世界のニュースを見ていると、時折難しく感じる「地政学」。しかし、私たちが住む日本の立ち位置を知る上で、この視点は欠かせません。
田中孝幸氏の著書『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』には、私たちが普段意識しない、世界の貿易の現実、大国の力の源泉、そして日本の知られざる特徴について、ハッとさせられるような記述が満載です。
この記事では、本書のハイライトを元に、世界がどのように動き、日本がその中でどのような「強み」を持っているのか、その秘密に迫ります。
世界の経済を握る「海」と超大国の関係
貿易の命綱は「船」である
私たちが普段使う製品のほとんどは、遠い国から海を渡って運ばれてきています。世界全体の貿易は9割以上が海を通っており、船が世界の物流の主役です。
島国である日本にとっては、その比率はさらに高く、99%が船による貿易です。この一文が示す通り、日本の経済は海の安全に完全に依存していると言えます。
「実は世界中の貿易は 9 割以上が海を通っている。つまり船で運ばれている。特に日本は海に囲まれた島国だからその比率が高くて、 99% が船による貿易だ」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
アメリカの真の超大国たる所以
では、なぜアメリカが超大国と呼ばれるのでしょうか? 著者は、その理由を「海を仕切っている国」であるからだと指摘します。
アメリカは、世界最強の海軍を維持するために毎年巨額の予算(毎年 10 兆円以上)を投じ、世界中の主要な海域に軍艦を展開しています。
「アメリカが超大国と言われているのは、世界の船の行き来を仕切る国であるからだ。アメリカは世界最強の海軍を持ち続けるために、毎年 10 兆円以上のお金を投じていて、世界各地の海に軍艦を展開している」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
さらに、世界の貿易の8割で使われるドルの価値も、この圧倒的な軍事力に裏打ちされています。「軍事力で圧倒的に強いことほど、強い信頼を与えてくれることはない」という厳しい現実が、世界の通貨の仕組みを支えているのです。
日本の知られざる「大国」としての実態
立体的に見た日本の広大さ
私たちは地図を見ると、日本を「小さな島国」だと考えがちです。しかし、地政学的な視点、特に深さという要素を加えると、その認識は大きく変わります。
日本の周りには、水深6,000メートル以上の深海が数多く存在します。深海を含む海水体積を見ると、日本が世界で最も大きいという報告すらあるのです。
「正解は 4 位だ。日本の近くにはたくさんの深海がある。 水深 6000 メートル以上の深海だけをみると、世界で最も大きい海水体積を持っているのは日本だという報告もある」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
この広大な海洋権益(排他的経済水域)と、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位の経済力を合わせ見ると、「世界での存在感で言うと大国の部類に入る」という著者の指摘は、私たちに「小さな島国」という自己認識のアップデートを迫ります。
深海が持つ軍事的な意味
日本の深い海は、資源や領土としての価値だけでなく、安全保障上の大きな意味を持ちます。
核兵器を隠し持つためには、潜水艦を隠せる深く安全な海が不可欠です。
「核兵器は、いつまでももぐっているための原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する力、それに潜水艦を隠すための深く、自分の縄張りにできる安全な海という 3 つを確保できて、初めて最強のアイテムになる」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
日本は非核三原則を持つ国ですが、この「深く安全な海」という地理的条件と、高度な技術力を持つ日本の潜在的な核能力を、アメリカや中国といった大国は常に警戒していると著者は指摘します。
「アメリカや中国は、日本が核兵器を持つ可能性があるとずっと警戒している」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
これは、日本が国際政治においていかに重要なプレイヤーとして見られているかを物語っています。
世界の現実|人口と貧富の格差
異なる「活気」を持つアジア
世界には、日本とは異なる人口構造を持つ国々が存在します。日本の平均年齢が40代後半と高いのに対し、東南アジアの平均年齢は29歳と若く、「人口 1 億人を抱える活気のある国だ」という記述が示す通り、フィリピンにいたっては平均年齢が24歳です。
「東南アジアと呼ばれるこのあたりの地域の平均年齢は、 29 歳。ここのフィリピンにいたっては、平均年齢がなんと 24 歳。人口 1 億人を抱える活気のある国だ」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
この人口構成の大きな違いは、経済や社会の活気、そして将来的な市場の可能性に直結します。
アフリカ大陸の厳しい現実
また、世界には豊かさの格差も厳然として存在します。広さでは日本の約80倍、人口も10倍以上いるアフリカ大陸ですが、一人当たりのGDPは日本の20分の1に過ぎません。
「アフリカはみての通り、とても広い。だいたい地球上の陸地の 2 割がアフリカだ。広さでは日本のおよそ 80 倍、人口も日本の 10 倍以上いる。それなのに、 1 人当たりで考えると GDP は日本の 20 分の 1、つまり豊かさが 20 分の 1 だ。 世界でアフリカほど貧しい大陸はほかにはない。」
引用:『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』田中 孝幸著
著者は、世界の国々を「加害者の国々」(植民地支配をした国)と「被害者の国々」(植民地にされた国)に分類し、後者の被害者の国々が圧倒的に多いという事実を指摘します。この過去の歴史的経緯が、現在も続く世界の貧富の格差に深く関わっているのです。
『13歳からの地政学―カイゾクとの地球儀航海』は、私たちが普段ニュースで流される情報から一歩踏み込み、世界の力の構造、海が持つ地政学的な重要性、そしてその中で日本が秘める真の力を教えてくれる一冊です。
「小さな島国」という認識を捨て、大国としての自覚を持つことが、これからの国際社会で生き残っていく上で重要だと、本書は語りかけているのではないでしょうか。
あなたは、日本が海と深さの視点から「大国」と見られているという事実に、どのように戦略を立てるべきだと思いますか?
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