日本はアニメ、ゲーム、マンガといった強力なIP(知的財産)を多数生み出し、「IP先進国」として世界に確固たる地位を築いています。生活必需品ではない、いわゆる「無駄なもの」への日本の民間消費は年間約50兆円にも上りますが、この巨大な市場と、世界を魅了する日本のエンタメ産業は、どのようにして形作られてきたのでしょうか。本書のハイライトから、その誕生の歴史と独特な構造に迫ります。
💰 娯楽への巨大な消費と経済圏
日本の民間消費のうち、娯楽や趣味といった「無駄なもの」への消費は年間50兆円に達します。
日本では年間300兆円が民間消費の総額だが、そのうち衣食住など「生活必需品」と言われるもの以外の、いわゆる「無駄なもの」に消費されるのは 50 兆円、全体の 15%程度に達する。(中略)なかなかの金額である。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
この巨大な消費力が、日本のエンタメIPを核とした経済圏を支えています。
一度その文化が世界的ポジショニングを獲得した時、それは都市のブランド、国のブランドとなり、多くの人を巻き込む経済圏を築く。米国であればそれが映画、ミュージカルであり、日本ならそれがアニメ、ゲーム、マンガであるわけだ。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
🎮 ゲーム産業の興隆とIPの誕生
1990年代には世界市場を圧倒していた日本のゲームソフトですが、2000年代には欧米勢に押され、存在感を失いました。
1990年代には世界の市場の7~8割を占めていた日本のゲームソフトだが、2000年代にはすでに北米でずいぶんと存在感を失い、EA(エレクトロニック・アーツ)やアクティビジョン・ブリザードのような新進気鋭の地場ゲーム会社のソフトが台頭していた。日本のソフトは市場の2~3割くらいといったプレゼンスに落ちていた。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
しかし、わずか社員2人の会社から、世界一のキャラクター経済圏を築くことになるポケモンが生まれました。
いまやミッキーマウスを超える世界一のキャラクター経済圏を築くポケモンが、設立2年目の2人だけの会社から生まれたこと自体が、伝説めいたストーリーである。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
2010年代には、モバイルゲームが市場を拡大させ、産業構造を変化させました。
(中略)「プレイ時間を 10 秒以内の画面遷移で区切り、ゲーム資産を見せ合うソーシャル性重視のシミュレーションにジャンルを絞り、課金をガチャ・時短に集中させた」SNSソーシャルゲームは5000億円市場に成長した。そこに高度化したスマホで従来のアクショナブルなゲーム性も取り入れたアプリゲームは1兆円市場へと発展した。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
🎬 映画・アニメ産業の独自な構造変化
自国産映画が強い日本市場
日本はアジアの中でも映画史の始まりが非常に早く、現在も自国映画が強いという特異性があります。
そうした中で「興行の半分以上を自国産映画で占めている国」は数えるほどしかない。インド、日本、韓国、中国である。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
「低コスト高収益」のアニメと製作委員会の終焉
日本のアニメは世界市場の4分の1を占めています。
全世界で見られているアニメ作品のうち4分の1は日本アニメだ。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
また、ハリウッドアニメと比較して、製作費が低く抑えられ、高い収益性を誇ります。
全世界で500億円以上の興行収入を上げ、北米で日本アニメ2位の『鬼滅の刃 無限列車編』ですら 10 億円足らずで製作されている。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
『鬼滅の刃』の製作・配給体制は、アニメビジネスの主導権をテレビ局から製作会社へ移す転換点となりました。
『鬼滅の刃』はジブリの持っていた興行収入の記録を塗り替えただけでなく、 25 年続いたテレビ局・広告代理店主導のアニメ製作委員会時代の終わりを告げたのであった。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
💿 音楽と📺 マスメディアの特殊性
世界の4割を占めるCD大国
世界の音楽市場がストリーミングに移行する中で、日本は特異な市場構造を維持しています。
2020年のCD売上は、全世界の 42 億ドル(約4500億円)に対して、日本は1800億円。世界の4割が日本なのだ(図表3-7)。(中略)世界的にはストリーミング市場が2010年代後半に過半を占めたトレンドの中で、日本だけがその重力をものともせずにCD比率7割を保ち続けている。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
倒産しないテレビ局と新興VTuber
日本のテレビ業界は、電波管理体制のもと、極めて安定した地位にあります。
この電波管理体制のもとにあるテレビ業界の特異性は、「倒産事例がない」ことに象徴される。1953年の日本テレビ開局以来、地方局も含めて126社が設立されたテレビ局は、倒産事例が半世紀で1件もない。統合すらないのだ。これは産業史を眺めても例外的なテレビ業界の特性とも言えるだろう。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
一方、デジタル領域では日本のVTuberが世界的な収益力を持ち、新しいコンテンツの形を確立しています。
ユーチューブの投げ銭機能「スーパーチャット」の世界年間収入ランキングである。韓国語や英語での人気ユーチューブをおさえ、トップ 15 のうち 12 人は日本のVチューバーであり、うち 11 人はカバー社が運営しているホロライブ所属のタレントが独占している(ちなみにトップ 50 でも似たようなラインナップである)。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
💡 日本エンタメの課題:マーケティング能力
優れた「製品」を作り出す能力は高い日本ですが、世界市場で勝つためにはマーケティング力の強化が求められています。
デジタルなプラットフォームが席巻する時代にあって、世界市場の中で日本のマーケティング能力の低さが露呈してしまったのがこの 20 年である。(中略)エンタメ産業に何が足りないかと言えば、「製品」のユーザーが誰なのか、どういったプロセスで届けるのか、どんな形式でお金を落としてもらうのか、といういわゆる基本的なマーケティングなのである。
引用:『エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造』中山 淳雄著
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