急激に血糖値が上がると、それを下げるためにインスリンが大量に分泌され、今度は急激に血糖値が下がりすぎることがあります。この血糖値の乱高下(血糖値スパイク)が、眠気、だるさ、集中力の低下、そしてすぐに空腹を感じるといった不調を引き起こすと考えられています。
医師が提案する「ロカボ」な食べ方とは?
「糖質疲労」を予防し、健康を維持するために、山田 悟氏が提案しているのが「ロカボ」と呼ばれる無理のない食事法です。
私が提案する「糖質をとる量を控え」「その分、たんぱく質と脂質をお腹いっぱい食べ」「食べる順番を意識する」という食べ方は、シンプルで、食事に満足感がもてる、無理のない食べ方です。 これが「ロカボ」と呼ばれる食べ方です。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
「ロカボ」のポイントは、単に糖質を制限するだけでなく、**「たんぱく質と脂質をしっかり摂って満腹になること」**にあります。カロリーを気にせず、むしろしっかり食べて満足感を得ることで、継続しやすいのが特徴です。
ロカボの基本ルール
『糖質疲労』では、ロカボを実践するための具体的なルールが提示されています。
ルール① 1日にとる糖質の量は 70〜130g以内(1食 20〜 40 g×3回、+間食で 10 g)
ルール② お腹がいっぱいになるまで食べる
ルール③ カロリーはいっさい気にしない!
ルール④ たんぱく質、脂質、食物繊維をしっかりとる
ルール⑤ 糖質とたんぱく質、脂質のバランスも気にしない!
ルール⑥ 糖質ぬきをめざしてストイックになるのはNG
ルール⑦ 早食いをせず、「カーボラスト」でとる
引用:『糖質疲労』山田 悟著
特に重要なのは、「ゆるい糖質制限」であることと、「脂とたんぱく質をしっかりとって満腹になる」ことです。
血糖値の急上昇を防ぐ食べ方と食材の選び方
血糖値の急上昇、つまり「糖質疲労」を防ぐためには、日々の食事内容と食べ方を少し変えるだけで効果が期待できます。
1. 食べる順番(カーボラスト)を意識する
「カーボラスト」とは、糖質を食事の最後に回すという方法です。この食べ方を支えるのが、食事の開始から分泌されるホルモン「インクレチン」の存在です。
糖質を後回しにし、たんぱく質や脂質を先にとれば、糖質が入っていく頃にはインクレチンが作用し始めている、 というわけです。 インクレチンの分泌が始まるのは、食事を始めた 20〜 30 分後と考えられます。「早食い」は避けるべきで、 糖質を食べるのは食事の1口目から早くても 20 分後 と申し上げたのは、こうしたことが理由です。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
先にたんぱく質や脂質、食物繊維を摂ることで、インクレチンの働きにより血糖値の上昇が抑制されやすくなります。早食いを避け、ゆっくりと食事を楽しむことが、糖質疲労の予防につながります。
2. たんぱく質と脂質は「頼もしい味方」
脂質やたんぱく質は、食後の血糖値上昇を抑える強い味方です。パンや麺類を食べたい時にも工夫ができます。
我が家でよく食べているブランパンを例にあげますが、十分に満足できる1食分(例、朝食時ブラン食パン2枚/約 75 g)で糖質 11g。これは一般的に流通している食パンと同量で比べたとき、糖質 60%オフにあたります(日本食品標準成分表2020年版に基づく比較)。普通のパンを食べたいときは、8枚切りあるいは 12 枚切りの食パンを食べます。そのときには、パンを覆い隠すくらいのバターか滴るほどのオリーブオイルに浸すことで、おいしさを享受しつつ、血糖値上昇にブレーキをかけるようにしています。後述しますが、 油脂は(たんぱく質もそうですが)食後高血糖を予防してくれる頼もしい味方なのです。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
特に朝食は、血糖値スパイクを防ぐために重要な食事とされています。
血糖値の急上昇を防ぐために、朝食は、ほかの食事以上に「より糖質控えめ、よりたんぱく質と脂質を十分に(ふんだんに)」 を強く意識することが望ましいのです。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
3. 果物や甘いヨーグルトには注意
健康に良さそうなイメージがある果物ですが、含まれる果糖には注意が必要です。
果物には果糖をはじめとする糖質が豊富に含まれているのが問題です。 よくおいしさの印のようにして記載される「糖度○%」という言葉は、その果物100gの中に○gの糖質が含まれているという意味です。(中略)長期的に見たとき、高濃度で果糖が含まれる果物をふんだんにとる食習慣は、脂肪肝や脂質異常症や糖尿病を発症させるリスクになるのです。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
また、ヨーグルトも砂糖や果物が添加されていない「高脂肪で砂糖・果物が添加されていないもの」を選ぶのがロカボ流です。
砂糖や果物が添加されることで糖質を豊富に摂取してしまうと、それにより血糖値が急峻に上がりやすくなり、さらには中性脂肪値も上昇しやすくなってしまうことでしょう。 ヨーグルトにはもともと牛乳の時点から100 あたりで5gほどの糖質(乳糖など)が含まれています。わざわざ砂糖や果物を加えてしまっては、食後高血糖によって腸内環境が悪くなってしまうかもしれません。 せっかくの発酵食品の摂取が台無しです。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
ゆるく、満足感のあるロカボを
「糖質疲労」を予防する「ロカボ」は、ストイックな「糖質ぬき」を目指すのではなく、「ゆるく糖質を制限しながら、たんぱく質と脂質をしっかり摂って満腹になる」ことを大切にする食事法です。
ロカボは、「まさか、そんなうまい話があるなんて」がこれでもかと詰まった食事法です。「ゆるい糖質制限の食べ方」ですが、 ポイントは、糖質をゆるく制限すること以上に、「脂とたんぱく質をしっかりとる」「満腹になる」というところが肝です。
引用:『糖質疲労』山田 悟著
体調が優れないと感じる方は、まずは朝食の糖質を控えてみたり、食べる順番を変えてみたりといった小さな工夫から、「ロカボ」な食生活を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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