稲盛和夫の哲学に学ぶ|人生の価値と生きる意味

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京セラやKDDIの創業者であり、JAL再建にも尽力した稲盛和夫氏の思想は、多くの人々の人生や経営に大きな影響を与えてきました。氏が長年問い続け、辿り着いた「人間は何のために生きるのか」という根源的な問いへの答えは、現代を生きる私たちにとっても、深く、そして力強いメッセージを投げかけてくれます。

本記事では、稲盛氏の著書『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』から、氏の考える人生の目的、魂の磨き方、そして悩みの乗り越え方について、重要な哲学を紐解きます。


 

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存在するすべてのものに意味がある

 

私たちが「なぜ自分はここにいるのか」「生きる意味とは」と考えたとき、稲盛氏は、人間だけでなく、宇宙の森羅万象すべてが必要性があって存在していると説きます。

「地球上……いや全宇宙に存在するものすべてが、存在する必要性があって存在している。どんな微小なものであっても、不必要なものはない。人間はもちろんのこと、 森羅万象、あらゆるものに存在する理由がある。たとえ道端に生えている雑草一本にしても、あるいは転がっている石ころ一つにしても、そこに存在する必然性があったから存在している。どんなに小さな存在であっても、その存在がなかりせば、この地球や宇宙も成り立たない。存在ということ自体に、そのくらい大きな意味がある」

引用:『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』 稲盛 和夫著

この思想は、宇宙を構成するエネルギーが一定量を保つ「エネルギー不変の法則」という科学的な側面からも裏付けられるとしています。つまり、私たち一人ひとりの存在は、宇宙レベルで見て、計り知れないほど大きな意味と必然性を持っているのです。


 

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人生における最高の価値とは?

 

では、その意味ある人生において、私たちが追求すべき「価値あるもの」とは何でしょうか。稲盛氏は、現世でつくりあげる人格、人間性、魂、意識体こそが最高の価値であると断言します。

何が価値あるものなのか。それは現世を生きたときにつくりあげた人格、人間性、魂、意識体です。それは肉体が滅びてもなくなることはありません。「あなたは努力され、素晴らしい人格をもつまでに自分を高めましたね」といわれることが人生の価値であると私は思います。つまり、人間性を高めるためにわれわれは現世で生きているのです。

引用:『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』 稲盛 和夫著

富や名声、地位といった現世的な成功ではなく、魂を磨き、人間性を高めることこそが、この世に生きる根本的な目的だと説きます。肉体が滅びても、この意識体は残り、輪廻転生によって、次の生へと継承されていくという考えに基づいているため、現在の生で積んだ善行や経験が、永遠の魂の価値を決定づけるというのです。


 

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魂の価値を高める生き方

 

魂の価値を高めるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。稲盛氏は、「世のため人のために貢献したか」が共通の価値基準であると述べます。

私たちが死んで残る魂、意識体そのものの価値が問われるのが、人生だと思います。現世にあったとき、名声を得た、財産をつくった、高い地位についたということが、その魂の価値になるでしょうか。また、おもしろおかしく波瀾万丈の人生を生きてきたことが、魂の価値を高めることになったでしょうか。私はそうではなく、生きているあいだにどのくらい世のため人のために貢献したか、つまり生きているときにどのくらい善きことをしたかが、万人に共通する魂の価値だろうと思っています。

引用:『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』 稲盛 和夫著

この「善きこと」の実践には、利他の心、つまり「自分よりも相手によかれという心」をもって生きることが重要です。また、自身の欲望の肥大化を抑え、「足るを知る」という叡知を持つことも、地球上の動植物たちとの共生に不可欠であると説いています。

 

悩みを乗り越え、善きことを積み重ねるための五つの実践

 

人生における悩みや困難はつきものですが、稲盛氏は、それを乗り越え、魂を磨くための具体的な行動指針を示しています。

どのようにすれば悩まないですむのでしょうか。  まず第一に、悩む暇があったら誰にも負けない努力で働く。第二に、謙虚にして 驕らない。第三に、毎日反省する。反省するのは悩むこととは違います。第四に、足るを知って、生きていることに感謝する。第五に、自分よりも相手によかれという 利他の心をもって生きることです。

引用:『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』 稲盛 和夫著

誰にも負けない努力と、常に自分を省みる反省、そして謙虚さが、人間性を高める土台となります。そして、「善きことを思いなさい。さすれば必ず、あなたの人生も好転していきます」という「因果応報の法則」を信じ、日々の生活で善きことを積み重ねることが、魂の価値を高める唯一の道だと稲盛哲学は教えてくれます。


 

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永遠の旅路として

 

稲盛氏は、死を意識体の旅立ちであり、肉体の死はあっても魂の死ではないと信じています。この生命の不滅への確信が、氏が人生の試練に動揺しなくなった根底にあるといいます。

私は信仰以前の問題として、生命の不滅を信じ、死とは肉体が消えるだけで、私自身の魂は永遠だと思っています。また、その魂を磨きつづけなければならないと考えています。

引用:『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』 稲盛 和夫著

私たちは、魂という永遠の存在を携え、人間性を高めるためにこの現世を生きている――。稲盛和夫氏の哲学は、私たちに、一時の名声や財産に惑わされることなく、利他の心と日々の努力によって、永遠に続く魂の旅路を価値あるものとするよう促してくれます。

あなたは今日、どのような善きことを行い、魂を磨きますか?

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