森博嗣氏の著作『自由をつくる 自在に生きる』から、「自由」を阻むさまざまな「支配」の正体と、それらを乗り越えるための具体的なヒントを読み解きます。
🪢 私たちを縛る「支配」の正体
私たちは日々、自覚のないまま様々なものに「支配」されています。最も身近なのは、身体からの要求です。
少し考えてみればわかることだが、腹が空いたというのは、肉体的な欲求であり、つまり、食欲は躰による「支配」なのである。休みたい、寝たい、というのも同様だ。躰が頭脳に要求している。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
しかし、より根深いのは、社会的な「常識」や他者の目による支配です。
やりたいけれど、人目が気になってできない、なんてことは本当に多い。「そんな恥ずかしいことはできない」というように自己規制してしまうほどだ。その支配とは、いわゆる「常識」と呼ばれるものである。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
ファッションもまた、他者からの評価に大きく依存しています。
洋服を着ているのは自分だけれど、それを見るのは自分ではない。鏡を眺めたとき以外は、自分で自分の姿は見ることができない。つまり、他人にどう見られたいのか、ということがファッションの主たる動機といえる。だから、自分が着たいものを素直に着る、というわけにもいかないのが実情なのだろう。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
さらに、現代社会においては、SNSやブログといった活動自体が新たな支配を生み出す危険性があると氏は指摘します。
知らず知らず、ブログに書きやすい毎日を過ごすことになる。 これは、「支配」以外のなにものでもない。人の目を気にし、日々のレポートに追われるあまり、自分の可能性を小さくする危険がある。充分に気をつけた方が良いだろう。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
これらは、自分の時間を、他者の評価や反応という外部の基準に捧げてしまっている状態です。
💡 自由への第一歩|「自覚」と「抽象力」
では、この支配から脱し、真の自由を得るにはどうすれば良いのでしょうか。森氏はまず「自覚」の重要性を強調します。
この「自覚」こそが重要だと考える。支配だと気づくことで、その傘の下にいる自分を初めて客観的に捉えることができる。それが見えれば、自分にとっての自由をもっと積極的に考えることができ、自分の可能性は大きく広がるだろう。 当たり前だと思っていること、不可避だと信じていたことが、単なる選択肢の一つにすぎないものだとわかってくる。なにごとも「自覚」が一番大切なことであり、これがすべての改革のスタートになる。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
「当たり前」と信じていたことが、実は単なる選択肢の一つに過ぎないと気づくこと。これが自由への突破口です。
次に重要となるのが「抽象力」です。具体的な事例や成功ノウハウに目を奪われるのではなく、その背後にある本質を掴み取る能力です。
ものごとを抽象的に捉える目、つまり「抽象力」を持っている人は、他者の成功例、そのノウハウといった情報から、たちまち抽象して本質を見出す。そうすれば、まったく違う分野のものであっても、自分の現在の問題に役立てることができる。応用力といっても良いだろう。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
具体的な「象」(目に見えるもの)を排除し、内に隠れているコンテンツを摑み取ること。これこそが万能のノウハウだと説きます。
🛤️ 非常識な「合理」を選ぶ
自由な選択をする上で、氏は「非合理な常識よりも、非常識な合理を採る」ことを提言しています。周囲の評価や常識ではなく、自分にとって合理的な理由で判断を下すのです。
抽象すれば、自分にとって合理的な理由で判断をすること。周囲の評価、定説、 噂、世間体、そして常識、といったもので選ぶな、ということ。 非合理な常識よりも、非常識な合理を採る。それが自由への道である。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
氏は自身の経験として、あえて人気の低い研究分野を選んだことが、後の大学人としての成功に繋がったと語っています。
比較的人気がない建築材料の講座を選んだのだ。そこならばジャンケンをしなくても入ることができそうだったし、大勢が行きたがらない分野なら、きっとそれだけチャンスが大きいだろう、と感じたからである。 この選択が、結局僕を大学人にした。ほかの分野よりも明らかに研究者が不足していた。必要なのに専門家が少ない分野でもあった。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
⚙️ 自由を着実に手に入れるためのテクニック
自由は、一気に手に入れるものではなく、日々の積み重ねだと氏は言います。最も有効なのは「毎日少しずつでも良いから前進をする作戦」です。
自由を得るためには、毎日少しずつでも良いから前進をする作戦が最も有効だと思う。どんな山でも、一歩一歩登っていけば、いつかは頂上に辿り着ける。目標は見えているのだから、休まずそこを目指す。今日できることをする。なにかできることはないか、といつも探す。そして、無理をせず、時間をかけて少しずつ進む。そうすることが、一番楽なのである。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
さらに、無理なく目標を達成するための心理的なテクニックとして「下限を上限にする」方法を紹介しています。
例えば「毎日一万文字を書く」という目標を、「一万文字を超えてはいけない」という「上限」として捉えるのです。そうすることで、疲労を防ぎ、長期的に安定して続けることが可能になります。目標を少し破って書きすぎたとしても、それは「自由な選択」として心地よさを感じる、というのです。
🎨 想像力と自由
究極的に、自由とは人間が持つ「想像力」の産物であると、氏は締めくくります。
自分が話しているときでさえ、相手はどう聞いているかを自然に思い描いている。人の心理が見えるようになるのだ。「そんなのは単なる想像ではないか」と思う人もいるだろう。そう、そのとおり、すべては想像である。そして、この想像こそが人間の能力の基本であり、あらゆる活動の基礎になるものだ。想像ができなくなったら、もう人間ではないといっても良い。 生きていることも、そして自由も、すべて想像の産物である。
引用:『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣著
常識や他者の目を意識する前に、まずは自分の感情や考えを客観的に捉え、相手の気持ちを察する。この想像力の行使こそが、自由な思考と活動の土台となるのです。
この本は、私たちが無意識のうちに受け入れている「支配」に気づきを与え、本当の自分を取り戻すための指針を示してくれます。あなたが今、当たり前だと思っている「不自由」を「選択肢」に変えるために、まずは何を「自覚」すべきか考えてみてはいかがでしょうか。
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