伝わり方を大きく変える言葉の「ひと工夫」
同じ内容を伝えるのでも、言葉の選び方や表現の仕方ひとつで、受け手の感じ方は劇的に変わります。藤井さんは、特にネガティブに聞こえがちなことをポジティブな視点に切り替えることの重要性を説いています。例えば、苦手意識のあることへのアドバイスであっても、その伝え方次第で相手のモチベーションを引き出すことができます。
例えば、 「高音を効果的に使うために、低音を増やしてみよう」 「高音を出すのは疲れるから、自分にも優しい低音を使おう」 「実はあなたのストロングポイントは、低音だ」 といったように、 同じ意味でもひと工夫することで伝わり方が大きく変わってきます。
引用:『伝える準備』藤井貴彦著
このように、相手が受け入れやすい言葉、あるいは新たな視点を提供する言葉を選ぶことで、メッセージはより深く、より建設的に伝わるのです。
自分自身をつくり上げる「言葉の責任」
私たちが発する言葉は、聞いている相手だけでなく、自分自身にも大きな影響を与えます。日々の言葉遣いが、自分の思考や人格を形作っているという意識を持つことが大切です。藤井さんは、たとえ誰にも見られない場所での言葉であっても、その選択に気を配ることの重要性を強調しています。
「発した言葉で自分を汚さないように」 たとえクローズな日記の世界でも、 他人を傷つけ、自分を汚す言葉を使わないように心がけています。 よくご高齢の方が、あと何回食事をできるかわからないから、 一回の食事を大切にしたいとおっしゃいます。 言葉も同じで、表現の一つひとつを大切にすることが、 日々の充実につながります。 発した言葉は自分を離れていくように思えますが、 本当はその言葉が自分をつくり上げているのです。
引用:『伝える準備』藤井貴彦著
発した言葉は自分から離れていくものではなく、自分をつくり上げる要素であるという考え方は、一つひとつの表現を大切にする姿勢につながります。
「伝える」プロとしての心構え
報道の現場では、言葉だけでなく、伝えるための「準備」と「信頼関係」が不可欠です。特に被災地のようなデリケートな場面では、技術的な準備以上に、人間的な信頼構築が最も重要になります。
被災された方との関係がしっかり構築できてからじゃないと、 やっぱりカメラは回せないのです。 何回か一緒に取材に出てくれているカメラマンは、それがわかっていて、 遠くから「いつでもいけるよ」とスタンバイしてくれています。 カメラマンによっては、商売道具のカメラを地面に置いて、 一緒に話を聞いている人もいます。
引用:『伝える準備』藤井貴彦著
これは、ビジネスや日常生活でのコミュニケーションにも通じる大切な教訓です。真に伝えたいことがあるなら、まず相手との間にリスペクトと信頼の基盤を築くことが、最良の「伝える準備」となります。
言葉は「未来」をつくる
「言葉力」は一朝一夕に身につくものではありません。日々の意識と積み重ねが、やがて自分の存在以上の力を持ち、自分自身に還ってきます。特に、現代のように情報が氾濫する時代だからこそ、安易な言葉に頼らず、自分自身を形作る言葉を慎重に選ぶ意識が大切です。
急に「言葉力」が身につくことはありません。 日々言葉に触れ、使うことで、自分を高める。 それがいつか、自分の存在以上の力を持って自分に戻ってきます。 手元にある安易な言葉で、ご自分を包まないように。 発する言葉で自分をつくる意識が、今の時代だからこそ大切なのだと思います。
引用:『伝える準備』藤井貴彦著
そして、言葉は現在の自分だけでなく、未来の自分をも形作ります。否定的な言葉の選択は、未来への希望をも閉ざしてしまうかもしれません。
否定的な言葉で希望を 綴ることはできない、ということです。 発する言葉があなたをつくると申し上げましたが、 発する言葉はあなたの未来もつくる のだと思います。
引用:『伝える準備』藤井貴彦著
日々のコミュニケーションで発する一言を大切にすることは、未来の自分自身を大切にすること。言葉の力を意識して行動することで、より豊かな「伝える力」と「自分自身」を築き上げていきましょう。
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