鈴木祐氏の著書『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』は、私たち人類の進化の歴史に根ざした知見を元に、現代社会で最高のコンディションを手に入れるための具体的な方法を提示しています。
進化の過程で形成された私たちの身体と心が、現代の「肥満環境」やデジタル社会といかにミスマッチを起こしているのか。そして、それをどう解消し、最高の体調へ導くのか。本書のハイライトから、そのエッセンスをご紹介します。
意志の力に頼らない「食」の戦略
現代社会は、進化の歴史から見れば極めて異質な「食料の豊富な『肥満環境』」です。
人間の消化器系・感覚(味覚と嗅覚)・脳の食欲中枢は、およそ200万年前に発達した。これらの機能は、古代の狩猟採集民たちが暮らした環境に適応している。ほとんどカロリーが低い食品しかなく、食事にありつけないことも多かった時代だ。そのため、私たちの脳の報酬系は、できるだけカロリーの高い食べ物を探すように進化した。ところが、現代の先進国に住む人間は、食料の豊富な『肥満環境』に生きている
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
もともとヒトはハイカロリーな食事を好むように設計された生物なのですから、 少なくとも意志の力だけで「肥満」に立ち向かうのが時間のムダだということはハッキリするでしょう。
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
この進化の設計を理解すれば、意志力だけに頼る食事制限がいかに非効率的かがわかります。著者は、狩猟採集民の食事に近づけることを推奨しています。具体的には、ジャンクフードや精製穀物を減らし、野菜と魚を増やし、食物繊維が豊富なサツマイモを主食にするといったアプローチです。
また、腸内環境を整えることも重要です。現代人は食物繊維の摂取量が狩猟採集民と比べて2倍以上の差があり、これが腸内環境の悪化の一因です。
現代人は年ごとに食物繊維の摂取量が減っています。 厚労省は1日の食物繊維の摂取量を 20〜 27 gに定めていますが、いまの日本人は 13〜 17 g程度しか摂れていないのが現状です。 これに対して、コロラド州立大学が229種の狩猟採集民を調べたところ、彼らは1日で 42・5gもの食物繊維をとっていました。
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
加工食品(高脂肪・精製糖が多い食品)は腸内細菌が死にやすくなるため、摂取量を全体の1〜2割に抑えることを提唱しています。
老化を防ぎ、体調を保つ「炎症対策」の重要性
健康的に長生きするスーパー高齢者を調査した研究では、彼らの体には一般的な高齢者と比べて炎症レベルが異様に低いという大きな違いが見られました。
研究チームは言います。「この研究により、体内の炎症レベルを見れば老化のスピードが予測できることがわかった。これらのデータは、健康的に年を取るには『炎症対策』がもっとも大事であることを示している」
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
この慢性的な炎症を抑えることが、最高の体調を維持する鍵です。
内臓脂肪は炎症性物質を放出し、体内の炎症をジワジワと燃やし続けるため、メタボリックシンドロームの発症プロセスにつながります。内臓脂肪を減らすことが、最も直接的な炎症対策の一つと言えます。
さらに、炎症対策は睡眠とも深く関わっています。
・平均の睡眠時間が1日7〜9時間の範囲を逸脱すると体内の炎症マーカーが激増する
・夜中に何度も目が覚めてしまうような場合も、体内の炎症は増える
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
炎症対策のためにも、7〜9時間の適切な睡眠時間を確保し、夜中に目覚める回数を減らすことが大切です。眠りの質を高める方法としては、アイマスクと耳せんが最も効果が認められているアイテムと紹介されています。
現代病に立ち向かう「デジタル・メンタル」戦略
現代人が抱える問題の一つが、デジタルデバイスによる認知機能の低下と、世界的に増加する鬱病です。
デジタルデバイスが近くにあるだけで、認知機能は大きく低下する。デバイスの存在を近くに感じた時点で、目の前の作業に使える認知のリソースは減ってしまうのだ
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
デジタルデバイスから距離を置くことは、集中力と認知機能の維持に不可欠です。
一方、メンタルの不調に対しては、価値観と自然が強力な武器になります。
私たちが長期的な目標を抱く際、その行動が「弱い人を救う」や「新たな知識を学ぶ」といった価値観に結びついていると、未来への不安が消え、現在の行動が「現在進行形のプロセス」に切り替わります。
また、自然は私たちのリラックス効果を劇的に高めます。
公園の写真を見た学生は2倍も副交感神経が活性化し、心拍数も有意に低下していました。自然の写真を5分ほど眺めるだけでも、かなりのリラックス効果が得られるようです。
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
すぐに自然に触れられない場合は、デジタルデバイスの壁紙を自然の画像に変更したり、作業中に川や鳥の音を聞くといった「デジタルの自然を増やす」工夫も有効です。
最高の生産性を生む「時間の使い方」
効率的に成果を上げるための時間術についても触れられています。生産性の高い従業員は、仕事と休息に明確なインターバルを設けていました。
生産性が高い従業員ほど決まった間隔で仕事をしており、平均で 52 分ほど働いたら 17 分だけ休むというインターバルを守る傾向があったのです。
引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
このように、集中力の持続時間に適した短い休憩を挟むことで、高い生産性を維持できます。
さらに、目標達成のためにタスクを明確にする習慣も重要です。
-
今日やりとげたいことを毎朝3つ書き出して実践
-
今週やりとげたいことを週の頭に3つ書き出して実践
-
今月やりとげたいことを月初めに3つ書き出して実践
-
今年やりとげたいことを年始に3つ書き出して実践
-
毎週末にレビューを行い、うまく行った点を3つ、改善できる点を3つ書き出す引用:『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』鈴木祐著
このように、日次・週次・月次・年次で3つのタスクを定め、週末にはレビューを行うことで、長期的な目標をブレイクダウンし、確実に実行に移すことができます。
『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』は、進化医学という確かなバックボーンに基づき、食事、睡眠、メンタル、生産性といった全方位から最高の体調を実現するための戦略を提供しています。あなたの毎日の習慣を見直すヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
コメント